いきなり「再来年から実施」は唐突すぎないか 健康保険証24年廃止、マイナカード一体化へ

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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が10月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2024年に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化するという政府の発表について解説した。

いきなり「再来年から実施」は唐突すぎないか 健康保険証24年廃止、マイナカード一体化へ

※画像はイメージです

健康保険証が再来年で廃止、マイナンバーカードに一体化

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河野デジタル大臣)デジタル社会を新しくつくっていくためのマイナンバーカードは、いわばパスポートのような役割を果たすことになるわけですが、まずマイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けた取り組みにつきまして、2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す。

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政府は、現在使われている健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した形に切り替えると発表した。また運転免許証との一体化時期についても、当初予定していた2024年度末から前倒しする方針を示した。

飯田)この件に関して、メールやツイッターでも賛否をいろいろといただいています。流山市の“どすこい大将“さんからは、「住民票にしてもコンビニ受け取りで楽になりました。スマホで早く使えるようになればいいな」というご意見がありました。一方で八王子市の“たかこ“さんからは、「私の母は95歳で認知症はありませんが、歩行能力が3メートル程度です。マイナンバーカードを申請して、受け取りにくるようお知らせを受けたのですが、受け取りに行けないのですよ。都内の某自治体に娘が代理で取りに行けないか問い合わせたところ、不可だと言われました。身体障害者手帳を持って受け取れない事情を証明できれば、代理人でもいいということでしたが、どうしても来れない場合は『写真付きの免許証がないか』と言われました。95歳が持っているはずがありません。受け取れないから行かないと言ったら、受取拒否の手続きのために本人が来てくださいって、どういうことなのでしょうか」というご意見です。受け取りの部分がハードルになっているという話も聞きますが。

松井)そうかも知れませんね。切り替えということで、健康保険証の切り替えもある種、一方的にやってしまうわけです。その受け取りの問題があります。

飯田)受け取りの問題。

デジタルへの切り替えは医療費を適正化するためにもやらなければならない ~国民に説明して国会で議論するべき

松井)他方、どうしても従来のものをそのまま使う方が楽ですから、守りたいという気持ちが皆さんあるのです。私だって「面倒くさいな」と思う部分はあります。しかし、デジタル社会ということもありますし、医療費を適正化するためには、やらなければいけないと思います。

飯田)やらなければいけない。

松井)行政がどんどん閣議決定できるものはやったらいいと思いますが、やはりきちんと国民に説明し、立法府で議論すべきですよ。

飯田)そうですね。

松井)国葬や追悼演説の話もそうですが、むしろ昭和の55年体制だった時代の方が、何でも反対の社会党だったけれど、事前の話はあったような気がするのです。

飯田)55年体制のときの方が。

松井)最近はそれがなくて、唐突に実施するではないですか。方向性はいいと思うのですが、「きちんと議論してくれよ」と思うのです。国民の前で議論した姿を見せて、次の選挙の投票材料としてきちんと提示するという国会の機能が、ないがしろにされているではないですか。

突然「再来年からやります」ではなく、国会で提案して党首討論すべき ~免許証や健康保険証、マイナカードは国民に密着する重要なこと

松井)岸田さんは「聞く力がある」と言う割に、事前説明をあまりしません。野党に説明しても「あなた方は反対するではないか」ということになっていて、噛み合っていないのです。

飯田)与野党が。

松井)ある日突然、新聞に「こうします」と発表するのではなく、国会で提案して党首討論すべきなのですが、全然できていない。岸田さんになってから、1度もやっていないではないですか。

飯田)もう1年経ちますけれどね。

松井)免許証や健康保険証、マイナカードをどうするかという話は、国民生活に密着する話ですよ。

飯田)確定申告などにも。

松井)社会システムのインフラですから、いろいろなところに影響するわけです。やるべきだと思いますが、きちんと国会で議論して欲しいですね。野党も、先ほどご紹介した意見のような声を吸いあげて反論するでしょうし、それを国会でやるべきです。

飯田)国会で。

松井)そこを岸田さんは河野さんにやらせているのですが、本質的に言うと、総務大臣や厚生労働大臣がきちんと言わなければいけません。デジタルの問題というより、国の政策としてどういう窓口を持つのかと。

飯田)政策として。

松井)あるいは金融口座をどうするのか。コロナ禍のときに「他の国は翌日に交付金が口座に入るけれど、日本は入らない」と言われましたが、ここも金融という意味では遮断されているのです。金融や医療は個人情報と関わりますから、抵抗感もありますが、効率化して過剰診療などを圧縮していかなければ、若い人たちにお金が回っていきません。

飯田)デジタル化して紐づける。

松井)結局、改革が遅れると若い人たちが損をするのです。若い人たちをいかに元気づけるかを考えないと、日本は持たないと思います。

いきなり「再来年から実施」は唐突すぎないか 健康保険証24年廃止、マイナカード一体化へ

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国民にも丁寧に説明するべき ~健康保険証、運転免許証、マイナンバーカードの統合は必要なこと

松井)お年寄りの方で(手続きに)行けない部分などは尊重したり、工夫しなければいけないけれど、だからと言ってずっと紙の健康保険証がいいかと言うと、そうではない。一周回って運転免許証、健康保険証、マイナンバーをすべて統合させるという方向できちんと議論し、国民に周知を徹底する。「申し訳ないけれど、5年後、10年後を考えれば必要なのだ」と説明するべきです。いきなり「再来年やります」と言うだけではなく、なぜそれが必要なのか、日本のどこが遅れているのかということを、丁寧に説明する必要があると思います。

飯田)日本という国は「こうやっていくのだ」と全体を示しながら、でも取り残さないためにどうするかということを。

野党が若者や将来に対してするべきことがある

飯田)交付についても、最終的には市区町村の事務の話になります。マイナンバーそのものは国の事業なのだけれど、市区町村ではマンパワーも足りないし、お金もない。だから土日は閉めてしまうのです。そういうことが自治体によってバラバラになってしまう。しかし、国は「地方の事務だからわかりません」と。

松井)最近、何かというと「地方のことは地方に」となりますが、コロナ禍でうまく連携されていないことが明らかになっています。自治体の人たちも「何でも分権してくれ」というよりは、「合理的なシステムにしてくれ」と。国が根回しなしに言ってきて、「全部しわ寄せがくるのは自分たちだ」という不満があるのです。

飯田)すれ違いが大きいですよね。

松井)そうだとしたら、自治体が閉庁してもシステムとして回るものを組まなければいけない。いまの情報システムは、例えば県と市がバラバラの情報システムを持っているなど、各自治体ごとに違っています。国も全部縦割りで、特許は、国税は、年金はと、それぞれが別の情報システムを持っている。それを統合することによって、全部の行政サービスの質を上げたり、職員の負担や超過勤務などをなくして効率化する。「そのためにこれが必要なのです」ということを、きちんと説明しなければいけません。

飯田)国民に。

松井)効率という言葉だけではなく、若者がもっと前向きに将来に向けて動けるような政策パッケージを考えなければいけません。本当は野党がそれをやらなければいけないのです。従来の高齢者の人たちや既得権益者の権利を背負うのが、与党の宿痾なのです。でも野党はそれに縛られないのだから、「若い人たちや将来の世代のために新しい仕組みをつくりましょう」と言わなければいけません。

飯田)若者や将来のことを。

松井)私は長妻さんのことは、立憲民主党のなかで買っているのですよ。

飯田)いまの政調会長。

松井)あの人にはそういうことを議論して欲しいです。彼らのなかから、いまの自民党に足りない部分を出さないと、競争が起こらないのです。だから自民党が横着になってしまう。

飯田)「閣議決定一発でいいだろう」というような。

松井)「なぜ必要なのかを言ってくれ」ということです。

若者に旅行支援のキャンペーンを

松井)旅行支援にしても、若い人たちには例えば夏の3ヵ月間5000円の定額でJR乗り放題、というようなことをするべきなのです。差額の補助は国が行う。国会の議員パスなどをあげるよりも、若い人たちに対して積極的に日本中を回ってくれと。過疎地でもどこでもいいから旅行してくれ、という支援をした方がいいではないですか。ひいては観光の振興にもなりますし。

飯田)勝手にSNSにあげてくれたら、「ここがいい」と話題にもなるし。

松井)「もう1回動こうよ」ということを支援するような政策を、野党が言うべきなのです。

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