具体性のない「子育て支援」など、何をしたいのかがわからない 岸田総理の施政方針演説

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ジャーナリストの有本香が1月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の施政方針演説について解説した。

2023年1月23日、衆議院本会議で施政方針演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/23shiseihoshin.html)

岸田総理大臣が施政方針演説 ~子ども・子育てを最重要政策に位置づける

通常国会が1月23日に召集され、岸田総理大臣は衆参両院で施政方針演説を行った。子ども・子育てを「最重要政策」と位置づけ、「従来とは次元の異なる少子化対策を実現する」と表明した。また防衛費増額に伴う財源確保に関して、先送りせず対応すると明言した。

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岸田総理大臣)子ども・子育て政策への対応は待ったなしの、先送りの許されない課題です。従来とは次元の異なる少子化対策を実現したいと思います。

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「何がしたいのか」が伝わらない

飯田)総理がマスクを外して演説したことも話題になりました。全体をどうご覧になりますか?

有本)施政方針演説は、どうしても総花的な印象を受けやすいのですよね。ただ、総花的にあらゆる項目を網羅していくなかで、「それぞれの項目で何がしたいのか」を明確な言葉で伝えることが望ましいのです。

飯田)何がしたいのか。

有本)残念ながら、岸田総理の施政方針演説は刺さりません。「何がしたいのか」がよくわからない。ただ、これまで揶揄されてきた「検討」や「聞く力」という言葉は鳴りを潜めました。

具体性のない「次元の異なる少子化対策」 ~財源は社会保険料が想定されているということは、財源が異なるだけ?

有本)目玉のようにおっしゃっていた「次元の異なる少子化対策」ですが、次元が異なっているかどうかは少し疑問ですよね。いままでの延長線上ではあります。

飯田)いままでの延長線上。

有本)例えば子育て世帯を支援することに対して、反対する人はほとんどいないと思うのですが、「次元が異なる」とまで言ってしまっているわけです。だとしたら、もう少し規模的なものを示すとか、あるいはいままでにないような、発想を転換したような対策が出てくるのかと言うと、そうでもありません。しかも、財源は社会保険料が想定されている。これは次元が異なるという話なのでしょうか。

飯田)財源が異なるだけ。

財源が社会保険料ということは結局、身を切ることになる

有本)そういう感じですよね。

飯田)税金ではないけれども、社会保険料ということは、また給料から天引きされるという。

有本)サラリーマン世帯としては、結局身を切るという話ではないかと思います。次元が異なっているかどうかは、まったく納得感がないですね。

少子化対策3本柱

飯田)「少子化対策3本柱」として、児童手当などの経済的支援の強化、幼児教育や保育などの子育てサービスの拡充、働き方改革の推進と制度の充実を挙げています。

有本)働き方改革ということは、要するに「男性も含めて仕事をしながら十分に育児ができる環境をつくりましょう」という話ですよね。

既にある子育て世帯に向けた施策をもっと伝えるべき

有本)「根本はそんなところなのだろうか」とは感じます。言い方に気を付けなくてはいけませんが、私の周辺で日本に住んでいらっしゃる外国人の方は、子どもをたくさん産んでいるのですよ。それはなぜかと聞くと、彼らはもちろん経済的にあまり困っていない層というのもあるのですが、「日本は子育てしやすいですよ」と言うのです。

飯田)そうですか。

有本)「子どもに向けてのいろいろな支援は、既にかなりありますよね」と言うわけです。まさに意識の問題なのです。

飯田)意識の問題。

有本)確かに平均して言うと、これから子育てしようとする世帯が十分な所得を稼いでいるかと言うと、必ずしもそうではありません。そこが十分な所得を稼いで、家族を養えるというビジョンが持てるようにしなくてはいけない。それと同時に、既に子育て世帯に向けたいろいろな施策があるわけです。

飯田)子育て世代に向けての施策が。

有本)それをもっと政府が伝えていくことが必要だと思います。「子どもを持ったらお金がかかって大変だ」という意識ばかりが前に出てしまっているのは、非常にマイナスですよね。

2023年1月12日、日米宇宙協力枠組協定署名式~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/13usa.html)

「日本全体で稼ぐことができれば家族をつくっていけるのだ」というビジョンをつくることが大事

有本)子育て世帯に向けて何かを配ってあげるという発想よりも、経済をよくしていく、あるいは雇用環境をよくしていくことが大事です。その雇用環境のなかで、例えば日本国内にもっと製造業を取り戻す努力をするなど。

飯田)経済をよくするということ。

有本)あるいは、いま各地の自治体が誘致に一生懸命になっているデータセンターは、これから絶対に増えます。データセンターを増やしたいということは、北海道の鈴木知事などいろいろな方がおっしゃっていますが、ちぐはぐなのです。例えば北海道は「データセンターを誘致する」と言いながら、電気代は全国でいちばん高いのです。この辺りのちぐはぐさが、実はボディーブローのように効いてきている。実際にはみんなの雇用環境をよくしないし、所得環境をよくしないわけですから、子育てする方向にいかないのですよね。

飯田)電力の問題はとても重要です。半導体に関しても九州に立地されるのは、水がきれいだというのももちろんありますが……。

有本)電気代が安いということですよ。

飯田)安定している。

有本)日本国内に戻ってきた製造業は、みんな九州にいきますからね。こういうことは全部循環していて、「子育てに支出をつけます」という方向よりも、日本社会全体が一生懸命働けば稼げるし、きちんと家族をつくっていけるのだというビジョンを示すことの方が大事ですよね。

今後、働く場として増えていくデータセンター ~増加する消費電力を得なければならない

有本)これからの働き方のなかで、特に子育てしながらパートタイムも含め、データセンターのようなところで働く方法はありますよね。

飯田)データセンターで。

有本)ちなみに試算だと、2018年におけるデータセンターの消費電力は、時間当たり14テラワットです。これが2030年だと、約6倍に膨れ上がるとされています。やはり電気なのです。

飯田)電気である。

有本)2050年になると約857倍ですよ。私たちの生活はどんどん変わっていくのです。変わっていくなかでそれを支える。そして雇用をつくる産業を、絞ってでもいいから、しっかりしたビジョンや手当を考えていけば、そこから全部広がるではないですか。

政府は「困る人をなくしていく」ことを最初に行うべき

有本)これは考え方の違いですが、例えば子ども・子育てにしても、昨今話題になった女性への支援にしても、政府が税金や社会保険料など、いろいろなもので国民からお金を取っている。それを困っている人に配ってあげるという発想は、実は怖いと思います。

飯田)怖い。

有本)本当に適切、的確に配られるのかという問題や、あるいは配るための組織にかなりのお金がかかるなど、本末転倒なのですよね。そうではなく、困る人を少なくしていくことが、むしろ政府が最初にやるべきことだと考えたら、今回の施政方針演説ではそのような方向には見えなかったなと思います。

外交や安全保障についても中身は「これから」

有本)外交や安全保障も、従来の方向性からあまり変わっていません。

飯田)今回は国会の直前にヨーロッパ、アメリカを歴訪し、各地で歓迎されました。関係を深めてきたのだと、官邸や総理周辺は意気軒昂のようです。

有本)そうですね。自信を深めておられるということを仄聞します。

飯田)しかし、それは安倍さんや菅さんの敷いたものである。

有本)敷いた路線を着実に歩いておられる。それ自体は悪くないですし、あるいは防衛3文書の改定をはじめとして、かなり大きな方針転換もされています。ただ、いまの日本を取り巻く厳しい環境に対して、本当に「対応できる」と胸を張れるのかどうかということです。その辺りはまだまだ心許ないですね。

飯田)3文書はつくったけれども、その先でどう装備を変えていくのか。

有本)実際にどう動かすのか、ということですものね。

飯田)肉付けはこれからです。

有本)そうなのですよね。中身はこれからという感じです。

2022年4月4日、ウクライナの首都キーウ近郊ブチャで、報道陣に話をするゼレンスキー大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

なぜこのタイミングで「岸田総理のウクライナ訪問」の報道が出るのか

有本)1つ具体的な例を取り上げると、岸田総理が2月にウクライナを訪問するという話があります。

飯田)そんな報道が出ましたね。

有本)「こんなものが、なぜいま出るのか」と思うのです。

飯田)詳しく出ているのですよね。

有本)日程まで含めて。これは誰かがリークしているでしょう。

飯田)報道によれば、複数の日本政府関係者と書かれています。

情報が出ることが戦局に影響を与えてしまう

有本)これは観測気球を上げる問題ではないと思うのです。岸田総理の身の安全もさることながら、下手をすると戦局に影響を与えてしまいますからね。

飯田)ウクライナの。

有本)なぜ、こういうことが先に情報として出るのか。「緊張感がないのではないか」と見られても不思議ではありません。

飯田)相手国もあるし、他の国々も驚きますよね。

緊張感がなく感覚がずれている

有本)「何を言っているのか」というような話です。その辺りも考えると、やはり安全保障へのセンスというか、感覚がずれているのではないでしょうか。

飯田)感覚がずれている。

有本)確かに防衛3文書はつくったけれども、中身がないという部分だけではなく、基本的な感覚が少しずれていないか。日本を取り巻く環境が厳しくなるなかで、場合によっては一触即発の事態が起きることも、2023年は予想されます。それに対して、本当に対応できるような感覚になっているのだろうかと思います。

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