ジャーナリストの須田慎一郎が2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月18日にドイツで行われた米・ブリンケン国務長官と中国の王毅政治局委員の会談について解説した。
アメリカ・ブリンケン国務長官と中国・王毅政治局委員が会談
アメリカのブリンケン国務長官は2月18日、中国で外交を統括する王毅政治局委員と訪問先のドイツで会談した。気球の撃墜以降初めての会談で、ブリンケン氏は気球の領空侵犯について、「アメリカの主権と国際法に対する容認できない侵害だ」と伝え、「このような無責任な行為は二度と起きてはならない」と強調した。
軍事的に高い脅威ではない気球 ~「主権侵害」を政治的に上手く利用したアメリカ
飯田)気球の話が出た直後、予定されていたブリンケン氏の訪中はキャンセルされましたが、今回、ミュンヘン安全保障会議の場において外交トップ同士の会談が行われました。アメリカとしては、ガチンコで角を突き合わせてばかりもいられないところがあるのでしょうか?
須田)2つの側面があると思います。1つは安全保障上の話で、純粋に軍事的な問題として「気球問題はどの程度の脅威だったのか」を考えてみると、さほど高い脅威ではありません。その一方で、政治的な意味合いは大きい。特に主権侵害という点では、明らかに主権を侵害してきた。もともとアメリカは、これを政治的にどう使うのかに重きを置いていたのだろうと思います。
飯田)なるほど。
須田)アメリカにもたらされるプラスの効果をマックスまで高め、着地に持っていくという点では、非常に上手くやったのではないかと思います。
以前から中国の偵察気球の飛来を把握していたアメリカ
飯田)2月頭ぐらいに、この話が突如として出てきました。もともとはいくつも気球が来ていたのではないかという話もありますよね?
須田)それについては把握していたと思います。ただ、アメリカの報道を見ると、「一般市民が見つけてしまって大騒ぎになった」ということがそもそもの発火点です。その点で言うと、把握していたけれど見て見ぬふりをしていたのか、さして大きな問題ではないと捉えていたのかどうかはわかりません。しかし、飛んで来ていることをまったく知らなかったわけではないと思います。
飯田)一般市民が見つけずに報じられなかったら、そのままになっていたかも知れないのでしょうか?
須田)加えて、野党・共和党サイドから批判が出るに至り、強硬に対処しなければいけなかった。2024年の大統領選挙も見据えた民主党としては、「弱腰」と受け止められるのは最もマイナスな点だったのではないかと思います。
中国の偵察気球を「ミサイルで撃墜することもできる」と明言した浜田防衛大臣
須田)今回、最も大きなポイントを稼いだのは日本なのだと思います。
飯田)そうなのですか。
須田)領空の不審物が明らかに危害を加えるものかどうかわからない、また、攻撃と言えるかわからないようなものに対して、武器を使用できるのかという議論がありました。
飯田)そうですね。
須田)日本の国家主権が侵害されていることは間違いないのだから、本来であれば対処するのは当然なのだけれども、これまでの自衛隊法を見る限りにおいては、防衛大臣の判断1つに委ねていた部分があります。
飯田)防衛大臣の判断に。
須田)必要な措置を講じることはできるけれども、どのような形が必要な措置となるのか。これに対して浜田防衛大臣が「ミサイルで撃墜することもできる」と具体的に明らかにしたことは、日本にとっても大きな意味があったのではないかと思います。
飯田)いままでは正当防衛や緊急避難というところで、武器の使用は厳しく制限されていましたが、今回はそこを整理し直した。気球のようなものが来たときの対処として、武器が使えるとされました。気球以外にも、いま無人で空を飛んでいるものはたくさんあります。
須田)ドローンなどもあります。その辺りについても武器の使用が認められるようになったのは、ある意味で大きな一歩だと思います。
「いつでも撃墜できる」ということが抑止力に ~一方で沖縄上空にまで飛んで来ている事実を深刻に受け止めるべき
飯田)無人偵察機については、尖閣や南西諸島の方ではよくニュースになり、報告が上がっていますよね。
須田)飛んで来たものをいつも撃墜するという意味ではなく、「いつでも撃墜できる」という状況も抑止ですからね。
飯田)刀は持っているし、「抜くこともできるのだぞ」と示すだけでも抑止になります。ロジックのきっかけとして、上手いこと政治的に活用する。
須田)一方で我々は、気球が沖縄上空まで飛んで来たということを深刻に考えなければいけないと思います。
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