機能不全のWTOに敢えてアメリカを提訴した「中国の狙い」

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明海大学教授で日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男が12月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカによる半導体関連の対中輸出規制は不当だとしてWTOに提訴した中国とアメリカの対立について解説した。

機能不全のWTOに敢えてアメリカを提訴した「中国の狙い」

中国の習近平国家主席(タイ・バンコク)=2022年11月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

中国がアメリカをWTOに提訴、「半導体規制は不当」と主張

中国商務省は12月12日、アメリカによる半導体関連の対中輸出規制は不当だとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。中国は「アメリカは安全保障の概念を拡大して輸出規制を乱用している」と主張。これに対して米通商代表部は「規制は安全保障に関連しており、WTOで議論するのは不適切だ」との見解を示した。

「軍事技術と民生技術を区別しても意味はない」として中国部品を排除

飯田)ファーウェイやZTEなどから始まって、半導体規制も行われていますが、米中対立を小谷さんはどうご覧になりますか?

小谷)トランプ政権のときから経済安全保障ということで、特に対中輸出規制を強めてきたわけです。これまでは政府調達に留まってきたのが、それを超えて、一般も含めて規制しようという方針をバイデン政権が打ち出しました。

飯田)バイデン政権になって。

小谷)その背景には、中国側が「軍民融合」を掲げ、民生技術も積極的に軍事技術に活かしていくという試みがあり、「もはや軍事技術と民生技術を区別しても意味はない」というのがアメリカ側の見立てです。今回、ほぼ全面的に中国部品を半導体のサプライチェーンから排除する方針になったわけです。

「WTOのパネルで議論すべき」とした前例を使ってアメリカの圧力をかわそうと、提訴に踏み切った中国

小谷)アメリカとしては、WTOの協定も含めて、自由貿易協定では一般的に安全保障という理由があれば、輸出規制、投資規制が認められるという概念がありますので、それに基づいて動いています。中国としてはWTOをうまく利用し、アメリカの圧力をかわそうと踏み切ったのだと思います。

飯田)WTOを利用して。

小谷)実際、WTOではこれまで、安全保障を理由に輸出規制をした場合、WTOのパネルで議論すべきだという前例がありますので、それをうまく使った。中国としてはアメリカをWTOの場に引き摺り出し、少しでも中国に有利な環境をつくろうとしているのだと思います。

機能不全のWTO ~提訴してもすぐに議論が始まるわけではない

飯田)WTOのパネルは小委員会などと訳されたりしますが、当事国だけではなく、他の国々の人たちも入ってきますか?

小谷)さまざまな国、地域を代表する人たちが集まって議論するのですが、いまWTOは機能不全になっているので、パネル自体が成立しないという状況も続いています。

飯田)機能していない。

小谷)トランプ政権は中国だけでなく、ヨーロッパ、日本も含めて鉄鋼・アルミに関税を課しましたけれども、これも実は中国やEUが一緒になってアメリカを提訴しているのです。しかし、パネルが成立しないので、まだ議論ができていないというのが実情です。

飯田)そこも議論できていない。

小谷)そういう意味では、中国もすぐに事態が動くとは思っていないと思いますが、あたかも「アメリカが悪いことをしている」というイメージをつくるためにも、今回提訴したのだと思います。

WTOのルールには従ってきたという評価がある中国 ~中国が国際ルールに則った紛争解決を目指していること自体は悪いことではない

飯田)日本に暮らす我々からすると、WTOのルールを無視したような形で動いているのは中国なのではないかと思うのですが、加盟している以上、こういう仕組みは使えるということですね。

小谷)中国はいろいろな側面で国際法を無視している。あるいは国際法に合わない行動を取っていますが、WTOに関しては比較的、ルールに従ってきたという評価があります。

飯田)そうなのですか。

小谷)人によっては、中国は国際法を守らないけれども、WTOでの行動を見ていると、中国もいずれは国際法に則った行動ができるのではないかという期待を持つ人もいるくらいです。そういう意味では今回、中国が少なくとも国際ルールに則った紛争解決を目指していること自体は、悪いことではないと思います。

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