外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。バイデン大統領が2月7日に行った一般教書演説について解説した。
バイデン大統領、一般教書演説でこれまでの実績を強調
アメリカのバイデン大統領は2月7日の連邦議会で、今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行った。再選を目指して近く立候補するかどうかが注目されるなか、雇用の創出などこれまでの実績を強調した。また中国をめぐっては「競争に勝つには団結すべきだ」と述べ、与野党の結束を訴えた。
一部の共和党議員から「嘘つき」の野次 ~これまでの一般教書演説とは違う
宮家)通常「一般教書演説」とは、分断したアメリカが年に1回だけ、“United States of America”としてアメリカの統一をみんなで感じようとする日です。大統領が美しいことを言い、みんなが拍手して、「やはり我々はUnited States of Americaだよね」と感じる日だと私は思っていたのです。
飯田)アメリカの統一をみんなで感じようと。
宮家)ところが、今回はバイデン大統領が社会保障の話をしたときに、一部の共和党議員が「嘘つき」と野次ったわけです。それは少なくとも、私のいままでのイメージとは違うものでした。勿論日本でも、首相の所信表明でいろいろ言う人はいます。
飯田)野次がある。
宮家)野次があるから「民主主義ではない」などと言うつもりはありませんが、アメリカの一般教書演説はもう少し格調があるものだと思っていました。昔はどうかは知りませんけれど、今回は一般教書のイメージを削ぎましたね。でもこれも仕方がないのでしょう。アメリカの選挙は、下院の場合2年に1回あるわけです。ということは、節目、節目で新しいジェネレーションが入ってくる。
飯田)新たなジェネレーションが。
宮家)1972年にウォーターゲート事件があって、1974年にはニクソン大統領が辞任しましたよね。
飯田)ニクソン大統領が。
宮家)そのあとの選挙で「74年組」という、いままでの議会の長老支配に反抗する政治家が当選してきて、大混乱が起きたことがあるので、まあ、よくあることなのでしょう。
意図的に経済と自らの成果を述べた上で「まだ終わっていない」ことをアピール
宮家)でも「大統領のスピーチで野次」というのは、どうかなという気がしました。いずれにしても大統領が1年に1回、このようなスピーチをする。所信表明と同じで政権の方向性が見えてくるのですからね。また、今回は「外交が少なかった」と言われるのですが、もともと外交は多くありません。
飯田)そうなのですね。
宮家)外交演説ではないので。それでも通常より少なかったと言われていますが、中国のことを批判的に言えば、やはり、みんな拍手喝采するわけです。
飯田)中国のことを言えば。
宮家)「国の団結」という観点からしたら、もっと中国のことを話し、外交を前面に出してもよかったのですが、彼は意図的に経済、そして自分がいままで行った成果を詳しく述べた。そのキーワードは、「まだ終わっていない」と。
飯田)まだ終わっていない。
「次期大統領選にも出馬する」ということが最も大きなメッセージ
宮家)「まだ終わっていない仕事、これをきちんと最後までやらせてくれ」ということを何度か言っているのです。要するに、「私は2024年(の大統領選)に出ますよ」ということですよね。
飯田)2期目を目指すと。
宮家)「2期目を目指しますよ」というのが、最も大きなメッセージだったのではないかと思います。もちろん共和党の人たちはこれを批判するわけです。ですが民主党の人たちの中には、「大統領は元気だったな」というイメージもあるようで、それなりにバイデンさんが考えていた成果を出せたのではないでしょうか。「やり残したことをやる」というのは、もう1回やるという意味でしょう。
バイデン大統領の評価
飯田)約1200万人の雇用を創出した。いまの失業率が3.4%でも「雇用」なのだなと思いました。
宮家)日本とは数え方が違うから、3.4%はいい数字です。「コロナ禍があったから増えるに決まっている」という議論もあって、水掛け論なのですが、「バイデンさんは頑張ったのではないか」というのが私の個人的な評価ではあります。
インド太平洋地域で中国にやりたい放題させない
飯田)外交についてはいかがですか? 特に東アジアについては。
宮家)東アジアだけではなく、国家安全保障戦略にも書いてある通り、「潜在的なチャレンジャーは中国だ」ということを正確に見ているのだと思います。
飯田)脅威として。
宮家)ロシアは下り坂になっているわけですから、これから伸びることはありません。しかし中国の場合、これからも伸びる力を持っています。西太平洋において、アメリカがインド太平洋国家として中国と緊張状態になることを、しっかりと理解しておかなければなりません。
飯田)中国と。
宮家)しかも、インド太平洋地域はヨーロッパなどとは違って、経済発展がまだ見込まれる地域です。そこで中国に「我が物顔でやりたい放題させない」ということをメッセージとして出していると思います。
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