ジャーナリストの鈴木哲夫が2月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が経済3団体でも要請した「賃上げ」について解説した。
連合が掲げた「5%の賃上げ」 ~実質のベースアップは3%
飯田)賃金について、岸田総理も経済3団体の賀詞交歓会などで賃上げを要請していますが。
鈴木)「賃上げしてください、賃上げをぜひ」ということを言っているのだけれど、そう簡単にはいかない。いろいろな経済アナリストの方々も言い始めていますが、連合が掲げた「5%の賃上げ」は、5%のうち2%が定期昇給だから、実質のベースアップは3%なのです。物価上昇率は去年(2022年)の消費者物価指数もそうだけれど、既に4%を超えている。1月の東京都区部の消費者物価指数は、前年同月比で4.3%上がっています。
飯田)都区部の数字。
鈴木)そういう指標ですから、全国の物価上昇率は上がると思うのです。3%では追いつきません。
原材料や光熱費が上がるなかで、大手企業はできても中小企業は賃上げなどできない ~岸田総理は「賃上げ」を要請するが
鈴木)城南信用金庫が行った調査では、中小企業の7割ぐらいは「賃上げできない」と言っている。中小企業は無理だということです。岸田さんが話をしている相手は、連合に加盟している大企業です。
飯田)大手企業。
鈴木)そのなかで、思い切って賃金を上げるところも出てきている。いろいろな事情もあると思いますが、その勇気は評価していいと思います。しかし、中小は厳しいわけです。
飯田)厳しいですよね。
鈴木)中小の方たちの集まりに呼ばれて講演することがありますが、「この3月で自主廃業します」というような中小企業が多いのです。まず、コロナの支援金の返済がきつい。そして、何と言っても物価高がきついと。
飯田)なるほど。
鈴木)原材料が上がり、工場を動かす光熱費も上がっている。とんでもないですよね。一般家庭でも光熱費が2倍ぐらいになって驚いていますが、企業はとてもではないけれど、「商品に価格転嫁はできない」と言うのです。
飯田)価格転嫁はできない。
鈴木)話を聞いた自主廃業する中小の方は、お菓子をつくっている会社なのだけれど、「お菓子の値段を倍にはできません」と言うのです。
賃上げ要請よりも物価高対策が先 ~向こう2年間の消費税減税など
鈴木)彼は「賃上げってどこの国の話ですか?」と、きつい言い方をしていました。そういう意味でも、岸田さんが行うべきは、確かにインフレを超える賃上げ要請も大事です。でも、お願いよりまず、向こう2年間の消費税減税など、物価高対策が先ではないかと思います。
飯田)懐にお金を残す形の。
鈴木)0にしなくてもいいから消費税を下げれば、中小企業の負担も減るし、みんなが生活していく上での必需品(の値段)も下がるわけですから、そういうことで少し我慢する。
飯田)消費税を下げて我慢する。
鈴木)これは1つの案なのですが、それに限らず、賃上げをお願いするよりも、物価高対策をとにかくやって欲しいです。来年度予算のなかにも目立ったものがないのならば、急遽補正をすぐに組む。「予算が上がってすぐに補正か」と言う人もいるかも知れませんが、「賃上げをお願いするよりは物価高対策」だと思います。
下請け企業が賃上げできない構図
飯田)「日本で働く人の7割は中小企業に属している」と言われていて、「ここが上がらないと」というところですが、下請け企業からすると「元請けが払ってくれなければ自分たちは上げられない」という。
鈴木)自動車の部品を下請けでつくっている親しい知人がいますが、まさにその通りです。しかし、元請けに「発注額を上げてくれ」と文句を言ったら、「別にお宅でなくてもいいです」という話になるわけですよ。
飯田)他に頼むからいいよと。
鈴木)実際にそう言われてプレッシャーを掛けられているのです。我慢するしかない。だから給料は上げられないということです。そういう構図だから、政府は賃上げよりも物価高対策にシフトしていくべきだと思います。
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