「年収の壁」というような対症療法ではなく、根本的な「社会保険の改革」を行うべき

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ジャーナリストの鈴木哲夫が2月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。社会保険における「年収の壁」について解説した。

「年収の壁」というような対症療法ではなく、根本的な「社会保険の改革」を行うべき

衆院予算委員会で答弁に臨む岸田文雄首相=2023年2月1日午後、衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

加藤厚生労働大臣、「年収の壁」の解消に向けて議論を進める考え

加藤厚生労働大臣は2月2日の衆議院予算委員会で、年収が一定額以上になると社会保険料負担などが生じて手取り収入が逆に減る、いわゆる「年収の壁」の問題について、「壁を意識せず働くことができるよう、どのような対応が可能か議論を深めたい」と述べた。

飯田)パートで働く被扶養者の年収が130万円を超えると、厚生年金などの社会保険料の負担が発生し、結局、手取りが減ってしまうという話です。

130万円を超えると配偶者であっても配偶者自身で社会保険に加入しなければならない ~健康保険料・年金保険料の負担義務が生じる

鈴木)女性の方に多いのですが、子育てしながら家計のためにパートに出て働く。その方々は年収130万円を超えるか超えないかで、社会保険料負担などによる手取り金額が全然変わってくるのです。

飯田)130万円の壁。

鈴木)しかし、130万円の壁と言っているけれど、もっと根本的な問題があると思います。

対症療法ではなく、根本的な「年金改革」を行うべき

鈴木)130万円を超えたら、社会保険料の支払いなどが出てきて納めなければいけない。これは健康保険料・年金保険料の負担ではなく、年金に置き換えたらわかりやすいと思うのです。

飯田)年金と。

鈴木)要するに年金の財源問題、つまり社会保障の財源問題です。少子化によって負担する現役世代が減っていくなかで、いま国は何とか社会保険の財源を確保しようとしているわけです。

飯田)そうですね。

鈴木)払う人を広げようとしている。「パートの方も払いましょう」という制度が去年(2022年)の10月から始まった。しかし、財源問題を少しずつ広げたら、次に「130万円の壁」の問題が起きた。そんな対症療法を行っていてもダメなのですよ。

社会保険、基礎年金をすべて消費税で賄う

鈴木)少子化は止まらないのだから、財源問題は根本的に、社会保険料改革、年金改革のようなことをやらなければいけない。例えば河野太郎さんなどが言っているように、消費税で社会保険、年金の財源を賄う。

飯田)いまは社会保険料のなかから取っているけれど、現役世代から天引きされている部分をやめるなり縮小するなりして、その分を税から取る。もちろん、いろいろな賛否はあると思いますけれど、現役世代に負担が偏っているところから、全世代的な負担にした方がいいのではないかというシフトの仕方ですよね。

消費税を財源にすることで全世代で賄う ~「130万円の壁」も解決できる

鈴木)「消費税は財源として安定している」という言葉を使っていいのかわかりませんが、みんなものを買い続けるわけです。自民党が野党のとき、3党合意を行いましたよね。

飯田)税と社会保障の一体改革。

鈴木)「消費税を上げた分は社会保障に使うのだ」ということで、「社会保障に使うならそれもありかな」と国民が判断しました。

飯田)消費税を上げる際。

鈴木)国民に良識があった。そういうことも考えれば将来、少子化を止められないなかで、年金も含めた社会保障の財源をどうするのか。高齢者も若い人も、みんな享受しなければいけないわけですから、そこは分断せず、みんなでどうするかを考える。例えば消費税という考え方もあるのではないでしょうか。そうすれば130万円の壁や、一定額を超えたら払わなければいけないというような、財源の問題が解決されるではないですか。

飯田)働けば働くだけ、きちんと手取りがもらえる環境ができていく。

場当たり的に「130万円の壁」を、例えば200万円にしても永遠に解決しない

鈴木)ただ、飯田さんがおっしゃったように、消費税を上げたり消費税を充てるということには賛否ありますよね。

飯田)3党合意のときも「社会保障に使う」と言っていたのに、蓋を開けたら債務返済に使われていて、「おかしい」ではないかと。

鈴木)そこはまだ国民が不信感を持っているので、また消費税を財源にするとなったら「ええ?」と思うかも知れませんが、それでも改革しなくてはならない。場当たり的に「では次は130万円の壁を」などと……。

飯田)「次は130万円の壁を少し上げて、200万円にして」というようなことになってしまう。

鈴木)そういう議論になってしまったら、永遠に解決しないですよ。

一内閣を賭けて社会保険の改革をするべき

鈴木)一内閣を賭けて、社会保険の財源問題を大改革する。年金も「100年安心」などという考えは捨てて、年金制度の財源を含めて改革する。少子化の問題がいろいろと出ていますよね。いいきっかけではないですか。ここで政治が英断し、1年、徹底的に社会保険の改革を行う。

飯田)日本維新の会などが提案しているベーシックインカムの制度もどうなるのか。生活保護も含めた社会福祉全般を賄うことができるのかなど、いろいろ議論があるようです。また、それが給付カットにつながるのではないかという批判もあります。

鈴木)ベーシックインカムはいいのだけれど、大胆すぎる。でも財源問題はその気になれば着手できると思うのです。

飯田)“ゆき”さんという方から、「私の会社はほとんどがパートなので、全員の社会保険料を負担すると会社が潰れてしまうため、就業時間の調整が行われています。時給は上がっているのに収入が少なくなってしまいました」と、現場の立場から意見をいただきました。本末転倒なことが起こってしまう。

鈴木)パートを雇っている中小企業などは大変ですよ。それを繰り返しても何の解決にもならない。根本的な改革に着手するタイミングではないでしょうか。これだけ少子化問題が出てきているのですから、それに合わせて対応する。

飯田)物価が上がっていることを考えると、本来は賃金を上げていかなければならないのに、こういうことで手取りが上がらないのでは意味がありません。

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