元航空自衛官で評論家の潮匡人が12月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安保3文書について解説した。
「安保3文書」はこれまでに比べれば前進している
飯田)国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の「安保3文書」が改定されました。潮さんはどうご覧になりますか?
潮)細かく見ていくと、日本語レベルの問題点もありますし、理想と比べれば「〇×△」の「△」になると思います。ただ、これまで出てきた関連文書に比べれば、明らかに「〇」に近付いている「△」でもあるわけです。
飯田)「〇」に近い「△」。
潮)特に安倍派がネガティブにダメ出しをしていますが、「仮にこれが安倍政権下に出ていれば『さすが安倍さんだ』ということになっていたのではないか」と皮肉交じりにコメントしたくもなります。要は中身の問題で、「これまでに比べれば前進している」ということは最低限、言えるのではないかと一応評価しています。
防衛費のための財源 ~増税するかどうかで分かれてしまっている
飯田)潮さんの著書『ウクライナの教訓 反戦平和主義が日本を滅ぼす』にも「ウクライナの教訓」という名前が付いていますが、最初のところでウクライナの話を引きながら、「それが東アジアに起こる可能性もある。これだけ国際法が無残に踏みにじられることもあるのだ」と書かれています。その危機感から「日本の国益が何か」など、安保3文書によって、初めてこういう文書を見たという感じがします。
潮)メディアがそこばかりに注目している弊害もあるかも知れませんが、「反撃能力」についても、これまでは「敵基地攻撃能力」という名のもとに、あたかもものすごく大変なことであるかのように報道されていました。私もそれは保有すべきだと言う側に立ちつつ、「どうせ無理だろう」と諦めていたのですが、「えー! 本当に決まってしまった!」という感じで、この年末にバタバタとはっきり文書に明記されました。
飯田)諦めていたものが。
潮)よくも悪くも、仮に「△」だとしても、かなり重要な意義を持っている文書だろうと思います。問題はその能力を持つにしても、やはりお金が掛かりますし、そのお金をどう捻出するかというところで、また議論が分かれてしまっていることです。
飯田)財源をどうするかで。
潮)増税に対して反対する保守派と、増税路線と報道されている現政権側との軋轢も生まれてしまっていて、政局絡みの展開にもなっている。そこは残念なところでもあると思います。
飯田)増税するかどうかということで。
防衛を我がこととして考えるべき
潮)いろいろと必要なメニューが並んでいる状態だと思うのですが、現場側からすると、あるいは現役世代の実感で言うと、正直、私と同じような「本当にいいの?」と戸惑っている実感だろうと思います。
飯田)現場からすると。
潮)仮にこれが政権側の強硬的な姿勢のように国民に映り、防衛費だけが優遇されていて、例えば子育てのための支援など「さまざまなものが犠牲になっている」という報道が広まってしまえば、現場の自衛官は立つ瀬がありません。
飯田)そのような報道がされれば。
潮)その辺りはきちんと政治のリーダーシップで解決して欲しいと思います。私が必ずしも増税に否定的でないのは、やはり防衛を我がこととして考える1つの契機には最低限なると思うからです。自分たちは何の負担もせず、何の痛みも感じず、いざとなったら「自衛隊さんよろしくね。どうせアメリカが助けてくれるでしょう」という意見には、「戦後そうやってきたから、こういう状態になっているのではないですか?」と言いたくもなります。
飯田)防衛を我がこととして考える。
潮)「徴兵制を施行しろ」などと乱暴なことは言いませんが、「増税するのもダメですか?」くらいのことは言わせていただきたいと思います。
国民に何の負担もさせないような「防衛力強化の魔法の杖」を政府は持っていない
飯田)このまま議論が「増税は強引だ」などというところにまで行ってしまい、「増税は嫌だから防衛費も充実させません」となるのはまずいですよね。
潮)そう思います。一方で、「増税したことによって、結果的に税収が減ってしまう」などの専門家の知見やご意見はきちんと尊重し、聞くべきだとは思います。
飯田)専門家の意見は。
潮)「自分たちのことだ」と考えるのが重要であり、有識者の報告書のなかでもきちんと触れられています。それが岸田政権の使命だと思っています。国民に何の負担もさせない、痛みも感じさせない、そんな防衛力強化の魔法の杖のようなものを政府が持っているはずはありませんから、そこは皆さんも理解して欲しいと思います。
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