「結婚して子どもを産む」ビジョンが持てない「アンダークラス」 『異次元の少子化対策』でどう支援するのか

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ジャーナリストの佐々木俊尚が1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が強調する少子化対策について解説した。

「結婚して子どもを産む」ビジョンが持てない「アンダークラス」 『異次元の少子化対策』でどう支援するのか

※画像はイメージです

岸田総理、通常国会で防衛力強化や少子化対策 ~議論し実行へ

岸田文雄総理大臣は1月17日、自民党の役員会で23日に召集される通常国会について、防衛力の抜本的な強化や少子化対策などについて議論し、実行に移していく考えを強調した。

飯田)衆院の補欠選挙についても「必勝を期したい」ということです。また、統一地方選でも「しっかり成果を出していきたい」と強調しました。

エネルギー政策と安全保障政策については評価するべき ~「検討使」と揶揄される岸田総理だが

佐々木)岸田総理は「検討します」と言ってばかりいるので、「検討使」などと陰口を言われたりしています。何もしていないイメージがあるけれど、少なくとも、防衛力強化で「安保3文書」を発表し、国家安全保障戦略を練り直して「反撃能力を持ちます」と言ったことは評価されるべきです。

飯田)そうですね。

佐々木)もう1つ、原発も「再稼働します」だけではなく、さらに現在の老朽化した原発をリプレイスして新しいものをつくる方針を打ち出しました。

飯田)再稼働に加えて。

佐々木)エネルギー政策と安全保障政策については、高く評価すべきではないかと思います。戦後政治の総決算を安倍晋三元総理がやろうとしていた。それを一歩進めているという意味では、評価されるべきだと思うのです。

異次元の少子化対策とは予算を倍増させるということか ~その予算を「どこに使うのか」が問題

佐々木)ただ、少子化対策はどうなのでしょうか。

飯田)異次元の少子化対策。

佐々木)イメージとしては予算を倍増させるという話で、こども家庭庁が4月から始まるではないですか。その予算が約4兆8000億円なのですが、それを倍増させるようなことが「異次元」という意味だと思うのです。

飯田)予算を倍増させる。

佐々木)ただ、お金を増やすのはもちろんいいことなのですが、「どこに使うのか」が問題です。

飯田)そのお金を。

佐々木)「少子化の原因は何なのか」が明解ではなく、人によって言っていることが違います。

飯田)議論されているけれど。

佐々木)例えば麻生太郎副総裁は先日の演説で、晩婚化……要するに「結婚する年齢が遅くなったことが少子化の最大の原因だ」と言っているのです。昔は20歳くらいで結婚していたのが、いまは30代でも珍しくない。そうなると出産時の女性の年齢が上がって、昔であれば3人産めたけれど、いまは1人になるという現象が起きる、ということを言っています。確かにそれも1つの要因なのかも知れません。

1000万人以上の「結婚して子どもを産む」というビジョンが持てない年収200万円以下の人

佐々木)しかし、一方でよく議論になっていて「そうだな」と思うのは、「結婚できないから子どもを産めないのだ」ということです。いまアンダークラスと言われる人たちがいます。アンダークラスというのは、年収200万円以下で働いている非正規雇用などの人で、国内に1000万人以上いると言われています。

飯田)アンダークラスの人が。

佐々木)そういう人たちが「結婚して子どもを産む」というビジョンを持てるのかと言うと、現実的には持てないわけです。

既に結婚している夫婦を支援するだけで意味があるのか

佐々木)非正規雇用や収入の少ない人たちが増えていて、経済が成長していないのが少子化の原因だということも言えなくはないわけです。そうであれば、少子化対策として既に結婚している夫婦を支援しても、あまり意味がないのではないでしょうか。

飯田)アンダークラスの人たちが多いことも原因の1つであれば。

佐々木)今回の少子化対策では何をするのかと言うと、基本的には経済支援です。例えば子どもを産むと児童手当を出すとか、あるいは幼児教育や保育園のサービスなどに対して支援するという話です。

アンダークラスの人たちの状況を改善しなければ抜本的な少子化対策にはならない

佐々木)結婚したあと子どもを産むのかどうかを考えたときに、「お金を支援してくれるなら産もうか」という層を支える。もちろん、それも効果がないわけではないと思いますが、一方で、そこまで至っていない……。

飯田)アンダークラスの人たち。

佐々木)結婚も到底できない、子どもを持つビジョンなども持てない人がたくさんいるという状況をもう少し改善しない限り、抜本的な少子化対策にはならないと思います。

現在は「パワーカップルの子沢山」という時代

佐々木)昔は「貧乏子沢山」という言葉がありました。高度経済成長期やその前くらいの時代、農家などの典型で、「子どもに働かせることで働き手を増やす」という意味の言葉でした。しかし、いまは逆に子どもを産むとお金が掛かってしまう。実際、自分の周囲などを見渡すと、いわゆる「パワーカップル」と呼ばれる夫婦がいたりします。弁護士同士や、大学の先生同士など。

飯田)世帯年収が2000万円~3000万円という。

佐々木)そういう世帯の方が、意外と子どもを3人くらい産んでいるのです。パワーカップルの方が子沢山の時代になっている。昔の貧乏子沢山とはまったく違う時代状況になっているのです。

「パワーカップルに子どもをたくさん産ませる」政策なのか、それとも「経済的困窮者で結婚できない人たちを支える」のかを明快にするべき

佐々木)そこをまず認識して、「パワーカップルに子どもをたくさん産ませる」政策なのか、それとも「経済的困窮者で結婚できない人たちを支える」のか、もう少し明快にするべきではないでしょうか。

飯田)どちらなのか。

佐々木)すべてをその1点に投入するという話ではないのですが、「どこを押せばどこがうまくいくのか」と考え、もう少し全体のロジックを示さないと、「お金をばら撒いて何とかする」というようにしか見えないですよね。

飯田)しかも場当たり的というか、一時的なものになってしまう。結局、経済が温まってきて、各々自分の可能性が追求できるようになれば、そのなかでライフプランとして結婚し、子どもを産み育てることができるという。

佐々木)来年(2024年)も再来年も、その先も給料が上がっていくという期待感があれば、「では子どもを産んで将来を考えようか」という方向になるのですが、給料が上がらない状態のなかで「子どもを産んで、将来に希望を持つ」のは無理だと思います。

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