ロシアとウクライナの戦いが終わらない「理由」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月24日で1年となるロシアのウクライナ侵略について解説した。
ロシアによるウクライナ侵略から1年、バイデン大統領がポーランドで演説
飯田)ロシアによるウクライナ侵略から1年となり、21日にはバイデン大統領がポーランドで演説しました。あれから1年経つのですね。
長編動画の流れでロシアのウクライナ侵略を見るべき ~アメリカがインド太平洋地域に引きずられた隙間をロシアが突いた
宮家)国際情勢は静止画ではなく、動画だと思うのです。長編動画の長い流れがあって、我々は毎日、その国際情勢の流れの一断面を静止画として切り取っているわけです。でも、それは間違いだと思います。
飯田)静止画を切り取ることは。
宮家)動画で見ていて何が起きたかといえば、最近は米中露という世界の3大強国の力関係において、中国が上がり、ロシアが落ちてきた。アメリカは昔ほどの力はないけれども、アメリカの主要な敵はソ連からテロリストになり、いまや中国になっているという現実があります。
ロシアのウクライナ侵略が始まったのは2014年から
宮家)そのなかでアメリカがインド太平洋地域に引きずられていき、中東や欧州で隙間、力の真空ができた。「そこを突きに行ったのがロシアだ」という流れで見た場合、ウクライナ戦争というのは、去年(2022年)始まったわけではないことが分かります。
飯田)ロシアのウクライナ侵略は。
宮家)始まったのは2014年です。去年始まったのは何かと言うと、ロシアによる正規軍の侵略が始まっただけの話で、非正規軍による攻撃は既に9年前から行われているのです。
消耗戦に持ち込もうとしているロシア
宮家)静止画で見るよりも、動画という流れで見なければいけないのではないでしょうか。ウクライナ戦争がこれからどうなるかと言うと、基本的な力関係が変わっていないのですから、明日終わるわけがないのです。
飯田)この戦争が。
宮家)ロシアは消耗戦に持ち込み、隣国であり人口も国力も劣るウクライナを、時間を掛けて制圧できると考えているのです。
飯田)時間を掛けて。
宮家)当初は電撃戦から始まり、できることは全部試したけれど失敗してしまった。あとは時間を掛ける消耗戦しか方法がないのです。
早い段階で終結に持っていきたいアメリカ
宮家)アメリカは、消耗戦で時間を掛けられたらウクライナが持たなくなるとわかっているので、早い段階で終結に持っていきたいと考える。そのためには、ロシアの過剰反応は心配だけれど、最新兵器を入れて、ある程度ウクライナに有利な形勢にしなければなりません。ロシアは核の脅しをしているわけですよね。
飯田)使うぞと言っている。
宮家)個人的には使えないと思いますが、絶対に使えないという保証もありません。そのようなせめぎ合いのなかで、今後1~2ヵ月の間にロシアがどんな攻勢に転じるのか。あるいは、アメリカが戦闘機の導入も含めて更に支援を強化するかどうか、これらを流れのなかで見なければいけないと思います。
飯田)その流れのなかで。
宮家)昨年から「1年経ったからどうした」と分析するのは、静止画を見ている人たちに任せるけれども、私は長編動画としてもう少し先を読むことを考えなければいけないと思います。
この戦いはすぐには終わらない
飯田)クリミアやドンバス東部への非正規軍による侵攻から始まれば、9年と考えられる。9年行われたのならば、向こう9年続いてもおかしくないような流れですか?
宮家)2014年の「マイダン革命」でロシアが態度を硬化させたわけですからね。その問題が変わらなければ、ロシアは戦争をやめません。プーチン大統領がいなくなれば話は別ですけれど、いまのところ、いなくなるとはとても思えません。
飯田)任期だけで考えると、2036年まで続投できます。
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