ウクライナにミグ29を供与するポーランドの「他人事ではない事情」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ・ゼレンスキー大統領とポーランド・ドゥダ大統領の会談について解説した。

ウクライナにミグ29を供与するポーランドの「他人事ではない事情」

ミグ29

ポーランドが戦闘機「ミグ29」の追加供与でウクライナと合意

ウクライナのゼレンスキー大統領は4月5日、訪問先のポーランドでドゥダ大統領らと会談し、戦闘機「ミグ29」の追加供与を受けることなどで合意した。

飯田)ロシアによるウクライナ侵略が始まってから、ゼレンスキー大統領が国外に出たのは珍しいですね。

NATO・欧州のなかでも温度差 ~3つに分かれる

宮家)そうですね。ポーランドが戦闘機ミグを追加供与するそうですが、大きなピクチャーから言うと、まずNATO・欧州のなかでも温度差があります。

飯田)温度差がある。

怖くて仕方ないポーランドなどのロシアに近い国々

宮家)ロシアに近い国は、ロシアにいつやられるかわからないので、怖いわけです。ウクライナもそうですが、バルト三国やポーランドなどは何とかロシアと距離を置きたい。ロシアがウクライナに入ったのなら、ポーランドは「次は俺たちだ」と思いますから。

飯田)隣ですものね。

宮家)ポーランドは「とんでもない」ということで、ウクライナを強く支援しています。そういう国々がドイツに挟まれた東欧諸国には多いのです。

飯田)ロシアに近い国々。

隣国ではないフランス、ドイツ、イタリア

宮家)もう1つは、フランス、ドイツ、イタリアでしょうか。これらの大陸国家は、どちらかと言うとロシアは怖いけれども、フランスなどはドイツも怖いと思っています。歴史て見に見ても、ロシアに対しては、批判したり仲よくしたりを繰り返しているわけです。陸続きの国境を隔てた「隣」ではないから少し余裕がある。その分、ロシアに対する反発や批判は強くありません。

デンマークやイギリスなどの海洋国家

宮家)3つ目のグループは、北欧、デンマークやイギリスなど、いわゆる海洋国家です。NATOということで言えばアメリカ、カナダもです。

飯田)海洋国家。

宮家)この国々は、ヨーロッパ大陸とは別の意味で、海洋国家として大陸でのロシアの拡大を恐れています。このようにNATOには少なくとも3つのグループがあって、それぞれ微妙に温度差がある。

ウクライナを勝たせたいポーランド ~戦車に続き戦闘機ミグ29を供与

宮家)そのなかでポーランドは最初のグループですから、やはりロシアに対してはとても厳しい。

飯田)ポーランドは。

宮家)いまは戦闘機のことが問題になっていますが、その前はレオパルトなど戦車の話もありましたよね。それもポーランドは率先しているはずです。なぜかと言うと、ウクライナに負けて欲しくないからです。

アメリカにF16を出すよう仕向けるポーランド

宮家)そうなると次は、ウクライナを勝たせるためにはどうしたらいいか考えるわけです。戦車など装甲の強い車両を供与するだけだと戦争には勝てない、航空優勢を取るためには戦闘機が必要になります。本音から言えば、ウクライナはF16が欲しいわけです。

飯田)アメリカの。

宮家)本当はF22が欲しいのかも知れないけれど、出すわけがないですし、F35も出しませんよ。

飯田)最新鋭のステルス戦闘機。

宮家)墜落して取られたらどうするのですか。

飯田)まる裸になってしまいますね。

宮家)そう簡単には出せません。でもF16は……。

飯田)冷戦期からある。

宮家)昔からあり、対地攻撃ができます。そういう意味では、F16ならば入れてもいいのではないかということでしょう。しかし、あまり早く入れると、ロシアがどうバックファイアするかわかりません。また核で脅してくるに決まっています。

飯田)そうですね。

宮家)ロシアが核を使えば、戦争の結末は一瞬にして決まるのでしょうが、そう簡単に核をロシアが使えるとは思えません。やはり物事には順序がある。だからポーランドが最初にミグ29を出し、「アメリカさん、あなたもF16を出しなさいよ」と言っているわけです。ポーランドとウクライナ両国で。

飯田)プレッシャーを掛けると。

ロシアの大攻勢はあるのか ~守りに傾き始めている説も

宮家)ウクライナがそろそろ反転攻勢するのではないか、反撃態勢に入っているのではないかと言われています。

飯田)ウクライナが。

宮家)この冬の終わりから春にかけて、ロシアが大攻勢を仕掛けるのではないかと言われていました。「これでウクライナは終わりだ」と言った人もいるのですが、おっとどっこい、ウクライナも頑張っているわけです。

飯田)頑張っています。

宮家)そして、どうやらいくつかの地域では、ロシア軍が優勢の部分もあるかも知れませんが、少なくともロシアがドンバスを全部獲るような状況ではなさそうです。

飯田)そうですね。

宮家)ロソアの大攻勢については、いろいろな説がありますが、どうも不発に終わっている可能性が高い。いまの状況は攻める方から守る方に回り始めていると言われています。

飯田)ロシア側が。

戦車が実戦配備に入り、F16が供与されれば反転攻勢可能なウクライナ

宮家)ウクライナに数ヵ月前に到着し始めた新しいNATOの戦車も、そろそろ訓練が終わって実戦配備に入っていく。これでF16もしくはミグ29が来たら、ウクライナも本気で反転攻勢できるかも知れません。

飯田)ここで戦闘機が供与されれば。

宮家)そうなると今年(2023年)の夏辺りまでに、かなり大きな戦場での変化が起きる可能性があります。戦争は戦場で決まりますから、戦場の状況が変われば、大きな転機が訪れるかも知れません。

クリミア半島まで取り返さなければ終われないウクライナ

飯田)戦況が変わってくると、ウクライナ側からすれば、領土をすべて取り返さなければという意識になりますが。

宮家)ロシアがどの程度反発するかにもよりますが、いまの状況で反転攻勢に進めば、ウクライナはクリミアも取り返さなければならないと考えるでしょう。そこまでやらなければ終われないと思います。もちろん、この点についてはNATOのなかでも温度差がある。

飯田)なるほど。

宮家)そのなかで各国がどんな動きをするかが、この数ヵ月は極めて重要になるのではないでしょうか。

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