数量政策学者の高橋洋一が3月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年同月比4.1%減となった1月の実質賃金について解説した。
1月の実質賃金4.1%減 ~物価上昇に賃金の伸びが追いつかない
飯田)3月7日、厚生労働省が1月分の毎月勤労統計調査を出しました。従業員5人以上の事業所3万余りを対象に行っている統計ですが、速報値によると今年(2023年)1月の賃金、物価の変動を反映した実質賃金は、去年(2022年)1月に比べて4.1%減少しています。名目の部分は上がっているのですが、それ以上に物価が上がっていると言われています。
高橋)追いつかないのですね。名目が少し上がるのは、コストプッシュの話があるので上がるのでしょうけれど、本格的に上がらないのは、そもそも失業率が最低まで下がらないからです。
飯田)なるほど。
失業率が2%前半までいくと名目賃金が上がり、物価を追い抜くことができる ~現状では雇用の方が弱い
高橋)失業率が最低まで下がれば、名目は必ず物価を追い越すのです。事実上3%に近いですからね。そうすると、なかなか名目は本格的に上がらず、全般的に上がりにくいです。
飯田)全般的に上がりにくい。
高橋)失業率が2%前半くらいまでいくと、「コツン」という感じがします。そういう音がすると、そこから名目賃金が上がって、物価を追い抜くのです。それがまだないので、物価の方が強い。雇用の方が弱いと読むのです。
飯田)雇用の方が弱い。
高橋)賃金が上がりにくいということです。アメリカのような状況まで進めば、本当に上がるのですよ。
飯田)なるほど。
現状はまだ失業率がボトムまで届いていないので賃金が上がらない
高橋)まだ底までいっていないから。
飯田)まだボトムまではいっていないのですね。
高橋)ですから、政策は失業率を見ておくとわかりやすいのです。
飯田)それでは経営者に対して「賃上げしろ」と言っても、なかなか聞きませんよね。
高橋)経営者から見れば、失業者がいるのだから安く雇えてしまうではないですか。賃上げする必要がないのです。必要があれば、正規の人ではなく「他に働きたい人がいるから、そこで対応しますよ」と言えば、終わりではないですか。
飯田)実際にそれをここ20年くらいやってきたわけですからね。
失業率を2.3%くらいまで下げた安倍政権 ~コロナ禍にならなければ半年後には賃金が上がったはず
高橋)そうです。いつまでも「実質賃金が」などと言って、失業率をみてもいちばん下までは下がらないだろうと。いちばん下まで下げたのは、実は安倍政権のときだけです。
飯田)安倍政権のときだけ。
高橋)あのときに下がって、私は「あと半年くらい経てば、すぐに賃金が上がり出しますよ」と安倍さんに言ったのです。それなのに、コロナ禍になってしまいました。
飯田)コロナ禍に。
高橋)コロナ禍の前は、2.3%くらいまでいったでしょう?
飯田)失業率2.3%。
高橋)いい調子だったのです。それがコロナ禍で、結果的にすべて飛んでしまいました。そうでなければ、おそらく半年以内に急速に賃金が上がったと思います。
新体制になる日銀
飯田)今週にも衆院で採決、衆参両院で採決されれば、日銀が新体制になります。
高橋)決まるでしょうね。
飯田)この先の舵取りに関して、アメリカでは物価が高くなり、「引き締めが」という数字が出ています。そのなかで、本来はいまの路線を続けていけばいいと思うのですが、政治的にはどうでしょうか?
高橋)最低の失業率の話を「いくつですか」と、日銀次期総裁の植田和男さんに聞かなくてはなりません。植田さんは専門家なのですから、必ず答えなくてはならない。経済学者なら即答するはずです。逆に言うと、失業率がそこまでいかない見通しであれば、緩和だとすぐにわかります。
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