旧統一教会問題での後手後手感が不信につながった岸田政権 しかし信仰をやめさせる権利は誰にもない

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ジャーナリストの佐々木俊尚が10月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。旧統一教会問題について解説した。

旧統一教会問題での後手後手感が不信につながった岸田政権 しかし信仰をやめさせる権利は誰にもない

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(東京都渋谷区) 2022年7月20日  JIJI PRESS PHOTO / MORIO TAGA 写真提供:時事通信社

旧統一教会問題での後手後手感が不信につながった岸田政権

飯田)臨時国会について、予算委員会は鈴木財務大臣の出張の関係で10月17日からとなりましたが、補正予算も11月の第2週くらいに出てくる見通しだということです。

佐々木)もう少し早くならないのかなと思いますね。岸田総理は「何をしているのだ」と言われながら、検討ばかりして「検討師」と呼ばれていましたが。

飯田)そうですね。

佐々木)常に後手後手で、あとになって小刻みに出してくる。旧統一教会問題もそうです。最初は「こんな問題、大したことはないだろう」とかなり高を括っていました。「立憲民主党だって関係している議員がたくさんいるではないか」くらいの感じだったのでしょうね。ところが、火がついたら炎上してしまって、元に戻れなくなってしまった。

飯田)問題が大きくなってしまって。

佐々木)そうなった途端に、「旧統一教会との関係を絶つ」と言い出しました。しかし、そこまで言うのはやりすぎではないかと思います。ボランティアのなかに旧統一教会の人がいたとして、そこまで排除するというのは、内心の自由に抵触するかなり重要なことですし、憲法に抵触しかねない問題になるわけです。そう気軽に「宗教団体との関係を絶ちます」と言ってしまうのはどうなのでしょうか。

飯田)宗教団体との関係を絶つと言ってしまうのは。

佐々木)最初に言ったのであれば「決断が早いな」というくらいだったかも知れませんが、問題が大きくなってから言うという、この後手後手感が岸田政権に対する不信感につながっているような気がします。

現行の消費者契約法を過剰な献金や寄付も対象になるべく改正する ~仏教の葬式の戒名はどうするのか

佐々木)旧統一教会の問題に関して言うと、消費者契約法が2018年の安倍内閣のころに改正されて、霊感商法の被害でもクーリングオフが可能となり、お金を返すことができるようになりました。

飯田)消費者契約法が。

佐々木)今回、またこれが問題になっているのです。壺などを売った場合であれば消費者契約法の対象になるのだけれど、あの教団がやっているのは商品を売ることではなく、献金や寄付です。献金や寄付は消費者契約法の対象にならないので、そこを改正して寄付や献金も当てはまるようにしなければいけないのではないか、という話になっています。それは流れとしてはありだと思います。ただ、「すべての寄付や献金がダメ」ということにしてしまうと、仏教のお葬式の戒名などはどうするのかという話になります。

飯田)この戒名で「3桁万円はどうなのか」と思うけれど、「でもこういうものだ」となっていたものまで、すべていけないことになってしまう。

佐々木)知り合いの話ですが、おじいさんが亡くなったときに遺言で「私は立派な葬式がしたいから、葬式にはお坊さんを3人呼んでくれ」と書いてあったため、3人呼んで3桁万円払ったという話を聞いたことがあります。

飯田)立派なお葬式にして欲しいと。

佐々木)そういう人もいるのです。「私は立派な葬式がしたいから3人の僧を呼んでくれ」という希望に対し、「けしからん」と言うのかどうか。そういう問題になるわけです。

クーリングオフあるいは献金の上限を決める ~すべての宗教や思想・信条の団体に適用できる

佐々木)だから、お金を返せるようにしましょうと。献金に関してもクーリングオフできるようにする。あるいは「その人の収入や金融資産の何割まで」と決めるのがいいと思うのです。あらゆる宗教、それ以外のさまざまな思想・信条の団体に関しても、同じように適用できると思います。

旧統一教会であろうが信仰をやめさせる権利は誰にもない ~「内心の自由」は保障されている

佐々木)一方で旧統一教会という宗教団体そのものを取り締まろうとか、社会から排除しようというのは、やりすぎではないかと思います。「洗脳されている」と言う人もいるのですが、真面目に信仰している人もいるわけです。これは内心の自由であり、誰が旧統一教会を信仰しようが、その信仰をやめさせる権利は誰にもないわけです。国であっても。そこを履き違えてはいけないと思います。

飯田)国であっても。

佐々木)内心の自由まで踏み込んで、団体そのものをなくそうとするのは無理です。オウム真理教のときですらできなかったわけですから。宗教法人法で解散命令は出したけれど、それ以上は、破壊活動防止法も適用できなかった。「オウム新法」という後付けの法律はつくったけれど、「何年間か観察処分にする」というだけですからね。

飯田)しかもその法律も、地下鉄サリン事件など、本当に破壊活動があったあとの話になってしまった。

佐々木)オウム真理教事件では50人くらいが亡くなっています。約50人が死んだ団体に対しても、その程度しかできなかったわけです。旧統一教会とオウム真理教を比べるなという話かも知れませんが、そのレベルと比較すれば、今回の話は違う事件だということです。

飯田)事前に予防的に解散まで出せるかというと、そこまでやってしまうのはあまりに公権力の暴走だろうと。その歯止めの議論として、文科省のなかに宗務課がありますが、そこまでやらないのは……。

佐々木)そこまでやってしまうと、中核派はどうなのかなど、いろいろな思想、信条、イデオロギーの団体に対する公権力の介入を招くわけです。本当は左派リベラルの人たちが「それはやり過ぎだ。公権力はそこまで介入してはいけない」と、反対の陣を張るべきなのです。

飯田)いま盛り上がっている感情で突っ走るのではなく、もう片方の天秤にもきちんと錘を乗せて議論しなければならない。

佐々木)そうなのですよね。

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