外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。死者が2万人を超えているトルコ・シリア地震について解説した。
トルコでツイッターの閲覧を遮断、震災対応への政権批判封じの可能性も
マグニチュード7.8の地震があったトルコで2月8日、ツイッターの閲覧が遮断された。ツイッター上には政府の震災対応の不備を指摘する投稿が出回っており、エルドアン政権による情報統制との見方が出ている。
飯田)トルコとシリアの国境地帯で大きな被害が出ており、日本からも国際救助隊が派遣されています。
宮家)日本も行くのは当然なのですが、この問題は人道的な側面と、政治的な側面を分けて話した方がいいと思います。人道的には、これは大きな災害です。死者は2万人以上でしょう。
飯田)2万人以上です。
宮家)当然、各国が支援する。私も災害に遭われた方々に対して、心からのお悔やみと哀悼と同情の気持ちを表したいと思います。一方、政治的に考えたとき、これをさまざまな思いで見る人がいる。トルコ政府がツイッターを遮断したということですが、当然だろうなと思います。なぜかと言うと、国内で選挙がありますからね。
飯田)なるほど。トルコは選挙が近いですか。
政府にではなく、「被害を受けたトルコとシリアの人々に対する連帯」と表明したEU
宮家)続いて国際面ですが、トルコの最近の動きは、大胆不敵と言ったら失礼ですが、意欲的に外交の幅を広げているわけです。ウクライナ情勢では、ロシアとの仲介をしてみたり。
飯田)穀物輸出に関して。
宮家)中国には少し違う形でアプローチしてみたり。アメリカとの関係は決してよくないですし、欧州連合(EU)には入れてもらえない。そして日本とは親密である。そういうトルコが災害を受けたわけですから、各国が形を変えて支援しているわけです。
飯田)そうですね。
宮家)面白いのは、EUが「大地震で被害を受けたトルコとシリアの人々に対する連帯」を表明したと。「人々に対する連帯」と言っているのです。少し読みすぎかも知れませんが、「政府に」とは言っていないわけです。それはそうですよね。シリア政府は、とんでもない独裁政権ですから。
飯田)アサド政権ですね。
宮家)トルコのエルドアン大統領に宛てた書簡では、「今度、支援会合を開きましょう」というようなことを言っている。つまり、ヨーロッパもトルコとシリアで微妙に扱い方が違うのだろうなと見ています。
シリアとの国境の西側の被災地はシリアの反体制派がいるところ ~シリア政府が支援することはない
宮家)実際に場所が場所ですからね。被災地はシリアとの国境であり、西の地中海側です。反対の東側であれば、クルド地域ですが、もしそこで地震が起きたら、政治的には微妙に意味が違ってくるのですが、西側で地中海に近い場所となると、私の記憶が間違っていなければ、あそこには反体制派がいるところです。おそらくトルコから支援物資も入っているはずです。
飯田)シリアの反体制派。
宮家)シリアの反体制派で、難民もその辺りにいるわけです。その意味では、なかなか微妙なところで、神様は何て無慈悲なのだろうと思いますし、非常に胸が痛いです。
飯田)国境をシリア側に越えていくと、被災地の近くにはアレッポがあって、ここはまさに反体制派の根城だったところです。
宮家)一時はそうですね。そういう意味では、「どうして、こんなときにまた」という悲しい思いになります。しかし、シリアを直接支援するわけにはいかないでしょう。
飯田)シリア政府を。
宮家)今のシリア政府が反体制派の人たちの地域に物資を送るわけがないのですから。その意味でも、なかなか難しいことがたくさんあるだろうなと思います。
シリアへ向かう救助隊が少ない
飯田)国分寺市の“キミコ”さん、52歳の自営業の方からメールをいただいています。「今回のトルコ・シリア地震ですが、ニュースでは2万人の死者が出て、まだまだ犠牲者が増えるかも知れないということでした。各国の救助隊が現地に到着し、それぞれ活動していますが、ほとんどトルコが中心でシリアへの救助隊のニュースが少ないと感じます。聞くところによると、やはり救助隊は少ないようで、内戦中でもあるし、国力の差もある。シリアの一般の方々が気の毒に思います」といただきました。
宮家)まったくその通りですね。
飯田)国連なども「人道的な支援が必要だ」とアピールしていますが。
宮家)しかし、シリアの中央政府はあの地域を完全には支配していないのですから。しかも国内では内戦が続いているわけで、ロシアもイランもアメリカもヨーロッパもトルコも、みんな入って悪さをしているわけです。そういう意味では、中央政府と連携を取って人々を救うのは難しいでしょうね。
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