ジャーナリストの佐々木俊尚が11月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。大阪急性期・総合医療センターがサイバー攻撃を受けた「ランサムウエア」について解説した。
「大阪急性期・総合医療センター」が身代金要求型のウイルス攻撃を受ける
大阪市住吉区の「大阪急性期・総合医療センター」で10月31日、「ランサムウエア」と呼ばれる身代金要求型のウイルスによるサイバー攻撃を受け、電子カルテなどのシステムに障害が発生して閲覧などができなくなっている。病院では10月31日に続き、11月1日も朝から通常の外来診療や緊急以外の手術を停止している他、救急患者の受け入れもできない状態となっている。
飯田)専門業者に依頼し、侵入経路や被害を受けた範囲の特定などを進めていますが、まだ復旧の目処は立っていないということです。
「復元したいならビットコインで支払え」などのメッセージ ~こっそり支払う企業も
佐々木)ランサムウエアは昔からあるのですが、勝手にウイルス的なもので侵入して、患者さんのカルテなどのデータを勝手に暗号化してしまうのです。
飯田)勝手にロックをかけてしまう。
佐々木)「ロックを解除して欲しかったらビットコインでお金を払え」と。ただ、支払ったところで本当に解除してくれるかどうかはわかりません。こっそり払っている企業も多いという話は前々からあります。
飯田)表に出ずに。「表に出すとニュースになってしまう」ということを恐れるのでしょうか?
佐々木)警察に対して「お金を払いました」とも言えないでしょうし、なかなか難しい問題です。だからと言って、「紙の方がよかったのか」という話にしてしまうと、デジタル化が進まなくなってしまいます。
セキュリティ対策をきちんと講じた上でデジタル化を進める
佐々木)河野太郎デジタル大臣が「保険証をマイナンバーカードと一体化してマイナ保険証にします」と言いましたが、立憲民主党の枝野さんは「停電したらどうするのだ」などと批判していました。しかし、「停電したらどうするのか」と言い出したら、もう何もできません。お医者さんが反論していましたが、停電したらそもそも診療できません。当然です。
飯田)停電したらそうですね。
佐々木)やるべきことは、デジタル化を進めて、同時にランサムウエアなどに侵入されないようにセキュリティのアップデートを常に施しておく。あるいは専門業者に頼んでセキュリティを高めておくなど、そういう対策をするべきではないでしょうか。
東日本大震災の教訓から電子カルテの有効性が認識され、一気に広がった
佐々木)昔、病院のカルテはすべて紙でした。経産省や総務省が2000年くらいから「電子カルテを進めよう」としたのですが、厚労省が嫌がっていたのです。
飯田)厚労省が。
佐々木)なぜかと言うと、医師会に話を聞いたところ、医師会は個人開業医の年配のお医者さんが多いから、「そんなものはいらない。紙で十分だ」とみんなが言っていると。経産省などが、ある地方で電子カルテの実証実験を行い、うまくいくのだけれど、実際に現場に下ろそうとしたら反対が多くてうまくいかなかったのです。その風向きが変わったのが3.11です。
飯田)東日本大震災。
佐々木)あのとき病院が津波に流されて、紙のカルテも一緒に流されてしまった。そうすると、処方箋も出せなくなってしまう。
飯田)何の薬を飲んでいるのかわからないと、どんな副反応、副作用が起きるかわからないから、出しづらくなってしまいます。
佐々木)電子カルテなら、クラウドにデータが保存されていれば、仮に病院のコンピュータが全部壊れたとしても、すぐに復旧できる。「クラウドに置く電子カルテは災害に対して有効である」という認識が広まった結果、一気にこの10年で電子カルテ化が進んだ……そういう流れがあるのです。
サイバー攻撃以外にもSNSによるプロパガンダにどう対応するのか
飯田)11月2日の朝日新聞に、サイバー攻撃に関する記事が載っています。
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『対サイバー攻撃、司令塔 安保局に新設検討 「積極的防御」体制も 政府』
~『朝日新聞デジタル』2022年11月2日配信記事 より
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飯田)国家安全保障局のなかに「サイバーディフェンスの部局」をつくるということです。事前に探知していた怪しいところに対して情報を取るという、積極的防御についても出ています。
佐々木)自衛隊・防衛省が自衛隊内にサイバー攻撃の部署をつくるという話も出ています。今回のランサムウエアのようなものだけではなく、ロシアがよくやっていますが、「SNSによるプロパガンダにどう対応するのか」ということも真面目に考えなければいけない時期に来ていると思います。
飯田)積極的防御に関しては、通信の秘密を侵害するのではないかという、憲法議論になってしまう話があります。
佐々木)それもありますよね。
飯田)これについては総務省が嫌がっているということを聞きます。
佐々木)議論を丁寧に積み重ねないと、大きなハレーションが起きるかも知れません。
飯田)こういうところも含めて、70年~80年経っている憲法にはいろいろな問題が出てきます。
佐々木)デジタル化など、日本国憲法は想定していませんでしたからね。
飯田)当時は真空管の時代ですからね。
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