習近平氏が4期目を目指すには「台湾併合」しかない これだけの「理由」

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前統合幕僚長の河野克俊、慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平総書記(国家主席)の今後について解説した。

習近平氏が4期目を目指すには「台湾併合」しかない これだけの「理由」

中国の習近平国家主席(ウズベキスタン・サマルカンド)=2022年9月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国共産党大会が22日に閉幕、新たな指導部が23日にも明らかに

中国共産党大会は10月22日に閉幕となるが、最高指導部を構成する政治局常務委員(現在7人)の人事が焦点となる。習近平総書記(国家主席)は自身の3期目入りを果たすとともに、乗務委員に多数の側近を起用し、権力基盤を安定させたい考えと見られている。一方で、習氏は2027年からの4期目も視野に入れている模様で、今回の党大会で「ポスト習」となる後継候補は現れないという見方が強い。新指導部は閉幕翌日の23日にも明らかになる。

飯田)初日には習近平氏の演説がありました。そのなかで、台湾について武力による統一も視野に入れるということが、日本の国内メディアでも1面トップを飾っていました。この姿勢を河野さんはどうご覧になりますか?

河野)「台湾の武力併合を放棄しない」ということは以前から言っていたのですが、今回の党大会のステートメントでは、より表現が強くなったというのが大方の評価です。スタンスは変えていないですし、さらに強めたということだと思います。

習近平氏の年齢的な問題も ~李克強氏が外れ、習近平体制が完全に側近で固められる

河野)いまプーチン大統領が無理押しの戦争をやっています。彼は70歳ですが、ロシア男性の平均寿命は68歳と聞いていますので、先を見通したときの年齢的なものもあるのではないかと思います。

飯田)年齢的なものが。

河野)習総書記も69歳です。つまり、3期目が終わるころには75歳近くなるのです。年齢的なことを考えると、大きな仕事をする1つの山場を迎えるとも言えます。年齢の問題も軽んじるべきではないと思います。

飯田)自分の残された時間を考えると。

河野)やはりそこまで考えると思います。もう1つは、李克強首相が全人代の常務委員長になるかと思ったら、どうも外れるような観測が出ています。対抗軸として李克強首相がいたので、それが外れるということになれば、習近平体制が完全に側近で固められる方向になるのだと思います。

3期目が終わる前に成果を出さなければならない ~習近平主席が達成できるのは台湾の統一以外にない

飯田)普通は独裁という形になっていきますし、習近平氏は来年(2023年)で70歳になる。そのような年齢になり、野心を見せていくことになると、地域にとっては不安要因ですよね?

細谷)そうですね。李克強氏についても、アベノミクスをもじった「リコノミクス」という言葉がありましたが、李克強氏は中国の経済成長路線や改革開放路線の継承という考え方が性質として強かったと思います。

飯田)李克強氏は。

細谷)これがナショナリズムや軍事強国化をある意味で重視するような、習近平主席とのバランスを取っていました。李克強氏が完全引退することになると、経済成長がますます相対化されて優先順位が下がり、軍事力強化や国家統一というナショナリズムが優先されるかも知れません。

飯田)李克強氏引退ということになると。

細谷)経済成長を重視する場合、日本やアメリカとの関係も無視できません。これから強硬路線で人事を進めていくとなると、経済成長で成果が出なければ、他の何かで3期目にパフォーマンスを出さなければいけません。

飯田)成果として。

細谷)いままでは2期で終わるシステムを維持していたけれど、それを壊したわけですから。それだけ特別な存在であるということは、何か成果を出さなければいけない。ところが、コロナ禍でも最後は失速しましたし、経済成長も鈍化したとなると、習近平主席が達成できるものとしては台湾統一以外にないと思うのです。

飯田)習近平氏が達成できるものは。

細谷)3期目が終わる前に、何らかの成果を出さなければならない。もしも台湾が独立に動けば、習近平政権の失敗ということになります。「それを避けるためならば何でもする」という強い姿勢を持っている可能性はあります。

習近平氏が4期目を目指すには「台湾併合」しかない これだけの「理由」

中国共産党中央委員会統一戦線工作会議が2022年7月29、30両日、北京で開催。習近平 中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が出席し、重要演説を行った。(北京=新華社記者/姚大偉)= 配信日: 2022年7月31日 新華社/共同通信イメージズ

ブリンケン国務長官の中国に対する危機感を持った発言が意味するもの

飯田)アメリカのブリンケン国務長官が、スタンフォード大学の学生向けの演説で質問に答えたときに、「かつては現状維持をアメリカも中国も共通理解として持っていて、その間は現状が維持されていた。ところが、これをかなぐり捨てたのではないか」という指摘がありました。

河野)私もその新聞記事を読んで、ブリンケン国務長官としては一歩踏み込んだ、非常に危機感を持たれている発言だと思いました。

飯田)危機感を持った発言。

河野)2021年には、当時のデービッドソン米インド太平洋軍司令官が辞める前に、6年以内、つまり「習近平氏の3期目が終わるまでの間に、台湾に対する脅威が明確化する可能性がある」と言っていました。そしてブリンケンさんも危機感を持っているということです。(習近平氏が)3期目に突入するのは間違いないから、アメリカとしては「要注意だ」ということが政府内のコンセンサスとしてあるのだと思います。

台湾併合に成功すれば「中国共産党主席」の称号が復活する可能性も

飯田)その流れのなかで、米政府が台湾と兵器を共同生産する計画も出てきました。もう具体的に行動に出ているのでしょうか?

細谷)このままでは止められないという危機感がある。明らかに米中間の軍事力バランスが中国有利になり、アメリカが不利になってきている。それがより中国にとって、軍事力行使オプションのハードルを下げているとみているのではないでしょうか。

飯田)アメリカが。

細谷)この危機感がワシントンでも強くなっているのだと思います。それに対して、さらに今回の人事で李克強氏が外れ、習近平氏が4期目を目指しているということになると、3期目に成果を出せなければ4期目はないですから、では3期目に何を成果にするかというと、かなりの強硬路線になるかも知れない。経済成長というオプションは優先順位を下げることになると思います。

飯田)経済成長というオプションは。

細谷)ブリンケン国務長官もそうですが、台湾に対する強硬姿勢が強まると見るのが、適切だと思います。

河野)もし台湾併合に成功すれば、ある意味、毛沢東氏を超えることになります。それはつまり、毛沢東氏の宿題を片付けるということです。そうなると、4期目どころか永久総書記、なおかつ毛沢東氏が使っていた称号である「中国共産党主席」も復活する可能性さえあります。

台湾有事は日本有事ということ

飯田)それに対して、野心が台湾で留まるのかどうか。「沖縄もかつては琉球と言って、我々の領域だったのだ」と仄めかすようなことが出てきています。日本にとっても直接的な問題になっていきますか?

河野)いきなり沖縄ということにはならないと思いますが、少なくとも尖閣諸島は台湾省の一部だというのが中国の理屈です。従って、台湾問題と尖閣は彼らにとってワンセットの話なのです。その時点で、日本は台湾問題を我がことのように考えなくてはいけません。台湾有事は日本有事だとよく言われますが、この問題を持ってしてもそれは言えるのです。

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