数量政策学者の高橋洋一が1月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ブラジルとアルゼンチンで協議が合意された共通の貿易通貨について解説した。
貿易の共通通貨
1月23日、ブラジルのルラ大統領とアルゼンチンのフェルナンデス大統領が会談し、両国間の貿易で使う共通通貨の創設に向け協議することで合意した。二国間貿易促進のために、決済に用いる米ドルへの依存を減らす狙いがある。
経済運営が下手な国の典型であるブラジルとアルゼンチン
飯田)それぞれの国にレアルとペソという通貨がありますが、それを廃止する意図ではないそうです。ある意味、共通の通貨をつくることになるのですか?
高橋)2つの国家のレートをどうするかなど、いろいろな話があります。しかし、ブラジルとアルゼンチンは経済運営が下手な国の典型なのですよね。
飯田)経済運営が下手な国。
高橋)ブラジルは最近まともですけれど、アルゼンチンと聞くと、以前、『母をたずねて三千里』というテレビアニメの作品があったのですが、知っていますか?
飯田)ありましたね。
高橋)ヨーロッパ人がアルゼンチンへ出稼ぎに行く話ですが、1930年ぐらいのアルゼンチンは世界第5位の経済大国だったので、ヨーロッパ人が出稼ぎに行ったのです。でもいまは没落していますよね。
「先進国・発展途上国・日本・アルゼンチン」 世界には4つのタイプの国しかない ~先進国から途上国になったアルゼンチンと、途上国から先進国になった日本
高橋)ノーベル経済学賞を受賞した有名な経済学者のクズネッツ氏は、「世界には4つのタイプの国しかない」と言っています。
飯田)4つのタイプ。
高橋)「先進国・発展途上国・日本・アルゼンチン」です。
飯田)日本とアルゼンチンだけ別枠なのですか?
高橋)途上国から先進国になった日本と、先進国から途上国になってしまったアルゼンチン。そういう意味でよく使われます。経済政策が無茶苦茶な国として、私はよくアルゼンチンを思い浮かべます。その無茶苦茶な国と、かなりひどい国が一緒になってもどうなのかな、という気がします。
マクロ経済政策ができなければ共通通貨はできない
飯田)このニュースが報じられるときに、域内共通通貨としてユーロと引き比べるようなことが言われますが、それとはまた別ですか?
高橋)まったく別であり、政治的な感じがします。アルゼンチンは金融政策が下手だから、何度もハイパーインフレが起こります。何回も何回も起こっています。
飯田)デフォルトも何回もしていますよね。
高橋)でも、たくましいのですよ。何回デフォルトしてもすぐ平気になる。この間のサッカーワールドカップでは優勝したでしょう?
飯田)優勝しました。
高橋)あれが希望という国ですからね。マクロ政策がきちんとしていないと、共通通貨はできないのです。
飯田)なるほど。
高橋)ブラジルの方はインフレ目標があって、そこそこ安定しているのですが、アルゼンチンはまったくそうではない。いまでも高いインフレです。インフレ目標は30%や20%ぐらいが目標だと言うのだけれど、驚きますよね。
飯田)それでも抑え込む方なのですね。
高橋)しかし、それもできていません。
飯田)普通は40~50%くらいになってしまうから、30%で抑え込もうという感じ。
高橋)大変な国です。共通通貨をつくるということですが、「ブラジルもよくやるな」と思いました。こういう場合は悪い方に引きずられてしまうので、多分うまくいかないと思います。基本的にマクロ経済政策がきちんとしていないと難しいです。
通貨の出し方が普通ではないアルゼンチン
飯田)アルゼンチンのインフレは、輸入する物価が高いということですか?
高橋)通貨の出し方が無茶苦茶なのですよ。まったく気にせず次々に出すのです。
飯田)次々と出してしまうからインフレになる。「支払いが滞るから、刷ってしまおう」というようなことを繰り返すのですね。
高橋)野放図な国です。日本でハイパーインフレと言っているけれど、先進国のマクロ経済、特に金融政策とはまったく違うやり方をしていますからね。参考にもならないし、「ブラジルはよく呑んだな」思います。
「普通ではない例」としてアルゼンチンを出すことも
飯田)記事を読むと、各国の通貨がドルと連動するドルペッグを引いていて、「アメリカの金融政策に過度に引きずられてしまうから、共通の通貨をつくるのだ」というようなことが言われていますが。
高橋)つくるのだけれど、すごいインフレになってしまって、アルゼンチンは一時、インフレを抑えるためにダラライゼーションを行い……。
飯田)ダラライゼーション?
高橋)つまり、持っているドルの量しかお金を刷らないのです。
飯田)ドル本位制のようなものですか?
高橋)そうです。それもやったことがあるけれど、やめてしまった。自分の通貨だと無茶苦茶になってしまうからダラライゼーションを行うのに、それもやめてしまうなど、わけがわからない国の典型です。
飯田)わけがわからない。
高橋)普通ではない例を見出すときに、マクロ経済政策ではアルゼンチンの例を取り出すことがよくあります。ときどき日本も変な例として出されるのだけれど。経済学者のクルーグマン氏も「先進国・途上国・日本・アルゼンチン」と、クズネッツ氏と同じことを言っていました。
飯田)ある意味、インフレなのにインフレを加速させてしまう国がアルゼンチンで、デフレなのにデフレを加速させてしまうのが日本ということですか?
高橋)そうです。クルーグマンさんはそう言っていました。
飯田)「なぜ逆方向に走っていくのだ?」というような。
高橋)「もう少し普通にやれよ」と。共通通貨の行く末は興味深いです。
飯田)貿易共通通貨の名称は、スペイン語で「南」を意味する「スル」になる可能性があるということです。
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