高齢や障害などの有無に関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行「ユニバーサル・ツーリズム」の存在と今後の課題

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「株式会社SPIあ・える倶楽部」代表取締役社長で、NPO法人「日本トラベルヘルパー協会」の創設者・理事長の篠塚恭一氏が12月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ユニバーサル・ツーリズムについて語った。

高齢や障害などの有無に関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行「ユニバーサル・ツーリズム」の存在と今後の課題

※画像はイメージです

「ユニバーサル・ツーリズム」

新行市佳アナウンサー)ユニバーサル・ツーリズムという言葉を聞いたことはあるでしょうか?

飯田)「ユニバーサル・デザイン」や「ユニバーサル・マナー」などはよく聞きますが、「ユニバーサル・ツーリズム」という言葉もあるのですね。

新行)観光庁によると、ユニバーサル・ツーリズムとはすべての人が楽しめるようにつくられた旅行であり、高齢や障害などの有無に関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行とされています。

飯田)高齢や障害などの有無に関わらず。

新行)具体的に言えば、交通機関や観光施設のバリアフリー化など、ご高齢の方や障害の有無に関わらず、すべての人が移動しやすく、利用しやすい環境整備を進めて、誰もが旅行を楽しめるようにしていこうという取り組みです。

飯田)なるほど。

新行)以前からユニバーサル・ツーリズムの取り組みは進んでいたのですが、東京パラリンピック開催に際して環境整備が進み、旅行会社でもユニバーサル・ツーリズムのツアーが用意されるようになりました。

コロナ禍を経て、再び取り組みを進めていく

新行)ただ、この3年は新型コロナウイルスの影響もあり、旅行業界そのものが厳しい状況にありました。そのため、動きが停滞してしまったのですが、最近は徐々に動きを取り戻していることもあり、改めて業界全体で取り組みを進めていこうという状況になっています。

飯田)改めて取り組みを進めていく。

新行)観光事業に力を入れている自治体では、この期間も行政の地域づくりの一環として、街のバリアフリー化などが行われています。交通機関や観光施設などのハード面では、以前よりも整備が進み、ユニバーサル・ツーリズムが発展していく環境が徐々に生まれつつあります。

介護技術と旅の業務知識を備えた外出支援の専門家「トラベルヘルパー」

新行)今回は障害のある方の旅行がテーマということで、注目したのが「トラベルヘルパー」というサービスです。トラベルヘルパーは「NPO法人日本トラベルヘルパー協会」が認定する民間認定資格であり、介護技術と旅の業務知識を備えた外出支援の専門家です。

飯田)介護と旅の業務知識を備えた外出支援の専門家。

新行)依頼された方の障害の程度や、健康状態などに合わせて、旅行の段取りや旅行に同行して必要な支援を行う専門職になります。

障害を持つ人や高齢者もトラベルヘルパーの存在によって旅に出ることができる ~旅に出られたということが1つの成功体験になり、その後の生活に張りが出る

新行)トラベルヘルパーに対し、実際にサービスを利用して旅行した人から、どのような声が届いているのか。高齢者や障害者に向けたサービスを展開している「株式会社SPIあ・える倶楽部」代表取締役社長であり、NPO法人日本トラベルヘルパー協会の創設者・理事長の篠塚恭一さんにお話を伺いました。

篠塚)障害を持つ方々からは、「夢が叶った」、「希望が実現できた」というような声が多いですね。お年寄りの方の場合は、お子さんから頼まれるケースが多いので、「親孝行ができた」、「いい思い出がつくれた」というような声もたくさん聞かれます。

新行)お子さんからも。

篠塚)それから、旅に出ることができると1つの成功体験を得られますので、自信が付いたことから日々の生活が変わり、生活に張りが出てくるのです。

新行)旅に出ることができたという体験から。

篠塚)楽しい話題を話せるようになったり、旅の思い出を語れる。旅行から帰ってきて、暮らしや生き方が変わったという声を聞くことが多いですね。

飯田)帰ってきてから障害を持った方々が変わるというのは、やっていても嬉しいことなのだろうな、と聞いていて思います。

新行)見知らぬ土地に行くことができた。そこで旅行を楽しめた、という体験が、その先のご本人の人生を豊かにしていくのですよね。

かつては障害者の旅行が理解されず、こっそり出かけることも

新行)篠塚さんは1995年にご高齢の方や障害者向けの旅行サービスを開始されて、2006年にNPO法人「日本トラベルヘルパー協会」を設立しています。当初は、障害のある方が旅行に出かけるということが、受け入れ側の体制も含めてハードルの高い時代であり、「障害者が旅行に出るのは贅沢だ」と思う人もいたということです。

飯田)昔の感覚は、いまでは考えられないと言えば考えられませんが、「世間に出すなんて」というようなことを言われた時代があったのですね。

新行)「こっそり出かけることもあった」とおっしゃっていました。ただ、いまはもう時代も変わって、ユニバーサル・ツーリズムという考え方も広がりを見せてきています。

旅を通して、人生の生きがいなどを含めて「プラスをいかに増やしていけるか」

新行)今後のユニバーサル・ツーリズムについて、どんなことが課題になりますか?

篠塚)ハード面の整備はかなり進んできましたし、まだまだ進行形でもありますが、進んでいくと思います。その面では非常に多くの人たちが努力してきたことは間違いないと思います。

新行)ハード面では。

篠塚)ただ、ハード面はどちらかと言うと、環境を必要とする人たちがいままでできなかったことを、いかにできるようにするかということです。マイナスをゼロにするような話なのです。

新行)マイナスをゼロにする。

篠塚)非常に重要ですが、もう一方で、それらのハードをベースにした個人のニーズに向け、いかに対応していくかが重要なのです。これはどちらかと言うと、「いかにプラスを増やしていくことができるのか」という話です。

新行)プラスを増やしていくことができるか。

篠塚)旅を通して、ニーズに則った人生の生きがいなどを含め、プラスをいかに増やしていけるかが非常に重要だと思っています。

新行)障害といっても、身体障害もあれば視覚障害、聴覚障害もありますし、歳を重ねるに従って足が動きづらくなってしまうなど、いろいろなことがあります。いろいろなニーズに対応する旅をつくっていくことが大事なのですね。

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