ジャーナリストの佐々木俊尚が3月1日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。2022年の出生数が80万人を割った日本の少子化問題について解説した。
2022年の出生数が初の80万人割れ
新行)昨年(2022年)の出生数が初めて80万人を割りました。
佐々木)これは難しい問題です。岸田首相が「異次元の少子化対策」と言って、子育て世帯を支援しようとしていますが、どこまで効果があるのでしょうか。
結婚したカップルが「子どもを産むか産まないか」で悩んでいるわけではない ~給料が安すぎて結婚できない「アンダークラス」の人が多い
佐々木)なぜ少子化が進んでいるのかと言うと、いくつかの要因があります。まず日本の場合、結婚したカップルが「子どもを産むか産まないか」で悩んでいるわけではなく、多くの場合、前提である結婚までいきつかないのです。
新行)結婚できない。
佐々木)給料が安すぎて結婚できない。非正規雇用が増え、アンダークラスと言われるような年収200万円以下の層が1000万人近くいるという話もあります。そういう状況で結婚できるかと考えたら、できません。そのなかで「子どもを産む」という選択肢はあり得ないという問題が、まず1つです。
収入の高い「パワーカップル」でなければ2人以上の子どもは育てられない
佐々木)もう1つは、「都市化が進むと子どもを産まなくなるのではないか」という話があります。ヨーロッパは日本に比べて出生率が高いと言われていたのですが、実は移民の影響が大きかったことが後々わかってきて、結果的にいま出生率全体が、日本と同じくらいにまで下がってきています。
新行)都市化が進むと子どもを産まなくなる。
佐々木)ある程度工業化が進んで都市住民が増え、安定したミドルクラスが増えてきた国は、軒並み出生率が下がるという傾向が世界的に起きているのです。その状況のなかで、どのように「子どもを産んでくれ」と言うのかということです。
新行)なるほど。
佐々木)昔、農村の人口が多かった時代は、子どもを産むのは「働き手を増やす」という意味がありました。「貧乏子だくさん」という言葉も昔はあったではないですか。でも都市化が進むと、貧乏子だくさんはあり得ない。両親が会社員であれば、産んでも働き手にならないですよね。会社員がアッパーミドルな生活を維持しようとすると、教育費にお金を掛けたくない。
新行)箱崎アナウンサーは、2人のお子さんのお母さんです。
箱崎みどりアナウンサー)学費以外にも、いろいろなものにお金が掛かります。すぐに大きくなってしまうので、服や靴も買い換えないといけませんし。
佐々木)ランドセルも10万円くらいして、高いですものね。そう考えると、収入が多くなければ子どもが産めないという問題があります。
新行)お金がなければ子どもを産めない。
佐々木)周囲を見ていると、子どもを多く産んでいるのは、みんなパワーカップルですよ。大企業勤務の夫婦や弁護士夫婦、経営者夫婦など。「金持ち子だくさん」の時代なのです。そこまでの原資がないと、子どもが産めない時代になってきています。
「出生率を2.5人まで増やす」のは現状では無理 ~人口減ならば、AIに仕事をしてもらえばいい
佐々木)そういう状況を考えると、もちろん子どもを実際に育てようとしている夫婦を支援することは大事ですが、抜本的な解決策として「出生率を2.5人まで増やす」というのは無理ではないかと、個人的には思います。
新行)出生率を2.5人まで増やすことは。
佐々木)いまの状況で無理やり「産めよ増やせよ」と言うよりも、人口減になっても成立する経済や産業の仕組みを考えた方が、よりベターなのではないかと思うのです。
新行)ロボットやAIなどですか?
佐々木)AIなどを駆使する。「子どもが減って人口減だ」と大騒ぎする一方で、「AIに仕事が奪われてしまう」などと言うではないですか。なぜその2つが別々に議論されているのかということです。ロジックとしては「人口減ならば、AIに仕事をしてもらえばいいではないか」という意見も成立するわけです。そういう時代になってきているのではないかと思いますね。
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