ジャーナリストの佐々木俊尚が11月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。12月1日から行われる政府の節電要請について解説した。
政府、12月1日から節電要請決定へ
政府はこの冬の電力需給が厳しい状況にあるとして、12月1日から全国を対象に数値目標を設けない節電要請を行うと決めた。室内では重ね着をするなど、無理のない範囲で節電に協力を求めることにしている。
飯田)冬の節電要請は7年ぶりだそうです。
佐々木)ヨーロッパでも、フランスのマクロン大統領が「皆さん、タートルネックを着ましょう」と推奨しています。
飯田)「もうネクタイではないよ」などと。
佐々木)ヨーロッパではLNG、天然ガスはある程度、需給のひっ迫が弱まって余裕ができてきたという報道もありましたが、日本もこの冬は節電要請されても仕方がないのではないでしょうか。
原発1基を稼働するとLNG100万トン相当の電力になる
佐々木)来年(2023年)以降は積極的に原発を再稼働して欲しいですね。一応、17基の稼働に向けて進んでいるという話です。以前も西村経済産業大臣が言っていましたが、1基稼働するとLNG100万トン分に相当する。日本には稼働していない原発が30基ほどあると言われています。廃炉が決まっていないけれど、動いていないものが。
飯田)30基。
佐々木)30基を全部動かすと、LNG3000万トン相当の電力になります。
日本の原発をすべて再稼働すれば欧州の足りないLNG量・3000万トンに匹敵 ~欧州のLNGひっ迫を救える
佐々木)この「3000万トン」は、ウクライナ危機で言われていた「欧州の足りないLNG量の相当数に匹敵する」ということです。つまり、日本が原発を全部再稼働すれば、世界的なLNGのひっ迫が解決してしまう。
飯田)日本がすべての原発を再稼働すれば。
佐々木)エネルギー問題は日本国内だけの問題のように考えられているのだけれど、そのくらいの意気込みで再稼働に向けて進めるべきではないでしょうか。全部は無理かも知れないけれど、「我々はLNGのひっ迫を何とかします」と国際社会へ向けて宣言すれば、日本の株はかなり上がるはずです。
飯田)ある意味、日本が世界を救うと。
佐々木)そのくらいの国際的な視点を持って、岸田首相には問題にあたって欲しいですね。
西日本に偏る原発 ~東日本に電力を供給するには周波数変換所を通さなければならない
飯田)夏の段階で、「原発9基を再稼働させる」という話を会見でされていましたが、内訳を見ると西に偏っていますよね。
佐々木)関東以北に全然ないので、相変わらず西から東へ送電しなければいけないという面倒臭い問題が浮上してきているのです。
飯田)周波数が違うので周波数変換所を通さなければならない。
佐々木)東西で融通させるのが意外に難しいという問題もあります。
飯田)連系線の容量の問題が当然ながら出てきますよね。
脱炭素とエネルギー危機の問題を解消するには原発再稼働しかない ~岸田政権はそこに踏み込んで欲しい
佐々木)現状、脱炭素へ向けての政策とエネルギー危機の解消の問題があって、いろいろ噛み合わせると、「原発再稼働」以外の道はほぼないと思います。岸田首相にはそこに踏み込んで欲しいと個人的には思います。
飯田)電気自動車を進めていくにしても、電力需給がひっ迫する一方だというところがあります。
佐々木)いまの車がすべてバッテリーのみのEVに置き換わったら、電力はまったく足りないと言われている。しかも、あらゆるところで電気化が進んでいくことを考えると、「電力をどうやって増やすのか」が最大の問題になります。
原発をベースロードにし、変動部分を再エネで賄う
佐々木)もちろん再エネも大事ですし、やらなければいけないのだけれど、夜に発電できないとか、風が止まったら発電できないなど、「ベースロード」と言われるような安定的な発電にはならないのです。
飯田)再生可能エネルギーは。
佐々木)再エネと原発を組み合わせて、原発をベースロードにして安定的に電力を供給し、変動部分を再エネで賄うというやり方が、最も方向性としては正しいのではないでしょうか。
CO2排出量の少ない日本の石炭火力の技術 ~発展途上国で使ってもらうべき
佐々木)日本は石炭火力を未だに使っているので、以前は欧州から揶揄されて「化石賞」などを贈られました。日本の石炭火力は高性能で、CO2の排出が少ないというのはよく言われています。ただ、そこに対する批判が強いので、「石炭火力をやめる」という方向になっているのです。
飯田)批判から。
佐々木)しかし、日本が石炭火力の研究開発をやめてしまうと、中国の石炭火力プラントなどが東南アジアやアフリカに輸出されていく。中国のものは性能が低いから、CO2の発生量が多い。そう考えると、ベストではないけれどベターな方法として、日本の石炭火力を維持し、CO2排出量の少ない高性能な石炭火力を世界中の途上国、新興国で使ってもらう方が実はベターな政策なのです。
飯田)そうですね。
佐々木)「石炭はダメ」「原発はダメ」「再エネはいい」という短絡的な発想で考えてしまうと、グレーゾーンの部分が切り落とされてしまうことになりかねないので、「全体の総量はどうなのか」ということを測りながら、この問題について取り組む姿勢が大事だと思います。
飯田)石炭は当然ながら入手が安価で、各国で掘り出されるからこそ、途上国などは使いたいということです。
佐々木)途上国のエネルギー問題と、脱炭素をどうするかというバランスはずっと議論されているのだけれど、未だに「先進国の押し付けだ」という話になるわけで、そこを解決しなければいけないですよね。
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