フィリピンでマルコス大統領・韓国で尹大統領が登場したことが示す、東アジア・インド太平洋地域の「変化」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フィリピン・マルコス政権とアメリカの関係改善について解説した。

フィリピンでマルコス大統領・韓国で尹大統領が登場したことが示す、東アジア・インド太平洋地域の「変化」

日・フィリピン共同記者発表を行うマルコス大統領=2023年2月9日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

これまでのフィリピンとアメリカの関係

飯田)宮家さんはフィリピン、マレーシア等々の出張から帰国されて間もないということですが、実際にご覧になられて、どう思われましたか?

基地の使用期限を延長する条約をフィリピン上院が否決しアメリカ軍が撤退 ~南シナ海に力の真空ができ、中国が人工島をつくる

宮家)初めてフィリピンへ行ったのは1988年でした。スービックという米海軍基地に行って、「アメリカ海軍のプレゼンスが南シナ海の安定に寄与しているのだな」と実感した次第です。

飯田)かつての。

宮家)しかし、1991年にピナツボ火山が爆発して、クラーク空軍基地が使えなくなってしまった。当時のフィリピンは反米だったので、フィリピンの上院がアメリカに対して基地を提供する協定があるのだけれど、その協定の期限が切れてしまい、更新するべきところを更新しなかった。その結果、米軍が撤退しました。南シナ海に力の真空ができ、そこを中国が埋めて、埋めるついでに岩も埋め立てて人工島をつくった……という流れなのですね。

ドゥテルテ政権からマルコス政権になり、現実的な対応に向かうフィリピン

宮家)物事を静止画ではなく動画として考えた場合、長い歴史のなかで1991年の動きは決定的な要素だったと思うのです。今回、実際にマニラで感じましたが、前のドゥテルテさんの時代はよきにつけ悪きにつけ、フィリピンのナショナリズムの時代ですよね。フィリピンも昔は植民地だったのですから、アメリカに対する気持ちは尋常ではないわけですよ。

飯田)ウェルカム一色ではないですね。

宮家)そのドゥテルテさんの時代が終わり、マルコスさんは現実的な対応をしています。

中国の圧力が強くなり、フィリピンではマルコス大統領、韓国では尹大統領が誕生 ~フィリピンで米軍が使用できる基地は9ヵ所に

宮家)たまたまかも知れませんが、フィリピンでマルコスさんが出てきただけではなく、韓国では保守系の尹大統領が出てきた。そして、中国の圧力が高まっています。

飯田)韓国では尹大統領が出てきた。

宮家)全体として見た場合、東アジアもしくはインド太平洋地域の安全保障環境が悪くなっている。それに対して、いままでのように「夢のようなことを言っていても仕方ないから、現実的に考えるしかない」という動きが、フィリピンでも韓国でも出てきているのです。

飯田)なるほど。

宮家)その一環として、マルコス政権はアメリカとの関係を改善しようとしています。いまはアメリカの基地はないけれども、米軍がフィリピン国内で使える基地を4ヵ所増やし、9ヵ所が使えるようになった。台湾の南はフィリピンですからね。その意味では、アメリカの抑止力を高めるという点で効果があるだろうと思います。

飯田)フィリピン・マルコス政権としても、現実的に対応しなければならない。

マルコス大統領がアメリカとの関係を改善することは重要な政策 ~日・米・フィリピンの協力も進む

宮家)ドゥテルテさんが非現実だったわけではありません。彼も中国に対しては厳しかった。しかし、中国にはとても敵わないから、少し躊躇した部分はある。

飯田)ドゥテルテさんは。

宮家)しかしマルコスさんは、そこを踏み越えたのだと思います。アメリカとの関係を改善するのは重要な政策です。そして、日・米・フィリピンの協力もこれから進んでいく可能性があり、非常に勉強になりました。

飯田)やはり環境が変わると、周りの国々の対応も変わらざるを得ない。

宮家)変わらざるを得ないですし、よい方向に変わることを祈っています。

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