地産地消できる「小型モジュール炉」の「これだけの可能性」

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数量政策学者の高橋洋一が1月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。西村経産大臣の訪米について解説した。

地産地消できる「小型モジュール炉」の「これだけの可能性」

米ニュースケール・パワーが手掛ける小型モジュール炉発電所のイメージ図[同社提供]=2022年 写真提供:時事通信

西村経産大臣が訪米 ~次世代原子炉の開発や建設、日米連携で一致

アメリカを訪れている西村経済産業大臣はグランホルムエネルギー長官と会談し、エネルギー安全保障の強化や脱炭素化の推進に向けて、次世代原子炉の開発や建設で連携していくことで一致した。日米両政府は従来よりも小さく建設コストが低いとされる小型モジュール炉など、次世代原子炉の開発や建設で連携していくとともに、第三国への輸出などにも共同で取り組んでいくとした。

飯田)次世代原子炉の話が出ています。

体積が小さくなれば放熱しやすくなり、大きな冷却装置が必要ない ~小型モジュール炉

高橋)スモールモジュラーリアクター(小型モジュール炉)というものですね。小さくなると何がいいかと言うと、放熱に関する一定の原則があって、体積と表面積の比なのですが、体積が大きくて表面積が小さいと放熱しにくいわけです。

飯田)放熱しにくい。

高橋)体積が小さくなればなるほど、放熱しやすくなるのです。いちばん典型的なのは、スマホです。

冷却ファンがないスマホと同じ ~デスクトップパソコンにはファンが必要だが

高橋)昔の大きなコンピューターはすごく熱を出していたけれど、スマホはファンを回さなくても大丈夫でしょう。ノートパソコンもファンが必要で、デスクトップパソコンはもっと大きなファンが回っています。それがスマホになると、常温で対応できるようになる。

飯田)そうですね。

高橋)原子炉もまったく一緒です。いまの原子炉が危ないのは、大きなシステムであり巨大な原子炉なので、体積が大きく表面積が小さいから、常温では冷却できない。結果的には水冷で冷却しなければなりません。この冷却ポンプが津波で流されてしまったら大変です。

飯田)東日本大震災の例。

高橋)技術的には、スモールモジュラーリアクターは常温冷却できるのです。あのような冷却装置はいらない。

飯田)小さいので。

高橋)いまの技術であれば、地中に少し水を溜めておき、そこに置けば大丈夫だという感じです。そういう意味では、有力だと思います。

小型モジュール炉によって地産地消で電気をつくって消費すれば送電ロスもなくなる

高橋)また、小さければ各地域に設置して、地産地消できます。エネルギー問題では、送電ロスがいちばん大きいのです。あまり知られていませんが、電力は送電するときのロスが大きい。

飯田)分厚く太い高圧線で、東京まで運んでくるのですよね。山を越えて。

高橋)3割くらいはあると思います。地産地消にすれば、そのロスがなくなるのです。いろいろなところで地産地消できれば、エネルギー問題はかなり解決すると思います。

小型モジュール炉であればほとんど純国産でつくることができる

飯田)エネルギーの地産地消と言うと、太陽光などの再生可能エネルギーの話になりますが、それだと安定が悪い。安定させるためにも、小型モジュール炉が各地域にあると安定します。

高橋)安定するし、エネルギー効率もいい。これを言うとまた批判を受けてしまうのですが、科学的な話をしているだけなのです。原発の巨大システムが危ないのは間違いありません。しかし、小型モジュール炉であれば、常温冷却できる可能性があるわけです。北米ではもう少ししたら実用化されます。日本企業も頑張っています。

飯田)三菱重工など。

高橋)東芝なども動いています。いい連携なのではないでしょうか。

飯田)アイデアとして、トラックに載せて運べるのではないかというところまで報道されています。

高橋)とても小さいものはね。とは言っても、小型の体育館くらいでしょうか。学校の下に設置すればいいのです。

飯田)いまの発電所にある広大な工場プラントのようなものを考えると、相当小さくなる。

高橋)3万キロワットくらいであれば、小さくてもかなり賄えてしまいます。

飯田)いまの原子炉だと、1つの炉で100万キロワットくらいです。

高橋)ある意味でクリーンエネルギーですから。CO2を出さない。日本であれば、ウランなども海外に依存しなくていいから、ほとんど純国産になります。

飯田)燃料の部分も。

高橋)でも、反対する人がいるのですよね。「原子力」と聞いただけで反対する人がいるから困ってしまいます。

飯田)地産地消となると、「より里に近いところにつくるのか」というような話になってしまう。

ウイグルでつくられた太陽光パネルは人権問題から使えなくなる

高橋)私は太陽光も否定していません。でも太陽光の話になると、最近では人権問題が絡んできます。西村さんが動いていますが、一方でサプライチェーンから強制労働などの人権侵害がある国を排除するという方針があるでしょう。それだと太陽光は危ないですよね。

飯田)日米の連携でそういう組織体をつくるという話が出てきています。西村経産大臣が表明していました。

高橋)当面はウイグルの話が想定されるのだけれど、日本の太陽光パネルはウイグルのものが多いはずです。アメリカは太陽光パネルを自国のものに切り替えています。そういうことを日米で一緒に進めればいいと思います。

半導体をつくる装置は日本とアメリカとオランダが8割を占める ~進む中国包囲網

飯田)その辺りの枠組みづくりや人権の部分について、アメリカは半導体に関してはかなり厳しく行うということです。

高橋)半導体というと、台湾や韓国が有名ですが、重要なのは半導体をつくる装置です。半導体をつくる装置は、日本とアメリカとオランダしかありません。5社しかないのですが、ほぼ8割を占めているのです。

飯田)日本とアメリカとオランダで。

高橋)そこが装置を輸出しなければ、台湾も韓国もつくれなくなります。日本とアメリカとオランダで協定して、「しっかり組んでいこう」という方針があります。いろいろなところでこういう話になっていますが、はっきり言って中国包囲網です。中国を締め出す動きが今後、盛んになる気がします。

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