「マイナ保険証」対応の遅れに見える「日本医師会」の存在
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ジャーナリストの佐々木俊尚が1月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。病院や診療所の3割弱がシステム導入できず、対応が遅れている「マイナ保険証」について解説した。
マイナ保険証の対応に遅れ
飯田)マイナ保険証に関する対応が遅れており、病院や診療所の3割弱が4月までに間に合わないということです。
佐々木)厚労省の説明では、世界的な半導体不足で工事が停滞していることが理由であると。半導体不足は最近、パソコン市場がひと段落したおかげで若干、溢れ気味になっているというか、不足しなくなってきているという話も出ています。
飯田)2023年の見通しでは、少し下がるのではないかという話もありますよね。
マイナ保険証を嫌がる日本医師会
佐々木)厚労省の説明にも疑問を感じるところがあります。なぜかと言うと、マイナ保険証に関しては日本医師会がずっと嫌がっているからです。
飯田)日本医師会が。
佐々木)医師会はメディアだけ見ていると日本のお医者さんの代表選手のように見えますが、開業医の代表であって、大学病院や総合病院に勤めている医師は何も反映されていないのです。
日本医師会の反対で進まなかったカルテの電子化 ~東日本大震災で紙のカルテが流失し、一気に電子化へ
佐々木)開業医は高齢の方が多く、デジタルに後ろ向きな人が多いということは昔からよく言われています。カルテの電子化が10年~20年前に言われていたとき、一貫して反対していたのは医師会でした。
飯田)カルテの電子化に。
佐々木)実際に電子カルテ化が進んだのは、3.11の東日本大震災のときに紙のカルテが流失してしまい、薬の処方さえできなくなってしまった。「やはりクラウドに置かないとダメだ」ということで、電子カルテ化が進んだ背景があるのです。
普及が進まないマイナンバーカード
佐々木)電子化するためにはシステムの導入費も掛かるので、負担としては大きいと思いますが、一方でDX化の波もあり、デジタル化して悪いことは何一つないのです。
飯田)デジタル化することで。
佐々木)引越しのときにカードを書き換えるような面倒もなくなりますし、マイナンバーカード1枚あれば、今後、保険証にも運転免許証にもできるなど、いろいろな話も出てきています。やった方がいいと思うのですが、なかなか進まない。
飯田)マイナンバーカードですね。
佐々木)実際には、2万円ポイント発行などの特典を付けた結果、いまでは8000万人くらいに普及しています。「3割~4割くらいしか普及していない」と言われていたころに比べれば、だいぶ普及したと思うので、ぜひ一気に進んで欲しいと思います。
佐藤栄作元首相の時代から高齢者や富裕層の金融資産の捕捉を目的とした国民識別番号を入れる試みはあった
飯田)それによって、資産や所得の把握などが進む。
佐々木)そこまでいくと大きな話になります。もともと「国民ID」と呼ばれる国民識別番号を入れる話は、70年代からの議論であって、佐藤栄作元首相の時代からやっているのです。
飯田)佐藤栄作元首相の時代から。
佐々木)最初の目的は、高齢者や富裕層の金融資産の捕捉でした。当時、それに徹底して反対していたのは読売新聞や日経新聞です。中小企業や自営業の人たちがたくさん読んでいる新聞の方が反対していたのです。
飯田)当時は。
佐々木)しかし、なぜか80年代~90年代になると「国民監視だ」と言い出して、朝日新聞や毎日新聞などが反対するようになった。どこでひっくり返ってしまったのか不思議な感じはします。
飯田)住基ネット騒動のときなどもそうですね。
資産が把握できれば給付金などが平等に支給できる ~金持ちが困るだけで、貧乏人にとっては助かる素晴らしい政策
佐々木)90年代終わりくらいですからね。本来の目的は国民監視などではなく、例えばコロナ給付金などを支給するときに、「年収が何百万円以上」というように収入を基準にするではないですか。
飯田)年収で。
佐々木)それだと、年収ゼロでも金融資産が1億円ある人に、たくさん給付金が入ってしまうという問題があります。それならば金融資産を捕捉し、収入ともプラスして「全体の持っているお金に対して給付金を支給しましょう」という方が平等になるのです。
飯田)資産が把握できていれば。
佐々木)もちろん、脱税逃れも防ぐことができます。逆に言うと、マイナンバーカードをさらに普及させて金融資産を捕捉することは、金持ちが困るだけで、貧乏人にとっては助かる素晴らしい政策なのです。やった方がいいのですが、なぜ毎日新聞や朝日新聞は反対するのでしょうか。
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