「税金」に頼らず「コミュニティの力」を使うことも議論するべき日本
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が11月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。防衛費などの財源について解説した。
「共助」という考え方
飯田)防衛費をめぐる話から、負担財源についての議論があります。一方で、子や孫の世代まで安全に暮らせることがない限り、日本全体がこの先も繁栄していくことはない。この全体の部分ですよね。
松井)そうだと思います。
飯田)かつて小さな政府、大きな政府、あるいはこの国の機関だけで全部が担えるわけではないから、民間と国の間、第3の公共という話などが出ました。民主党政権の3年3ヵ月、あるいは政権交代に至るところで、国の形をどうしたらいいのかという話が国会のなかでも議論されていたような気がしますが。
松井)どれだけ議論されていたのかは、いまから思えばよくわかりません。ただ、いまよりはマシだったように思います。いまはほとんどそういう議論をしていません。
飯田)議論されていない。
松井)例えば、共助という考え方があります。菅さんがおっしゃったことのなかで、いいことの1つですが、「自助、共助、公助」という言い方をしていました。何でも「公助で、税金で」ということではなく、共助で支え合いながらどう進めていくかということです。
コミュニティの力を使うことも議論するべき
松井)介護保険で賄えないようなお年寄りの所在確認や、買い物についての問題があります。田舎の方では、買い物にも出られない「買い物難民」のような方がいますが、そういうものは従来の社会保障では賄えません。しかし、そういうことは大事なのですが、どんどん税金を注ぎ込んでいくわけにもいきません。そこで、コミュニティの力でどう支えていくのかというようなことを、もう少し議論するべきだと思います。
税金を使わずにコミュニティの力でお互いが支え合い、長生きできる環境を「どうつくるか」を国会議員が考えるべき
松井)昔そういう議論があったのです。何でも病院で、最後はチューブにつながれて長期的に入院していたら医療費もかかるし、本人も幸せではないかも知れないと。だから在宅も含めた介護を導入したのだけれど、介護保険にもお金が掛かってきて大変だという状況があります。
飯田)介護保険も。
松井)柔らかなコミュニティの力で、お互いがどう支え合って健康に長生きできるか。税金に頼らずに生きていくようなやり方を、国会議員の方々には考えて欲しいと思います。
飯田)コミュニティの力で。
松井)「新しい資本主義」と言うのなら、マーケットでできることはもっとあると思います。けれど、同時にマーケットではなく、税金で対応するわけでもなく、お年寄りと子どもなど、人々がどう支え合うかという議論は昔からあります。そういうものをどうつくっていくかという問題意識を役人の人たちは持っているのです。
その議論をする余裕がない国会議員
松井)しかし、その議論をさせてもらう余裕がない感じがあります。政治家や政府がそういうところで税金を使わずに、しかし人々の不安感をいかに除去したり、お互いに支え合うような社会を「どうつくっていくか」を考えるべきです。
一石を投じた加藤厚労大臣の発言
松井)どこかからお金は降ってこないのです。防衛費をどう維持するかということもそうですが、新型コロナが2類か5類という問題もあります。「2類相当」で(治療費を)無料にしていますが、新型コロナではカロナールを処方されている方がほとんどではないですか。
飯田)解熱剤を。
松井)コロナであればカロナールは無償でしょう。
飯田)無料になるというか。
松井)しかし、ちょっとした鼻風邪でカロナールを使えば、3割負担になります。だからコロナに感染した人はみんな病院に駆け付けてしまい、病院がひっ迫してしまう。それを避けるためにも、従来の「2類、5類」とは違うスタイルの2類、5類をつくってもいいわけです。
飯田)従来の扱いとは違うものを。
松井)加藤厚労大臣が新型コロナの5類への引き下げを検討すると言ったことに対しては、いろいろ批判もあるなかで、私は一石を投じた政府の役割があったと思います。そういう議論をすることは必要です。
飯田)そうですね。
松井)こういうことがずっと続いて、経済が回るのか、経済や社会や人間のためにいいことなのか。あるいは次の世代のために、本当にそれでいいのかということを、ロングスパンで考えるべきなのです。
飯田)ロングスパンで。
松井)「増税や税金で賄うのはもってのほかだ」と言うのもいいですが、短期的にはそうだとしても、中長期的にはこうであるから「いまはこうした方がいいのではないか」と議論するべきなのです。でなければ、モラルハザード以外の何ものでもありません。この国は政治家が先頭を切ってモラルハザードを起こしていますよ。
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