県知事がリニア中央新幹線工事に難色を示す「静岡の事情」

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地政学・戦略学者の奥山真司が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。リニア中央新幹線の静岡工区の問題について解説した。

県知事がリニア中央新幹線工事に難色を示す「静岡の事情」

リニア問題で「南アトンネル工事は現状では認められない」とした川勝平太知事=2022年1月26日、県庁 写真提供:産経新聞社

JR東海の新社長が静岡県知事と12日に面会へ

4月1日に就任したJR東海の丹羽俊介新社長が、4月12日に静岡県庁で川勝県知事と面会することがわかった。川勝氏が着工に難色を示しているリニア中央新幹線静岡工区工事に関し、意見を交わすとみられる。

飯田)リニアの静岡工区の問題は、大井川の水量減少の懸念や、ボーリングを行うと山梨県に水が流れるのではないかなど、「本当か?」というような話も出ています。

バイパスができて街を通過されると買い物客もいなくなってしまう ~リニアができても通過されてしまう静岡

奥山)これは通り道の話ですよね。まさに私が研究している古典地政学によく出てくる話です。

飯田)古典地政学に。

奥山)通り道が変わると産業構造が変わるのはよくあることです。1つの街があって、その街の郊外にバイパスができるとします。いままでは街中を通って渋滞になっていたけれど、車が通るのでそこで買い物をしてくれる人がいた。でもバイパスを通されてしまうと、もう車で通らなくなってしまうのです。

飯田)バイパスによって通りすぎてしまう。

奥山)今回の静岡のパターンもそれに近いものがあります。新幹線でさえもすべてが止まってくれたわけではないのに、「リニアで一気に通過されてしまうと困る」と難色を示しているのは、気持ちとしてはわからなくもありません。

飯田)リニア中央新幹線は通過してしまうと。

バイパスによって衣笠通りに人が来なくなった横須賀の例

奥山)同じような構図が、私の地元の横須賀でもありました。横須賀インターから衣笠インターへ南北に続く、久里浜田浦線というバイパスがあります。できたのは2007年ごろなのですが、その結果、衣笠通り沿いの交通量が少なくなってしまいました。

飯田)バイパスができたために。

奥山)渋滞が解消されるのはいいのですが、衣笠通り側に車が通らないので、「商売上がったり」になってしまうのです。

飯田)あそこには大きな商店街がありましたね。

奥山)あるのですが、そこに人が来なくなってしまった。ミクロな例で申し訳ないのですが、バイパスなどができてしまうと、人も通過してしまいます。

飯田)バイパス側の方には大きなお店などができて、経済の重心が変わる。

奥山)そうですね。地元の人にとっては、冗談でなく自分の商売にも関わる問題です。静岡はまさにバイパスをつくられてしまった側の話につながります。静岡側が「リニアは通過するだけでしょう。それはやめてくれ」と言いたくなるのは痛いほどわかります。

通りが変わると産業構造が変わる

飯田)水の話などもありますが、条件闘争になっていくのかどうか。しかし私企業がやっていることなので、それほどお金も出せないという話にもなる。

奥山)通り道が変わると産業構造が変わることは、我々は覚えておかなくてはいけないところです。商売において、いかに人通りをこちら側につけるかは致命的な条件になってきます。

飯田)鉄道ファンとしても、これによって在来線がどうなるのかなども含めて気になります。

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