ウクライナ情勢の影響でさらに実現困難「2050年までのカーボンニュートラル」をどうするのか

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ジャーナリストの須田慎一郎が11月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)について解説した。

ウクライナ情勢の影響でさらに実現困難「2050年までのカーボンニュートラル」をどうするのか

ドイツ西部ダッテルンの石炭火力発電所 EPA=時事 写真提供:時事通信

COP27

国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が11月6日、エジプトで開幕した。ウクライナ侵攻によって深まる欧米とロシアの対立でエネルギー危機が深刻化し、温室効果ガスの排出が多い石炭への回帰も進むなか、地球規模の課題に向けて各国が協調できるかが焦点となる。

被害国をどう支援していくか ~国際的な枠組みで行うのか、個別に行うのか

飯田)初日の会合では、「損失と被害」と呼ばれる途上国の被害支援を正式議題とすることが決まりましたが、ここでも対立が懸念されるそうです。

須田)今後、被害国支援は1つの大きな焦点になってくるでしょうね。国際的な枠組みで行うのか、それとも個別の国で行うのか。デンマークなどは個別の国として対応を始めています。北欧などは前向きに反応していますが、どの程度の規模感で進めていくのか。おそらく実施する方向には進んでいくと思いますが、そこが1つの大きな焦点になってくるのではないでしょうか。

2050年までにカーボンニュートラルは実現できるのか ~軌道修正するのかどうか

須田)もう1つは、やはり2050年にカーボンニュートラルが実現できるかどうかということです。この計画は軌道修正されるのか、それとも、そのまま走っていくのか。そのまま走っていくのはいいのだけれども、それが実効性のある約束になっていくのかという問題にも関連します。今後の議論のなかでも難しい問題ではないかなと思います。

ウクライナ情勢により、石炭火力に回帰せざるを得ない各国

飯田)前回までの会議と変わったのは、やはりウクライナに対するロシアの侵略です。エネルギー問題について、「背に腹は代えられないから石炭を使う」とドイツまで言い出しています。

須田)近年、石炭は極悪人のような扱いを受けていたのですが、例えば日本においてのベースロード電源、天候や昼夜によって差が出ない発電方法は4つしかないのです。

飯田)4つ。

須田)原発、石炭火力、地熱、水力の4つしかありません。ただ、日本においては原発が使いにくい。そして地熱においては、まだほとんど実効性がないという状況です。水力も気候変動による影響を受けています。雨が降らないと水力発電も難しい状況になります。消去法で考えると石炭火力ということになる。

飯田)なるほど。

須田)2050年カーボンニュートラルを目指して、各国が石炭火力の廃棄を進めてきましたが、そのスピードを緩める、あるいは廃棄をやめるという選択肢もこれから出てくるのではないでしょうか。

飯田)いまは既存の火力発電所、石炭を使うものは潰していく方向であり、かつ新増設もなかなかできない。専門家は「2022年~2023年に電力がひっ迫する可能性がある」と、もともと指摘していたようです。この辺りに歪みが出てしまいますよね。

新エネルギーとして政府が位置付ける「水素」もロシアとの関係で頓挫

須田)それがロシアによるウクライナ侵攻によって加速する可能性も高いです。COP27の話題とは少し離れるのですが、日本のエネルギー戦略を考えていくと、再生可能エネルギーに全面的に依存するわけにはいかない。そのため新エネルギーとして、政府あるいは経済産業省・資源エネルギー庁などが水素を位置付けていました。

飯田)水素を。

須田)水素をどこで確保するかと言うと、ロシアなのです。ロシアの北極圏、ギダン半島などで大規模に開発していますが、水素には天然ガスが必要なのです。天然ガスを分離して水素を取り出し、気候変動によって北極圏の氷が溶けているため、北極海航路で日本に持ってくるという構想だったのですが、そこが難しくなってきた。

飯田)いま頓挫してきているわけですものね。

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