追い詰められる中国経済の背景にある「さまざまな障害」
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ジャーナリストの須田慎一郎が1月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席の新年の演説について解説した。
中国・習近平国家主席が新年の演説
中国の習近平国家主席は12月31日、国民に向けた新年の演説を行った。習氏は新型コロナの感染対策について「未曾有の困難に打ち勝った」と成果を強調。ゼロコロナ政策については触れず、感染対策は新たな段階に入ったとして、国民に対して団結を呼びかけた。
人口の約2割が感染している中国 ~今後地方に拡大する恐れも
飯田)感染拡大が伝えられている中国ですが、日本でも12月30日から中国への水際対策が強化されています。
須田)中国では、人口の約2割にまで感染が拡大したということです。しかし、それが中国国内で集計されたのは12月22日時点です。その後も感染拡大が続いているでしょうから、2割はとうに超えているのではないでしょうか。注目すべきなのは、感染拡大しているのは北京や上海など、大都市が中心なのです。
飯田)大都市中心。
須田)まだ地方都市には及んでいない状況のなかで、ピークアウトは先になるのだと思います。中国国内の専門家のレポートによると春節、1月22日ごろがピークになるのではないかと言われています。注目すべきは死亡率の高さですよね。
飯田)死亡率の高さ。
須田)中国製のワクチンが効かないという状況も踏まえると、大きな社会問題化していくのかなと思います。
感染者を出社させなければ会社が回らない ~中国が厳しい状況になれば日本経済にも影響が
須田)聞いたところによると、北京の民間企業は平常通り営業されているようです。感染症対策を聞いたら、感染している人のフロアと感染していない人のフロアとを2つに分けていると。「では感染している人が出てきているのですか?」と聞くと、出てきているそうです。そうしないと会社が回っていかないと言うのです。
飯田)感染者が休むと。
須田)つまり、感染者を自宅待機させるとなると、会社自体が回らない状況になりつつあることが伺えます。
飯田)背に腹は代えられないようなところがありますね。
須田)いろいろなことを言っても、中国は世界の工場であり一大マーケットです。そこが一気に経済的に厳しい状況へ陥ると、日本経済にも、日本企業にも甚大な影響を及ぼすことになります。そこを見極めなければいけないのだと思います。まだピークになっていない状況ですから。
内部の不安から外に向かって打って出る中国
飯田)そのような社会不安があって、内部が混乱してくると、外に向かって打って出るのではないかという心配が、周りの国としてはあります。
須田)内部の不安を外で解消するというのは、中国が得意とする手です。そういう意味でも台湾有事を考えていかなければならないし、そこに至らなくても軍事演習を含め、いろいろな挑発行為を行う可能性はあります。
飯田)台湾有事を含めて。
須田)中国の感染拡大を考えると、死亡率が高いのです。軍事行動にも影響が出るかも知れません。
対日戦狼外交・筆頭の王毅前外相が外交統括トップに就任
飯田)外交チャンネルに関しては、王毅前外相が外交の統括トップ……「中央外事工作委員会弁公室」のトップに就任するということです。楊潔篪氏の後任が王毅氏になるということだと思いますが、王毅さんと言えば、戦狼外交の頭目のような人でしたよね。
須田)中国外交部のなかだと、必ずしも脚光を浴びてきた人ではありません。かつては日本の大使を務めたこともあります。
飯田)日本語もお上手な方のはずです。
須田)小泉政権のときに小泉さんが靖国参拝をしたため、厳しい立場に追い込まれた人なのです。
飯田)なるほど。
須田)それもあって日本に対しては過激な言動で終始する、対日の戦狼外交の筆頭でした。自らの出世を着実なものにしてきたこれまでの経緯がありますから、ますます激しくなっていくのではないでしょうか。
飯田)対日戦狼外交が。
須田)日本としては、王毅氏が外交統括トップに就任したことについて、警戒しなければならないでしょう。それがポーズなのか、出世のための道具なのか、見極めが重要になると思います。
日本に対する強気な態度はポーズの可能性も ~経済的に追い詰められている中国
飯田)対外的に強気で無礼にあたるような発言もするという、彼のスタイルを真似るような外交官が、中国にはたくさん出てきています。日本に来ている領事館の公使のなかにも、そういう発信をされている方がいます。
須田)そういうスタンスを取ってきたからこそ、出世できたわけです。そこを学ぼう、踏襲しようという動きが起こってもおかしくはない。ただ、ある種のポーズである可能性もあります。
飯田)ポーズ。
須田)半導体にしても、昨年(2022年)は世界貿易機関(WTO)に対し、勝ち目がないけれど提訴するというところを見ると、中国は経済的にも相当追い詰められている。
飯田)半導体に関して。
須田)特に先端、ハイテク技術に関しては追い詰められているところがあるので、その辺りで日本はどのような向き合い方をしていくのか。表面上の戦狼外交に対して激しく噛みつくというのも、策としては下の下ですから。
飯田)相手の策に乗ってしまうと。
中国が自前で半導体の設計能力を構築していくことは、ほぼ不可能 ~アメリカが中国への半導体輸出規制を続ければ、ハイテク製品がつくれなくなる可能性も
飯田)アメリカは半導体等々に関して、10月にもかなり厳しい措置を取るようになりました。ほとんど輸出はダメだと。あるいは現地の企業と組んで何かをつくるのもダメだという形になりました。これがかなり効いているということですか?
須田)いま半導体の生産は「ファウンドリ」と呼ばれる、半導体チップの製造を専門に行う部門……TSMCに代表されるような部門ですよね。
飯田)製造に特化した形のものですね。
須田)半導体の設計は、技術力や過去の特許(パテント)などが大きなベースになってくるのだけれども、半導体の設計に関してはファーウェイでも欧米メーカーに比べれば遅れていて、5~6年はタイムラグがあると言われています。半導体の世界において、5~6年の遅れは取り返しがつかないほどの遅れです。
飯田)5~6年の遅れは。
須田)加えて、基本設計の部分でアメリカやイギリスのものが使えないとなると、ファーウェイ、あるいは中国の半導体メーカーが独自にベースから、言語の部分も含めて構築していかなければならない。そうなると、その時間のズレは永遠にも近いようなことになるのです。
飯田)その時間のズレは。
須田)自前で設計能力を構築していくことは、ほぼ不可能だと、中国サイドも理解してきたのではないでしょうか。だからこそのWTOへの提訴だったのです。
飯田)中国の。
須田)アメリカがそれをさらに押し進めるかのような輸出・禁輸措置、つまり半導体部品も輸出しないということになると、ハイテク製品がつくれないことになります。
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