更地になるまで徹底的に攻撃 プーチン大統領のイメージは「第2次チェチェン紛争」

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慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一氏が2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月18日にドイツ・ミュンヘンで行われたG7外相会合について解説した。

更地になるまで徹底的に攻撃 プーチン大統領のイメージは「第2次チェチェン紛争」

モスクワのクレムリンで、ベラルーシ大統領との共同記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ) AFP=時事 写真提供:時事通信

G7外相会合、ロシア制裁の維持と強化で一致

ロシアによるウクライナ侵略から間もなく1年となるのを前に、日本が議長国を務める2023年最初の先進7ヵ国(G7)外相会合が2月18日、ドイツのミュンヘンで行われた。ウクライナ支援とロシアへの制裁を継続する方針を確認した。

侵攻から1年を迎える段階で成果を国民にアピールしたいプーチン大統領 ~東部・バフムトで激しい攻撃を仕掛ける

飯田)ロシアによるウクライナ侵略から1年となりました。この間の世論の動きなども含めて、どうご覧になっていますか?

細谷)いまウクライナ東部バフムトで、ロシアがかなり激しい攻撃を仕掛けています。1年間、大きな戦果がないということで、一部動員を始めてから国内でもかなり不満が深まっており、侵攻から1年を迎える段階で何がなんでも成果を国民にアピールしたいのです。

飯田)ロシア国民に。

細谷)この1年間、膠着状態にあるなかで、プーチン大統領としても国内的にも苦しい状況にある。言い換えると、ウクライナも激しいロシアの攻撃による地上戦で苦しんでいます。そのような重要な局面をいま迎えているのだと思います。

「ウクライナが負けないようにする」「ロシアが戦術核を使わないようエスカレートさせない」 ~矛盾した2つの条件を満たさなければならないNATO

飯田)欧米からは戦車の供与が行われ、ウクライナのゼレンスキー大統領は「戦闘機も欲しい」と言っていますが、支援のあり様はいかがでしょうか?

細谷)隠れる場所のない激しい地上戦を行っているので、戦車が有効になります。とりわけ、ドイツが供与を決定した「レオパルト2」は装甲が優れており、しかも射程が長いので、投入されれば地上戦は圧倒的にウクライナ有利となります。そのようなところから、ロシアとしてはレオパルト2のような最新兵器の戦車の導入を阻止したかったのです。

飯田)ロシアは阻止したかった。

細谷)現在2つの前提条件があります。まずはウクライナが負けないようにすること。あとは、ロシアが戦術核を使わないようにエスカレートさせないことです。NATO側は矛盾した2つの条件を満たさなければならず、天秤にかけるような難しい支援を続けていると思います。

プーチン大統領が戦術核を使う可能性はあるのか

ジャーナリスト・須田慎一郎)ロシアの戦術核使用に関して、リスクはどの程度あると思われますか?

細谷)常にリスクは高い段階にあるのですが、ロシアも戦術核を使ったあとに西側、NATOがどのように出るのかは見えていません。もしかしたら報復として、NATOが大量に通常兵器による攻撃を仕掛けてくるかも知れない。場合によっては、核に対して核の報復を仕掛けてくるかも知れません。そうなると、ロシアは一気に敗北に向かいます。

飯田)NATOの反撃によって。

細谷)プーチン大統領がいつ戦術核を使ってもおかしくはありませんが、一方では、使った場合の報復が怖いというのが実情だと思います。

第2次チェチェン紛争のように更地になるまで攻撃しようとするプーチン大統領 ~一般市民を攻撃し「戦争の悲惨さ」を伝え「だからやめなければならない」と思わせる

飯田)今後の停戦の機運は、まだ見えないでしょうか?

細谷)ほとんど見えませんね。プーチン大統領のいまのイメージは、1999年~2009年の第2次チェチェン紛争なのです。この戦争により、チェチェン共和国の首都グロズヌイは徹底的に破壊され、いまはほとんど更地になってしまっています。それと同じことをやり始めているのです。

飯田)第2次チェチェン紛争と同じことを。

細谷)精密誘導ミサイルなどの最新兵器もなくなってきたということで、ロシアは一般市民などの非戦闘員に対して攻撃を続けています。その模様が映像などによって流されると、「戦争は悲惨だ」ということが伝わり、「だからやめなければいけない」という風潮に持っていこうとしているのです。

飯田)戦争は悲惨だからやめなければならない、と。

細谷)もう一方では、「悪いのはアメリカやウクライナだ」というプロパガンダを続けることにより、国際社会を「早く戦争をやめた方がいい」という雰囲気に持ち込み、ウクライナへの支援をやめさせることがプーチン大統領の戦略だと思います。

ロシアの国際法を無視した侵略を阻止することがG7の一致した見解 ~まずは「ロシアを勝たせない」ことが最も重要なテーマ

飯田)そうなってしまうと、今度は力による現状変更が大手を振ってまかり通る世界になってしまいかねません。

細谷)今年(2023年)、まずは軽井沢でG7外相会談がありますが、岸田総理や林外相も繰り返し、「法の支配に基づく国際秩序を壊してはならない」と言っています。あの状況が認められてしまうと、それがきっかけとなって次々に国際社会の信用が崩壊し、アジアもそうですが、いろいろな国が現状変更するようになっていきます。

飯田)力による現状変更を許してしまうと。

細谷)それを阻止する、つまりロシアによる国際法を無視した侵略の阻止を何としてでも成功させたいということが、G7で一致した見解だと言えるのではないでしょうか。

飯田)国際秩序や価値観の再定義・再構築、あるいは国連の組織見直しというところまで及ぶでしょうか?

細谷)まずは「ロシアを勝たせない」ことが最も重要なテーマですが、同時にいまおっしゃった通り、国際社会にはさまざまな矛盾があります。その矛盾をどのように正していくかということも、おそらくこれから同時並行で議論されるでしょう。このような侵略を、より阻止できるような枠組みが必要になってくると思います。

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