東京工業大学と東京医科歯科大学が合併する「もう1つの理由」
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が10月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。大学における医学部の存在について解説した。
東京工業大学と東京医科歯科大学が合併
東京工業大学と東京医科歯科大学の2つの国立大学が、2024年度中をめどに統合し、単一の新大学に移行する方針を固めたことがわかった。
飯田)この先、こういう統合は続いていくのですか?
どの大学も医学部の新設はできない ~医学部は株
松井)医学部というのは株であり、新設は難しいのです。「医学部という株をどう入手するか」が東工大にとっても懸案でした。お見合い相手として、東工大と医科歯科大はそれぞれ優秀な大学なのですが、「医学部の存在をどう見るか」というところがあります。
飯田)なるほど。
松井)私は京都の人間ですけれど、同志社大学や立命館大学は医学部が欲しくて仕方がないのです。もちろん早稲田大学もそうです。慶應義塾大学の教職員のプライドの1つは、「医学部がある」ということなのです。
どの大学も医学部が欲しい
飯田)慶應には医学部があるけれど、早稲田にはないですものね。
松井)東京理科大はいい学校ですけれど、医学部はありません。特に理科系の学校、理科系である程度の強みを持っているところは欲しいと思います。もちろん研究的にもシナジーがあるし、バイオなどの研究もしている。理工系にもバイオ分野はありますけれど、やはり医学部の生命科学のところとコラボしたい気持ちはあると思います。
医療界が医者をこれ以上増やしたくないため、医学部は株になっている
松井)なぜ医学部が株なのかと言うと、医療界が医者をこれ以上増やしたくないのです。言ってみれば「ギルド」です。
飯田)ギルドですか。
松井)「医学部の株をどうやって入手するか」というのは、医学部を持っていない、特に私立のいい学校もそうですけれど、争奪戦であり合従連衡で、いろいろなところに手を広げているわけです。
飯田)今回の話も2校連携という、「イノベーションだ」というだけの話ではない。
松井)ありません。大学としての、ある種の格であるとか。
飯田)そんな話も出ていますよね。
日本の大学の競争力が落ちている
松井)でも、こういうことを盛んにやっているわりには、日本の大学の競争力は世界的にも落ちているわけです。
飯田)確かに。
松井)基礎体力がない。私たちも責任の一端を感じていますが、国立大学法人や独立行政法人化という流れのなかで、「節約、節約」で進んでいる。「競争的資金をみんなで取ってこい」などと言うのだけれど、大学教員の人たちに話を聞くと、基礎研究に対してお金が回らないと言うのです。
飯田)基礎研究に対して。
松井)「民間の金を引っ張ってこい」と言われても、根幹のところが難しい。この辺りに大きな課題があり、いろいろと根源的な問題があります。
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