ジャーナリストの須田慎一郎が2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月22日に行われる2023年度予算案の集中審議について解説した。
衆院予算委員会、22日に3回目の集中審議を実施
2023年度予算案を審議している国会・衆議院予算委員会では、2月22日に岸田総理と関係閣僚が出席し、今国会3回目となる集中審議が行われる。与党内では28日にも衆院を通過させる案が浮上している。
予算案が年度内に成立 ~結果だけを見れば「大成功」の岸田総理
飯田)2月内に通過すれば、3月いっぱいでちょうど予算が成立し、年度内成立にもなってきます。日銀の正副総裁の人事案など、いろいろなことが取り沙汰されています。どこがポイントになると思いますか?
須田)物価上昇など、いろいろな状況を考えていくと、4月1日から予算を執行しなければならないところがポイントでしたが、予算案が年度内に成立できれば、それが可能になります。
飯田)そうですね。
須田)岸田政権は不安定に見えるのですが、そのような点では、意外にやることはやっているではないかと。これは別にポジティブに言っているわけではなく、運に恵まれている部分もあると思うのですが、結果だけを見れば「岸田さんは大成功」という形になるのだと思います。
「LGBT法」成立に向けて動くなど野党側の要求にほとんど応じる岸田総理 ~自民党内をどう差配するか
飯田)個別のところで言うと、総理秘書官によるLGBTQへの差別的発言などもあり、少し前であれば1つひとつが大炎上的な状況になって、国会が止まる、止まらないというようなことになっていた可能性もありました。しかし、そこまでではなく、ある意味での安全運転のようにも見えます。
須田)超安全運転、ベタ降りなのです。今回、荒井前秘書官の更迭だけではなく、かつて与野党合意まで結んでおきながら自民党内の根強い反発があり、「LGBT理解増進法案」についてもスクラップしました。しかし、これを成立させる方向で議論するとしています。
飯田)今国会での成立に向けて動いています。
須田)もちろん野党は歓迎だと思いますが、自民党内でどのように岸田さんが差配していくのかというところは、1つ注目しています。このように野党側の要求に対し、ほとんど応じているのです。その意味で言うと、ベタ降りでは野党側も対立軸をつくりにくいだろうなと思います。
「政治的に揉めない人を選んだ」日銀総裁人事 ~配慮に配慮を重ねた政治的な人事
飯田)日銀の正副総裁に関しては、24日に候補者の所信聴取が行われます。この辺りも対立軸にはならないのでしょうか? 事前の報道がいろいろ漏れて、問題視もされていましたが。
須田)岸田さんの今回の日銀総裁人事は、党内や対野党において「政治的に揉めないような人は誰なのか」を最優先に考えたようにしか見えないのです。
飯田)政治的に揉めないのは誰か。
須田)足元の自民党内でも、積極財政派と財政再建派がガチンコの全面衝突をしています。防衛増税をめぐって火種が出てきている。おそらく予算案の成立以降、それらが「財源確保法案」のなかで一気に表面化してくるのだと思います。
飯田)積極財政派と財政再建派の衝突。
須田)野党も増税については批判的なので、日銀総裁人事をめぐっては、それも透けて見えてきてしまう。積極財政派も金融緩和を後退させるような総裁案が出てきたら、一斉に反発していたはずなのです。
飯田)金融緩和を後退させるような人事案であれば。
須田)逆に財政再建派も、あからさまに金融緩和を継続するというのは、アベノミクスの3本の矢の1つであり重要な背骨なので、「それを否定するような人が出てきて欲しい」という構えもありました。しかし、そちらに軸足を移してしまうと、今度はこちらが立たないというような状況になってしまいます。配慮に配慮を重ねた政治的な人事だったと思います。
「政治的思惑だけで日銀総裁を選んでいいのか」という疑問は残る
飯田)そこで白羽の矢が立ったのが、植田さんだった。
須田)ニュートラルでもあり、学者という点でも収まりがいいですよね。
飯田)いままでであれば日銀から出るか、財務省から出るかというたすき掛け人事でした。
須田)政治的にどのようなカラーが付いているのか、過去の言動から窺えるような人にしてしまったら、いろいろな意味で火種を残すことになります。
飯田)過去の言動などから。
須田)岸田さんが総理になったときに、「人事がやりたい」と言っていろいろ揶揄されたけれども、今回の人事に関して言うと、岸田さんの思惑通りの人事ではないかと思います。ただし、これは皮肉ですよ。自分がどのようなメッセージを出して、どのような政策をやりたいのかという点がまったく見えないため、「政治的思惑だけで人を選んでいいのかな」という疑問は残ります。
飯田)この先の日本経済をどうしたいのか、キシダノミクス的なものを何か打ち出したいのかと考えても、そのようなところが見えてこない。
須田)政治的に揉めないことを最優先したとすると、この日銀総裁人事がいちばん象徴的です。今回の国会運営も、立憲民主党が攻め手を見つけられなかったとか、維新との共闘を最優先にしたからスムーズな国会運営になっているということよりも、野党が攻撃を仕掛けてくるような、あるいは政治争点になりそうなものについて「ベタ降り」しているのが実態ではないかと思います。
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