東日本大震災から12年。「浪江町の漁業のいま」について内田雄基アナウンサーが取材。3月10日のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」でレポートした。
試験操業のため、未だに十分な漁ができない
飯田)東日本大震災から12年が経過した、福島県浪江町の取り組みについてですが。
内田)浪江町の現実に目を向けると正直、明るい話題ばかりではありません。多核種除去設備(ALPS)処理水の問題などもありますが、いままであった産業が苦戦しているところもあり、その最たる例として漁業が挙げられます。
求められているときに出荷ができない
内田)浪江町の請戸港には、水産加工業者の柴栄水産という会社があります。こちらの柴強(しば・つよし)代表にお話を伺いました。処理水の問題以外にも、いまの浪江の漁業の問題点として、漁の操業日数の少なさを挙げていました。まだ試験操業が行われていて、現在も請戸港の漁船は1ヵ月に10日ほどしか漁に出られないのです。
飯田)自由に出ることができないのですよね。
内田)そうなると漁獲高も限られたものになります。柴代表は、「ヒラメなど請戸の漁は生きたまま獲る漁を行うので、鮮度が何よりも大事なのだ」と。「操業日数が理由で、お客様が求めているときに出荷できない。それがいちばんネックなのだ」と話されていました。国や県は販路の開拓はしてくれるけれども、結局「売る魚がなければどうしようもない」ということです。
飯田)揚がる魚が少ないから、加工所をつくったところでフル操業できないとなると、土地をつくっても進出してくる企業がない。結局、誰かがセンターピンを倒さないといけないのに、みんなで「どちらが先だ? 」と言っているような状況です。その部分が難しいのですよね。
浪江町の品質のよい魚を広めていきたい
内田)水産加工業者がないと漁師の方も成り立たないですし、いろいろな関係性もあります。漁師の方々が頑張っている状況を踏まえて、柴強代表に浪江の漁業を今後どうしていきたいか伺いました。
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浪江の魚のクオリティに適切な価格をつけたいけれど、つけられない苦しい現状
内田)浪江もそうですけれど、福島の魚は「常磐もの」と言われ、1つのブランド力もあります。私も道の駅でしらすを食べましたが、本当に美味しかったです。実際の魚のクオリティに対して「適切な価格をつけたいのだけれど、つけられない」という難しい心の内を語っていただきました。
飯田)根強く残る風評被害が価格を下げているのではないか、と言われていますからね。
処理水のことも含め、ポジティブに捉えて1つひとつクリアしていくしかない
内田)柴栄水産の柴代表の言葉で、私の心に残ったものがあります。原発事故から10年以上掛かりましたが、「事故直後の時期を乗り越えられたので、多少の小さな課題はその時期に比べたら、と感じる」と話していました。「10年近くネガティブな状況が続いていたので、もう悪い方向には考えたくない」と。さらに、「処理水のことも含めてポジティブに捉え、1つひとつクリアしていくしかない」とおっしゃっていました。
飯田)そうですよね。
内田)現在の試験操業から段階を1つずつ経て、元の状態に戻っていくのですけれど、販路があるのか、どれだけ漁獲高があるのか、漁師の方はどれだけの人数がいるのか、1つひとつ審査されてしまうのですね。
飯田)難しいのは、試験操業から通常の操業に戻っても、どこまで収入が出るのか。それよりは、試験操業のままで補償金をもらった方が、という考え方もあるのかも知れません。みんな生活があることを考えると、難しい状況が未だにある。加えて揚がった魚に対し、きちんとした値付けで評価してくれるならいいけれども、風評被害の影響もあるので、現場の方々は悩んでいますよね。
海の環境は豊かになっている
飯田)でも、これだけ美味しい魚ですからね。しかも試験操業で十分な量を獲っていないということは、海の環境はとても豊かになっているのです。
内田)柴栄水産の水槽の前で話を伺いましたけれども、そこで見たヒラメが座布団くらい大きいのですよ。
飯田)そんなに大きなヒラメがいる。もちろん全部モニタリングで放射線量などを調査し、安全なものが出されています。
内田)その説明もしっかりできるように努めていると話していました。
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