この円高は「悪い円高」なのか 円相場が一時127円台半ばに
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ジャーナリストの須田慎一郎が1月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。円高状況に動く為替相場について解説した。
円相場が一時、1ドル=127円台に
飯田)円高についてです。1月13日のニューヨーク外国為替市場の円相場が、およそ7ヵ月ぶりに一時、1ドル=127円台まで上昇しました。1ドル=150円台を見るような展開だったところからすると、ずいぶん変わったなという印象です。これによって、また「悪い円高」と言われるようになりました。少し前までは「悪い円安」と言われていたのですが。
長期金利の上昇によって国債価格が下落
須田)そもそも、なぜ日本の長期金利が上昇したのかが、1つの大きなポイントになると思います。長期金利の上昇は言うまでもなく、国債価格の下落というところにあります。
飯田)国債価格の下落。
須田)長期金利の指標は10年国債ですから、この辺りの価格が下落している。なかなか理解しにくいのですが、金利の上昇は価格の下落、金利の低下は価格の上昇と受け止めていただいていいと思います。
飯田)金利の上昇は価格の下落で、金利の低下は価格の上昇。
欧米のヘッジファンドが日本国債の空売りを掛けている
須田)金融マーケットで何が起こっているのかと言うと、主として欧米のヘッジファンドを中心とする外資勢力が、一斉に日本国債を売り浴びせているのです。空売りを掛けていると言っていいと思います。国債を借りてきて売るという形を取っています。
飯田)国債を借りてきて売る。
日銀が押し戻され、金利が上昇し、国債価格が下落
須田)日銀がずっと買い支えてきたのですが、攻勢が激しいので買い支えしにくくなってしまったのが実態です。結果的に日銀が押し戻されて、金利が上昇し、国債価格が下落しているのがいまの展開です。
飯田)金利が上昇して国債価格が下落している。
須田)ただ単純にインフレだから、あるいは金利差が拡大したからではなく、金融マーケットでは、このような状況になっているということです。
あるべき水準、1ドル=120円~120円台前半へ推移か
須田)日銀の方が優勢になってくると、あるべき水準にドル円、為替は推移していくのかなと思います。では、あるべき水準とはどのようなものかと言うと、1ドル=120円~120円台前半が現状の実力だと考えてもらえば、「悪い円高」というのはよくわからないことを言っているなと思います。
空売りは未来永劫できない ~限月までに清算しなくてはならない
飯田)日銀の黒田総裁が12月に、いままでは金利の変動幅が0.25%だったものを0.5%まで伸ばすと言いました。利上げではないと言っていますが、ここで0.5%に向けて売り、勝負をかけていくようなことがいま行われています。
須田)0.5%突破を目指しているというのも。
飯田)それもニュースになっていましたね。
須田)10年国債がいまは主戦場になっているのです。空売りは未来永劫できるものではなく、期限があります。
飯田)期限がある。
須田)その期限を限月と呼ぶのですが、それまでに売り方は清算売買しなくてはならない。最終的に残高を持っていると、現物の国債で借りてきた相手に返さなくてはならない。返すに当たっても規定があり、残存期間7年ものの国債を返さなくてはならないというルールがあるのです。
限月まで日銀が耐えられるか
須田)そこまで日銀が耐えることができれば、一気に7年国債を買ってこなければならないので、金利もあるべき水準に戻っていく。そこまでの攻防がいま激化しているという状況なのです。
飯田)限月は大体いつごろなのでしょうか?
須田)その期限によって違います。
飯田)いまがヒートアップしている時期なのですね。
須田)そうですね。
国債を高く売って安く買い戻すのがファンドの狙い
飯田)空売りしている方からすると、借りてきた国債をまず売り、もっと金利が上がって国債価格が下落すれば、その差額で儲けられるということですね。
須田)そのときに買い戻すという形です。高く売って安く買い戻すのがファンドの狙いだと考えてもらっていいと思います。
日銀総裁が交代する4月に1つの転換点を迎える
飯田)日銀が耐えられるかどうかですが、その辺りはどう思いますか?
須田)円安になると「悪い円安」、円高になると「悪い円高」という日本国内の論調が、日銀の足を引っ張ろうという方向に動いているのではないかという意図を感じます。
飯田)日銀の足を引っ張ろうと。
須田)大きな枠組みで見ると「異次元の金融緩和」は、ある種アベノミクスの3本柱の1つです。ここへ来て、アベノミクスの否定に動いている節があります。
飯田)アベノミクスの否定に。
須田)4月に日銀総裁の交代が行われますが、それを1つのきっかけとして、アベノミクスからフェードアウトしていく。そう考えると、4月に1つの大きな転換点を迎えるのではないでしょうか。
飯田)ファンド側の読みとしては政策の変更が起こったり、日銀を支えるような体制だったのが、そうではなくなってくるために、そこへつけ込んでくると。
須田)そこが1つの売りの理由になってくると思います。
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