国の借金で毎年の「防衛費」を賄うことの限界 逃げれば逃げるほど次の世代にツケが

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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が11月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。防衛費増額の財源に関する議論について解説した。

※画像はイメージです

防衛費増額の財源、増税案に自民党内から批判相次ぐ

防衛費増額の財源として増税を含めた国民負担が必要だとした政府の有識者会議の報告書に対し、11月29日に開かれた自民党の会合では「増税を念頭に置いた議論が出てくるのは唐突だ」などと批判が相次いだ。

国の借金で毎年の防衛費を賄うことには限界がある

飯田)国防部会と安全保障関連の合同会議における議員たちの発言だそうです。増税の話がいろいろなところで出てきますけれども、どうご覧になりますか?

松井)庶民感情で言うと、こんなに物価が値上がりして所得が増えない状況のなかで、「また増税か」というような話があると、政治家がそういうところを敏感に捉えるのは体感としてはよくわかります。

飯田)庶民の気持ちを。

松井)しかし、国の借金で毎年の防衛費を賄うことには限界があるわけです。「こんな厳しい経済環境で増税できるか」という議論が常に出てくるという状況が、30年も続いているのです。

「防衛の問題」を従来の構造のまま放置してきた日本政府 ~増税の議論は「唐突」ではない

松井)日本をめぐる安全保障環境は年々厳しくなっています。アメリカだけに頼っていればいいという時代でもない。ヨーロッパもそういう基準を持っているというときに、「防衛費をどう賄っていくのか」は避けられない問題です。

飯田)そうですね。

松井)そういう環境になっても、ある種「防衛の問題」を従来の構造のまま放置してきたわけですから、それで「唐突」と言われても、仕方ないことなのです。

何のために防衛費が必要なのかを国民に丁寧に説明するべき

松井)政治家の気持ちはわかります。いまの庶民感情の気持ちもわかる。こんなご時世に「増税ですか?」という気持ちもわかるけれど、「何のために防衛費が必要なのか。下手をすると大変なことになる」という状況をきちんと説明して、毎年の基本的な収入のなかで増やしていく努力をしないと、どうしようもないのではないでしょうか。

飯田)基本的な収入のなかで。

松井)逃げれば逃げるほど次の世代にツケは先送りされて、より重い負担がかかるわけです。将来、これがGDP比1%以下で済むという時代になるのが理想ですが、それが見通せない以上、やはり、ある程度は恒久的な財源に見合うようなものをつくっていく努力をし、国民に説明するのが政治家の責任だと思います。「唐突だ」などという発言は他人事のように聞こえてしまいます。

飯田)他人事のよう。

松井)昔、選挙で選ばれた人間として気持ちはわかりますし、庶民の感覚もわかるけれど、「説明しなければダメでしょう」と思います。

防衛費を外為特会の差益に依存することは危険 ~選挙対策の匂いもする

飯田)税収を見ると、今年(2022年)の税収はかなり上振れしているようですが。

松井)その議論はあります。税収が2~3兆円上振れしている、あるいは国民民主党の玉木さんが言っているように、外為特会の差益がかなりあるわけです。ここ5年間の防衛費の追加分くらいは外為特会の含み益があるから、何とかできるでしょう。しかし、いまは対応できるけれども、それに依存してしまうのは危険なことです。

飯田)その財源に依存することは。

松井)政治家はすぐに「とりあえずこのお金を取り崩せば」という話をするのです。場合によっては高橋洋一さんがおっしゃっているように、財政的な隠れ何とかというものがあって、ときには取り崩すという発想ももちろん必要です。

飯田)埋蔵金という。

松井)ただ、それに依存してしまって、「とにかく国民から不満が出るものは避けよう」という発想は、選挙対策の匂いがするのです。国民民主党の言い分も理解するけれど、インフレ手当……「手当」というと言い方はいいけれど、どこから出るのでしょうか。サラリーマンではないのだから、会社が払ってくれると言っても、結局それは国民負担ですよね。

飯田)回り回れば。

松井)差し引いた税金しかないわけで、インフレ手当という言葉が「会社から手当が出る」というような感覚で使われている。ネーミングも含めて、無責任な感じがします。ときには給付金が必要なのはわかります。しかし、自分の負担意識をなくしてしまうことを私は恐れます。

「増税は唐突だ」という批判は政治家特有の言い方 ~「インフレ手当」というネーミングもどうか

飯田)経済を回して、ある程度の収入があるから負担感もそれほどなく、負担はしていくというのが王道なわけですよね。

松井)「経済を拡大して税収を上げていかなければならない」というのは、大前提としてその通りですし、逆に変な形で経済を冷やしてしまうような増税は慎重に考えなければいけません。けれど、「増税は唐突だ」という批判は政治家特有の言い方だと思うのです。

飯田)ポピュリズムに迎合しているのではないかと。

松井)インフレ手当とか。庶民にはわかりやすいと思いますが、それは人々をある意味でスポイルしていく。「どこかから金が降ってくるのではないか」という、無責任な言い方だと思います。昔の民主党政権がまさにそうだったではないですか。「政権交代すれば財源なんて、どこかから出てくる」と言って、出てこなかったわけです。

飯田)出てこなかった。

松井)いま、たまたま税収が増えているというのは、国民の納税が増えているというだけのことであって、降ってきているわけではないのです。国民の血税なのです。私は別に財務省の手先ではありません。何でも増税して賄えとは言わないし、経済は生き物だから優先するのは当然なのだけれども、その言い方が気に食わないということです。

全体の歳入を見直し、見取り図を明らかにして「なぜ増税が必要か」を説明するべき

飯田)全体像というか、この先の10年~20年を安全に暮らすために「こうなのですよ」と示した上で、「ここは負担しましょう」「ここはきついから、まずはどこかを切り崩して対応します」という全体像が見えてくれば、みんな納得するかも知れません。

松井)そういうことを議論する政党が出てこない。一時、日本維新の会はそういうことを言っていたのです。全体の歳入を見直し、見取り図を明らかにして、どういうものにするのか。例えば福祉財源も、彼らが言うところのベーシックインカム……ベーシックインカムというのは定義がいろいろあって、竹中平蔵先生的なベーシックインカムから、もっと福祉に触れた大きな福祉国家のベーシックインカムと、両方あるのですが。

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