ロシアとウクライナの戦いが驚くほど「コントロールされている戦争」である理由

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地政学・戦略学者の奥山真司が11月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアによるウクライナへのミサイル攻撃について解説した。

ロシア軍から奪った戦車の上に立つウクライナ兵=2022年3月27日、キエフ郊外(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ロシア軍がウクライナのエネルギー施設に50発以上のミサイルを発射か

ウクライナ空軍はロシア軍が10月31日、ウクライナの首都キーウのエネルギー施設などを狙って50発以上のミサイルを発射し、44発を迎撃したと発表した。キーウ市によると、攻撃の影響で約8割の世帯が断水した。攻撃は国内第2の都市である東部のハルキウや、中・南・西部の10以上の州に及び、停電や断水の被害が相次いでいる。

飯田)このところはミサイルによる都市への攻撃が出てきました。一方、前線ではロシアは押されているとも言われています。

ロシアによる爆撃は「ロシアがうまくいっていない証拠」 ~撃ったところで軍事的には意味がない

奥山)ロシアによるこの手の都市に対する爆撃については、いままでは狙いがあまりなかったということですが、今回はインフラを狙っています。しかし、インフラを狙っているとしても、ロシアがうまくいっていない証拠としか映りません。

飯田)うまくいっていない証拠である。

奥山)この種の爆撃の研究が、アメリカを中心に軍事研究の一環として、爆撃の種類の区別や爆撃の成果について、軍事関係者を中心にかなり研究されています。戦略研究としては、艦砲射撃に分類されるのではないかと言われています。艦砲射撃とは何かと言うと、昔のように船が沿岸などにやって来て、都市に対して大砲を撃つことです。

飯田)港町に。

奥山)しかし、撃ったところで何か成果があるわけではありません。民間施設や家などが壊されることはあるのですが、海の上から撃つので、狙いが定まりません。破壊行為をするだけで軍事的には何も意味がないのです。

飯田)戦略的な意味で、その地域を制圧するということではないのですね。

ロシアに攻撃されることで団結するウクライナ

奥山)ただ爆弾を撃ち込んでいるだけです。陸上に行って占領するならわかるのですが。

飯田)最終的に歩兵が前に出て行かないことには。

奥山)それができていないのです。ただ撃ち込んでいるだけではないですか。

飯田)今回の作戦も、そこと連携して首都を獲るというような話ではないのですね。

奥山)ないですね。単なるインフラに対する嫌がらせです。効果的に発電所や変電所などのインフラ施設に対して撃ち込んでいるとは思いますが、最終的にはそのような施設は復旧されてしまうので、あまり意味のないことをやっているのです。

意味なくウクライナを団結させるような攻撃をしているロシア

奥山)艦砲射撃のようなことをやり続けると、ロシアはウクライナ国民をさらに団結させてしまいますし、ウクライナという国民のアイデンティティをつくってしまっている。むしろ、ロシアはウクライナという国を団結させるようなことしかやっていない、ということが見えてくるのです。

飯田)ウクライナを団結させている。

奥山)被害を受けたことによって、「ロシアはやはり悪い奴だ、自分たちはウクライナ人としてまとまろう」という気持ちをつくってしまっているので、まったく意味のないことをやっていると正直思います。

今回の戦争は驚くほどコントロールされている戦争である ~ウクライナもNATOが核を持ち、ロシアも核保有国

飯田)国内向けのパフォーマンスなのかという指摘もありますが、そのようなことをやっていてプーチン氏は大丈夫なのでしょうか?

奥山)大丈夫ではないと思いますし、戦略的に失敗していると指摘されています。私自身、この現象を全般的に見て思うのは、「今回の戦争は驚くほどコントロールされている戦争だ」という印象があります。

飯田)コントロールされている。

奥山)なぜかと言うと、「核兵器保有国同士の戦争」なのです。ロシアは核兵器を持っていて、ウクライナは持っていないのですが、背後で支援しているNATOの国々は核兵器を持っています。

核戦争に発展しないようコントロールしているロシア

奥山)そうすると、「いつ核戦争に発展するかわからない」という状況があります。ウクライナ国民にとっては全面戦争ですが、ロシア側としては「核戦争になったら危ないかな」と思っていて、状況をコントロールしていることが見えてくるのです。

飯田)ロシアが。

奥山)同じような状況として、1999年にパキスタンとインドが、インド北部カシミール地方のカールギル地区で、軍事的に両軍が衝突したことがあります。そのときもお互い核兵器を持っているため、「これ以上エスカレートさせたら危ない」ということで、コントロールされた状況ができていました。お互い、「本当に危ないことはやらない」というかなり自制された戦争でした。

飯田)そのときの戦争は。

奥山)今回の戦争も、軍事行動では酷いことをしていますが、実は「エスカレートしないようにいろいろとやっているな」というのが私の正直な印象です。

穀物を積んだウクライナからの船を攻撃しない

奥山)それには1つ理由があります。いまウクライナから小麦が船で運ばれていますが、それに対してロシア海軍は原子力潜水艦を持っているにも関わらず、あえて攻撃はしていないのです。ウクライナ側の穀物が出ていくのを一応、合意する形で運ばせているところがあります。

飯田)なるほど。

奥山)すべての面で激烈に戦争をしているかと言うと、そうでもないのです。朝鮮戦争やベトナム戦争のときのように、エスカレートしないようにケアしながらやっているな、という印象があります。

飯田)確かに、国連とトルコのお墨付きで、穀物を積んだ船が港を12隻ぐらい出たという報道がきょう(11月1日)もありました。ロシアは合意への参加を停止したことになってはいますが、事実上は黙認するような形になっているのですね。

キューバ危機以来、重要視されている首脳同士のホットライン

飯田)キューバ危機以来、さまざまなチャンネルがあるということでしょうか?

奥山)その通りですね。1962年のキューバ危機のときに、ホットラインをつくらなければならないという意識になった。いざ危ないことがあったら、「現地ではどうなっているのか」ということを、首脳同士で特別な電話解析で「お互いにコミュニケーションを取りましょう」ということがありました。

飯田)キューバ危機以来。

奥山)ロシアとウクライナの間でも、バックでいろいろと交渉していますし、アメリカとロシアでも少し交渉していることも見えてきます。そのような面では、最終的に「お互い核兵器を撃ち合うようなことはやめよう」という部分での擦り合わせのようなところは一応、成立しているのだと思います。

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