史上5校目の三冠へ 「大エース田澤廉」とその背中を追うスーパールーキーたち

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、11月6日に行われた全日本大学駅伝を大会新記録の強さで制した駒澤大学にまつわるエピソードを紹介する。

第53回全日本大学駅伝 7区で区間新を記録した駒沢大の田沢廉=2022年11月6日、三重県松阪市 写真提供:産経新聞社

秋の伊勢路で行われた、大学日本一を決める全日本大学駅伝。4位まで大会新記録という異例の高速レースとなったなか、圧巻の強さを見せたのが優勝候補筆頭と目されていた駒澤大学。従来の記録を4分以上縮める5時間6分47秒の大会新記録で、3大会連続15度目の優勝を飾った。

これで駒澤大は10月の出雲駅伝に続いて大学駅伝2連勝。箱根駅伝での「史上5校目の三冠達成」がいよいよ現実味を帯びてきた。

今大会、さすがの走りを見せたのが7区を走った駒澤大学のエース、田澤廉(4年)。今年(2022年)の夏には、大迫傑以来となる学生4人目の世界選手権出場(10000m)を果たした、もはや大学長距離界の大エースだ。

出雲駅伝ではレース1週間前に胃腸炎になり、本来の走りがまったくできなかったという田澤(それでも出雲では区間2位だったのだから恐れ入るが)。今回はその不甲斐なさを払拭すべく、レースに臨んでいた。

『出雲駅伝のときに体調が悪くなった。全日本では絶対に体調を整えて、エースらしい、他の人を寄せ付けないような走りを目的としていました。自分の中で、49分台を一つの目標に走ろうと思った』

~『4years.』2022年11月6日配信記事 より(田澤廉の言葉)

その言葉通り、エース区間の7区(17.6km)を走った田澤は、これまで誰も破れなかった7区50分台の壁を突破し、49分38秒。これまでの記録を43秒も縮める区間新の走りを見せて大会MVPにも選ばれた。

もっとも、田澤がすごいことはわかりきっていたこと。今大会、改めて驚かされたのは駒澤大の層の厚さ。なかでも、1年生から新たなスターが続々と出てきていることだ。実は大会前日の監督会見で、駒澤大の大八木弘明監督自身がこんな言葉を述べていた。

『初出場の選手に頑張ってもらいたい。1年生がキーマンになります』

~『月陸Online』2022年11月5日配信記事 より

その言葉が予言のように、今大会では2人の1年生が痛快な走りを見せてくれた。1人は、出雲駅伝でも区間新記録の走りを見せた怪物ルーキー、佐藤圭汰。洛南高校時代から陸上界では注目を集めてきた選手で、1500m、3000m、5000mの3種目で高校歴代最高記録を樹立した逸材だ。

高校時代は洛南高の2学年先輩、東京五輪男子3000m障害で日本人初の7位入賞を果たした三浦龍司(現・順天堂大3年)を目標に掲げ、駒澤大学入学後は、田澤の存在を常に意識して普段の練習でも同じメニューをこなすという、既に意識が「世界」を向いている選手だ。

今大会では憧れの先輩・三浦龍司と同じ2区(11.1km)を走ることに。三浦は9人抜きの走りで存在感を見せたが、タイム的には佐藤が三浦を上回り、区間新の走り。創価大の葛西潤(4年)がさらに1秒早く走ったため区間2位に終わったが、大先輩に対しても成長した姿を見せつけた形だ。

そしてもう1人の注目ルーキーは、今大会が駅伝デビュー戦となった4区(11.8km)の山川拓馬だ。序盤から1キロ2分40秒の速いペースを維持すると、33分41秒で区間賞を獲得した。

『緊張は結構あったんですけど、出雲駅伝のメンバーに選んで頂いて、走れなかった悔しさがあったので、区間賞を取れてよかったです。名門の駒大のタスキを良い順位で渡せて誇らしいです。大八木監督のゲキが、自分の切り替えのところですごいありがたかったです』

~『スポーツ報知』2022年11月6日配信記事 より(山川拓馬の言葉)

高校時代、インターハイ5000mで決勝も経験している実力者ではあるが、決して今大会前の下馬評が高かったわけではなかった。そんな選手の才能も引き伸ばしてしまうところが駒澤大の練習密度の高さであり、「大八木マジック」とも称される大八木弘明監督の手腕の確かさだ。

前述の佐藤圭汰も、大八木監督から「佐藤くんを世界レベルに育てたい」と誘われたことが駒澤大進学の理由と語ったことがある。選手からの信頼が厚い熱血監督、そしてその熱血指導を糧にどんどん層を厚くしている駒澤大は、いよいよ「大学駅伝三冠」達成に王手をかけ、年明けの箱根駅伝に挑むことになる。

大エース田澤も、箱根に向けて迷いなし。今大会後、早くもこんな言葉で次のゴールを目指すと宣言してくれた。

『今後、箱根駅伝がありますけど、箱根でも駒沢のエースとして他を寄せ付けない走りをしていきたい。チームとしても(三冠まで)あと一つのところまできているので、より引き締めて臨んでいけたらと思っています』

~『4years.』2022年11月6日配信記事 より(田澤廉の言葉)

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