バイデン大統領否定も 実際には行われているであろう「米韓核共同演習」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が1月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。バイデン大統領が否定したアメリカと韓国の核共同演習について解説した。

バイデン大統領否定も 実際には行われているであろう「米韓核共同演習」

North Korea launched the IRBM missile across the Japanese Island.(Photo by Seokyong Lee/Penta Press) Penta Press/共同通信イメージズ

バイデン大統領、韓国との核共同演習を否定

アメリカのバイデン大統領は1月2日、韓国の尹錫悦大統領が言及した、アメリカと韓国の核の共同演習の協議を否定した。アメリカと韓国の核の共同演習について、尹大統領は朝鮮日報のインタビューのなかで「アメリカ側と協議している」と説明したが、バイデン大統領はこの発言を否定し、双方の認識の違いが浮き彫りになった形だ。

実際には核共同演習の協議は行われている

飯田)そうは言いながら、北朝鮮の核に備えた演習は……。

佐々木)実際には行われているのだと思います。韓国大統領府の声明で、「記者が単刀直入に聞いたため、バイデンさんはノーと答えるしかなかった」との認識を示していますが、その通りだと思います。

飯田)イエスとは答えられなかった。

佐々木)核の共同演習を行うこと自体が、核兵器不拡散条約(NPT)に抵触する可能性があるので、オフィシャルなコメントとして「やっている」とは到底言えないのです。

西側で核を持っているのは英米仏のみ

佐々木)核の共同演習は何を意識しているのかと言うと、明らかにNATOの核共有です。「ニュークリア・シェアリング」をイメージすると思うのですが、ヨーロッパで核を持っているのは、西側ではイギリスとフランス、あとはアメリカだけです。

飯田)西側で核を持っているのは。

佐々木)実際はドイツにも核はあります。核弾頭はアメリカが所有していて、核弾頭を乗せる戦闘機や発射台のようなものはドイツが運用しています。非常時には核弾頭をドイツが所持している核戦闘機などに搭載し、攻撃に使う可能性があるというのが核共有ですが、これも「NPTに抵触するのではないか」という議論も前からあって、微妙な話なのです。

「NPTと核共有は矛盾しているのではないか」という議論のなか、そこには触れずにきたNATO

佐々木)流れとしては、戦争が終わって冷戦になったときに、イギリスとフランスが核を開発しました。当時はワルシャワ条約機構軍があり、ソ連側(東側)と西側のNATOの間で、戦力としては東側の方が1950年代くらいだと圧倒的に強かったのです。

飯田)東側の方が強かった。

佐々木)それを西側のNATO諸国は不安に感じていたので、一気に核開発するという流れが始まりかけていました。しかし「それはまずいだろう、核は拡散させてはいけない」ということで、アメリカ軍が核を提供するから、「それをみんなで共同所有して運用するようにしましょう」というのが核共有だったのです。

飯田)特にドイツにとっては、フランスが核を持ち、イギリスも核を持った。つまり、狙われるのは我々だけではないかと。自分たちが狙われたときに誰も報復してくれず、見殺しにされるのではないかと不安になった。

佐々木)しかも、ベルリンが東側の飛び地のような状態になっていました。そのような状況で、1960年代の終わりに核不拡散条約ができてしまったので、「NPTと核共有は矛盾しているのではないか」ということが議論としてありました。しかし、それを言ってしまうとNATOの根底が崩れてしまうのです。

飯田)その抑止力が崩れてしまったらまずいと。

佐々木)ですので、そこはあまり議論しないようにしている。

飯田)現実が先を行っていたのですね。

佐々木)そのような感じで、騙し騙し進んできたという現状だと思います。

現実的に日本や韓国が核を持つことは難しい

佐々木)とりあえずNPTと核共有は併存してきたのですが、表立ってそれを「OK」とは言えない。日本でも亡くなった安倍さんが「核共有の議論をしよう」という話をされていました。

飯田)そうですね。

佐々木)韓国もその流れに乗っているのです。核を持って戦争したいわけではなく、抑止力として、核は非常に強いのです。しかもアメリカだけではなく、韓国や日本も持っていることになると、中国、ロシア、北朝鮮という核を持っている国々に対して、もう1つ抑止力を加えられるだろうという議論です。

飯田)抑止力として。

佐々木)ただ、現実にはNPTがあり、それに加盟している状態のなかで核共有をすることは、ハードルとしてはとても高いのだと思います。ここは難しいところです。

ウクライナのように「自分たちで守る」という意欲を見せる国には援助を惜しまない西側諸国

飯田)一方、いまの状態のままで日本に(ミサイルなどが)撃ち込まれたとき、「本当にアメリカは反撃してくれるのか」というジレンマもあります。

佐々木)オバマ元大統領の時代から言われていますが、アメリカが世界の警察から撤退するという話になってきて、どこまで守ってくれるのか。

飯田)そういうことですよね。

佐々木)しかし、今回のウクライナ侵攻が示すように、自分たちで自分の国を守るのだという意欲を見せた国に対しては、西側諸国やアメリカは援助を惜しまないと思います。

飯田)ウクライナのように。

佐々木)しかもウクライナと違って、日本には日米安全保障条約もありますので、もう少し信じてもいいのかなとは思います。流石にトランプさんのときよりは、バイデンさんの方が信用できるだろうというところもあります。

「核を持つかも知れない」という意思を見せることが抑止力の一端になる可能性も

佐々木)ただ、「核を持つ意欲はあるのだ」ということを、世界に対して示すことも大事かも知れません。核を持つかどうかは別として、我々はプルトニウムも持っているし、「持つかも知れない」というような意思を見せておけば、抑止力の一端になる可能性はあるかも知れません。

飯田)能力としてはある。しかし、いまは持つ意思がない。その部分を見せておくということですね。

安全保障をめぐる環境が激変しているなか、もう一度「核」について考えなければならない時期にきている

佐々木)核の話は微妙で、安全保障の専門家の本を読んでも、言っていることがみんな違うので難しい。しかし、議論することは大事だと思います。

飯田)抑止の傘が破れてしまったときは大変なことになる、という話ですね。

佐々木)そうなのです。

飯田)韓国とアメリカの関係のなかから、「日本も他人事ではない」と感じます。

佐々木)安全保障をめぐる環境が激変しているので、どのように対応するのか、もう一度考えなければいけない時期にきていると思います。

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