「羽田空港にはEVの普通充電器が5つしかない」 自動車評論家が語る 日本の電気自動車事情

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自動車評論家の国沢光宏氏が11月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。電気自動車の未来とその課題について語った。

「羽田空港にはEVの普通充電器が5つしかない」 自動車評論家が語る 日本の電気自動車事情

※画像はイメージです

新型プリウスがEVではなく、ハイブリッドである理由

飯田)電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)で言えば、11月16日にトヨタの新型プリウスが発表されました。「EVではなくハイブリッド、あるいはプラグインハイブリッド(PHV)なのか」と思ったのですが、どのような期待感がありますか?

国沢)皆さん、勘違いしていると思うのですが、最終的に電気自動車の時代になるのは2050年です。

すべて電気自動車になる環境が整うのは2050年 ~あと10年~15年は大きな役割を果たすハイブリッド

飯田)まだまだ先の先なのですね。

国沢)まだまだ電気自動車の環境は整っておらず、いまは移行期なのです。移行期には、燃費のいいハイブリッドがあと10~15年は大きな役割を果たすということで、(新型)プリウスはハイブリッドなのです。

飯田)つまり、現実的な選択肢ということですか?

国沢)そうですね。すぐにすべてが電気自動車になるわけではなく、徐々に移行していく間に、二酸化炭素の排出量を減らさないといけない。普通のガソリンエンジンからハイブリッドに乗り換えると、大体半分くらいになるので、50%減ということになります。そういうものを経て、徐々に電気自動車になっていくのだと思います。

デザインが修正され、「かっこいい」と世界的に評価を受けている新型プリウス

飯田)デザインの部分も変わってきていますし、操作性も見づらかったシフトレバーが改良されたということですが、どんなところに注目されていますか?

国沢)発表されると、世界的に大きな反響がありました。いま売っているプリウスは4代目で、3代目はとても売れたのですが、販売台数を落としてしまったのです。

飯田)4代目が。

国沢)世界規模で「デザインがあまりよくない」と厳しい評価を受けました。逆に今回の新型は、非常に「デザインがいい」という評価を受けました。どこの国でもYouTubeを見ると「かっこいい」、「美しい」、また「新しい」など、称賛の声ばかりです。

飯田)見た目が全然違うと。

国沢)車というのは、やはり格好が重要だと思います。スタイルが悪ければ、どんなに性能がよくてもやはり売れない、ということなのです。車は環境の前に、「車という商品の魅力」が大きいと思います。

世代による車に対する価値観の相違

飯田)EVやHVになると、「車本来の部分が損なわれてしまうのではないか。走りの面白さがなくなった」と言う方もいますけれど、バランスを取りながら進めていくのですか?

国沢)世代によって価値観が違います。私のような60代の人間は、鉄道と言えば蒸気機関車がかっこいいと言われていたのですけれども、いまの若い人は電車を見て「インバーターがどうのこうの」などと言っているのです。車に関しても、私たちはガソリンエンジンや「排気ガスの匂いがたまらない」などと言いますけれど、これからの若い世代では電気自動車が主になっていくのではないかと思います。

車のデザインの特殊性

ジャーナリスト・鈴木哲夫)私も60代半ばですが、セダンの角ばった感じが好きなのですよ。

飯田)四角い感じの。

鈴木)丸っこい曲線はダメなのです。最近、「同じ曲線の車ばかりだな」と思うのですけれど、性能だけではなくデザインも、売れるための極めて重要なポイントなのですね。

飯田)世界で通用しなくてはいけないとなると、デザインも普遍的なものに変わってくるのですか?

国沢)飛行機のデザインはみんな同じようなものになっていますよね。

飯田)確かに。

国沢)車のデザインも、空気抵抗を減らさなくてはいけないので、似てくることは似てくるのです。カクカクの車は空気抵抗がよくないので、カクカクの飛行機がないのと同じです。これから電気自動車の時代になっても、滑らかなラインになっていくと思います。

鈴木)さみしいな。

真剣に化石燃料を使わない方向に動いているヨーロッパ ~中途半端な日本の取り組み方

飯田)追々、電気自動車に移行する流れのなかで、ヨーロッパの自動車会社はいち早く「EVだ」と、すぐにでもできそうな報道がされています。そのプロセスはどのように捉えていらっしゃいますか?

国沢)調べたり、ヨーロッパに行って話を聞くのですけれども、強行に進めているようですね。日本は「環境」といっても、あまり真剣に考えていない気がします。ヨーロッパで決まったから、という形で動いていると思うのですけれど。

飯田)環境問題に関して。

国沢)ヨーロッパの人たちは本気で、いまロシアがウクライナ侵攻で問題を起こしていますけれど、そんな状況のなかでも電気自動車に向かう道を諦めていないですし、恐れようとも思っていないですね。真剣に、化石燃料を使わない方向に動いていると思います。

日本は積極的に規制に取り組むべき ~日本が性能の高いEVカーをつくればいいだけの話

飯田)ひねくれた見方をしてしまうのですが、ヨーロッパの自動車会社がガソリン車で日本に勝てず、ディーゼル車でも不具合があった。HVでももちろん勝てないと。環境規制で締め付けながら、日本排除をしているのではないかと考えてしまうのですけれども、いかがですか?

国沢)そう考えることもできます。でもヨーロッパのマーケットですよね。日本のマーケットではないので、向こうが決めたルールはこちらも守らなければいけないため、文句を言っても意味がありません。

飯田)なるほど。

国沢)向こうが「そうしよう」と言ったら、技術で負けなければいい。日本が頑張ればいいだけの話だと思います。

飯田)かつてCVCCエンジンでホンダが頑張ったことと同じですか?

国沢)その通りです。アメリカで排ガス規制ができたときに、世界中の自動車メーカーが「できない」といって流れようとしているときに、日本の自動車メーカーであるマツダとホンダが「いや、クリアできるよ」といって動き始めたのです。むしろ日本は積極的に取り組んでいくべきだと思います。

「羽田空港にはEVの普通充電器が5つしかない」 自動車評論家が語る 日本の電気自動車事情

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圧倒的に遅れている日本のEV(電気自動車)の充電インフラ

飯田)電気自動車の場合、インフラ部分で充電器も整備しなくてはいけないと思うのですが、日本の現状はいかがでしょうか?

国沢)圧倒的に遅れていると思います。ヨーロッパに行くと、町のいたるところに200ボルトの普通充電器があるのです。買いものに行ったときでも充電できる。

飯田)町のいたるところに充電器がある。

国沢)飛行場に行っても、アメリカではずらりと200ボルトの充電器が並んでいます。一方、日本でいちばん大きな飛行場である羽田空港には、200ボルトの充電器は5つしかないのです。

飯田)5つですか。

国沢)考えられないくらい、やる気のないイメージですね。

普及するには急速充電器ではなく、通常の200ボルトの充電器を充実させる

飯田)インフラを整備しないと、ニワトリが先か卵が先かと言いますが、車そのものも普及しないということですか?

国沢)日本ではよく急速充電器のことを言われますが、急速充電器は取り合いになるし、コストが掛かるのです。性能が高ければ高いほど設置コストも掛かるし、維持コストも高く、とても電気を売るビジネスとしては成立しません。

飯田)急速充電器は。

国沢)急速充電器は、テスラやポルシェなど、1000万円以上の車に乗るような人たちのものなのです。普及には、ショッピングセンターや病院、会社などに200ボルトの普通充電器を置くことが大切だと思います。

1時間の充電で3分の1が入る軽EVのサクラ

飯田)普通充電器では、短時間で充電できないのではないかと思うのですが。

国沢)皆さんそう思っているのですけれども、例えば日産のサクラという軽自動車は20キロワット、ガソリンで考えると20リッターのイメージでいいと思います。20リッターくらいの量の電池なのです。

飯田)ガソリンで例えると20リッター車。

国沢)普通充電器でも、1時間で6リッター入れられるので、3時間も充電すればほとんど満タンになります。ショッピングセンターに1時間いれば、だいたい3分の1ほど入るので十分だと思います。

飯田)なるほど。それでコストも安いのであれば、普及して欲しいですね。

国沢)そうですね。最近、ガソリンスタンドが減ってきているのです。地方に行くと、ガソリンを入れに行くのに20~30分走るような地域が多くなっています。電気は幸い、日本は津々浦々どこにでもあるので、そういう意味では電気のインフラの方が簡単なのです。

飯田)なるほど。

国沢)しかも電気の方が安いです。

ガソリン税の代わりに課す走行距離税 ~本来であれば補助をつけるべき

飯田)もう1つ、最近だと電気自動車(EV)になったらガソリンで税金が取れないから、走行距離税を課すという話が出てきましたけれども、いかがでしょうか?

国沢)自動車に乗っている人はみんなお金持ちだと思われていて、たくさんの税金を掛けています。重量税、自動車税、ガソリン税、さらに他の国だと大して高くない高速道路料金も、日本では高いです。

飯田)日本の高速料金は高いですね。

国沢)車からは取りたいだけお金を取っていて、さらに電気自動車の時代になると、ガソリン税がなくなります。それが足りなくなるので、「走ったらお金を出せ」ということを考え出しているのです。

飯田)走った分だけお金を取られるのだったら、使う人がいなくなるのではないですか?

国沢)東京にいると、車は遊びの道具と思われますが、地方では足になるのです。これから人が減ってくると、地方の公共交通機関がさらになくなっていきます。それをカバーできるのは車と個人の足なのです。それに対して、本来であれば補助をつけてもいいのに、お金を取るというのはどうかと思います。

飯田)本来、普及するはずのEVも普及しなくなってしまいますよね。

国沢)足を引っ張ることになると思います。何を考えているのかよくわかりません。

飯田)いろいろな税金を取られていますが、自動車の重量税に関しても、電池が重いからもっと取れという話があるらしいですね。

国沢)重量税ではなく、走行距離課税ですね。「電気自動車は車重が重いから道路を傷める」と言っているのですけれど、二次関数のグラフを見ると、下のところは角度が緩やかなのです。乗用車は軽いので、道路を傷めているのは右の方にあるトラックなのです。

飯田)そうですよね。

国沢)確かにEVの車重は10%くらい重いのですけれど、ほとんど角度のないところでの10%なので、それで道路を傷めると言うのは乱暴な話ですし、それを信じる人も信じられないですね。

飯田)少し考えれば、「トラックの方が重い」という話になります。

国沢)トラックの方が何万倍も道路を傷めますので、それに比べると本当に微々たるものです。

飯田)いろいろな課題が見えてきました。

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