「20%奪取」「-35%成長」「40%破壊」「26万人被害」 ロシアとウクライナの戦いにおける「4つのデータ」

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地政学・戦略学者の奥山真司が2月28日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。米イエレン財務長官のウクライナ訪問について解説した。

「20%奪取」「-35%成長」「40%破壊」「26万人被害」 ロシアとウクライナの戦いにおける「4つのデータ」

【ウクライナ侵略1年】ロシア軍の砲撃を受けたウクライナ東部ハリコフ州で、ロシアが撃ち込んだロケット弾などが戦争犯罪を記録、証明するため集積所に保管されている=2023年2月17日午前、ウクライナ・ハリコフ 写真提供:産経新聞社

アメリカのイエレン財務長官がウクライナのキーウを電撃訪問 ~支援継続を再表明

アメリカのイエレン財務長官は2月27日、ウクライナの首都キーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領らと会談した。ロシアによる全面侵攻が2年目に入るなか、ウクライナに対するアメリカの支援を改めて確認した。イエレン氏はG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれたインドのベンガルールからウクライナを訪問した。

ロシアとウクライナの戦争を早く終わらせて、中国への対策にシフトしたいアメリカ ~ウクライナに成果を出させて停戦の交渉へ

新行)バイデン大統領による訪問から1週間後ですけれども、どうご覧になりますか?

奥山)報道ベースでも出てきているのですが、ワシントン界隈で囁かれているのは、アメリカはウクライナとロシアの戦争が終わったあと「戦後の状況をどうするか」も含めて、イエレンさんが入ったのだと言えるのではないでしょうか。

新行)戦後の状況をどうするか。

奥山)アメリカとしては、この戦争を早く終わらせてもらい、中国への対策に向けるというコンセンサスがあるようです。

新行)中国へシフトすると。

奥山)おそらくアメリカとしては、クリミア半島を取り戻すなど、ウクライナに何か成果が出ることによって、「停戦交渉に入ろう」というところを狙っているのだと思います。

ウクライナへ電撃訪問した米バイデン大統領 ~一方で情報が漏れ、訪問できていない岸田総理

新行)岸田総理の訪問という報道もありましたけれど、こちらについてはどうご覧になりますか?

奥山)リークによって予定していた訪問の安全が確保できなくなり、行けなかった。そして、そのすぐあとにアメリカのバイデン大統領が行ったではないですか。「面目丸潰れ」と言う人たちもいますが、アメリカは常に戦争している国なので、「リーダーを運ぶには安全対策しなければならない」という安全に対する意識の差があるのだと思います。

新行)日本とアメリカの。

奥山)我々はアメリカのように戦争をしている国ではありませんから、「トップの身を守る」というところに意識がいかない部分があったのでしょう。残念ですね。

新行)そうですね。

奥山)日本としては、先進国にとってのヒーローでもあるゼレンスキーさんと写真を撮って、「一緒に連携していますよ。我々はウクライナを支えます」という画だけでも欲しかったですね。

新行)林外務大臣が国会を優先して、G20外相会合への出席を断念したという報道もありました。

奥山)日本では、例えばゼレンスキー大統領とのツーショットを撮影しても、「ただ写真を撮るだけではないか」と批判されがちです。「花よりも実を取れ」というようなことを言いますが、実際は花の部分である写真を一緒に撮ることは極めて大事です。外に向けて発信するパフォーマンスは必要です。

ロシアとウクライナの戦いにおける「4つのデータ」

新行)ロシアによるウクライナ侵略から1年が経過しましたが、ここまでの1年についてはどうご覧になりますか?

奥山)いろいろデータが出ていますが、私自身が注目しているのは、ハーバード大学のグレアム・アリソン教授によるものです。彼はロシアとウクライナの戦いをすべてレポートカードにして、データ化しているのです。「こういう事実がある」ということをパーセンテージで調べているのですが、そのなかで4つの興味深いデータがあります。

ウクライナがこれまでロシアに奪われた領土は全体の20%

奥山)1点目ですが、2014年にまずクリミアへ侵攻されました。その時点から始まり、ロシアに奪われた領土はウクライナ全体の約20%というデータが出ています。

新行)約20%ですか。

奥山)日本に置き換えると、北海道を全部奪われたことになります。もしくは、九州プラス四国くらい。沖縄も含めて、それくらい獲られてしまったら怒りますよね。それを獲り返そうというウクライナ側の事情はわかります。

経済の成長率はマイナス35% ~破壊されたエネルギーインフラは国内の40%

奥山)2点目に、戦争が始まってからウクライナ経済はマイナス35%となっています。ダメージが大きいですね。3つ目は、変電所や原子力発電所を攻撃、占領されていますが、国内約40%のエネルギーインフラが破壊されているということです。

第二次世界大戦後の国家間戦争で最大レベルの犠牲者が出ている ~両軍合わせて約26万人の被害

奥山)4つ目は、ロシアとウクライナで13万人以上の被害がお互いに出ている。これは戦闘員、軍人だけです。合計で約26万人ですので、第二次世界大戦後に起こった国家間戦争のなかでは、ほぼ最大レベルです。劇的に大きい戦いになっているということです。

制裁を受けているにも関わらず、ロシア経済はわずか「マイナス2.3%」

新行)ロシア国内はどうなのでしょうか?

奥山)ロシア国内としては経済が意外によくて、このレポートカードにも出ていますが、たったマイナス2.3%です。かなりうまく順応していて、経済制裁の影響をあまり受けていない。私としては悔しいのですが、ロシア側が「うまくやっている」ということが見えてきます。

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