鉄道駅でのバリアフリー化は進むが、「ソフト面」が遅れる日本の問題
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ジャーナリストの須田慎一郎が3月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用して実施された首都圏のJRや私鉄の運賃値上げについて解説した。
「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、10円値上げ
JR東日本や東京メトロなど首都圏を走る8つの鉄道会社で3月18日、普通運賃が10円引き上げられた。バリアフリー化の財源を確保するため、利用者の負担を求めることができる「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用したもの。
飯田)3月18日に各社がダイヤ改正を行い、それに合わせて運賃も引き上げられました。
バリアフリー化は進んでいるが、ソフト面が欧米に遅れる日本 ~障害者や高齢の方々を助ける習慣が乏しい
須田)こういうインフラは利用客全員で広く負担するべきものであり、むしろ遅すぎたとも思います。欧米では皆さん、障害者や高齢者の方々に対して柔軟に対応しています。しかし、欧米でもすべての鉄道でバリアフリー化が進んでいるわけではありません。
飯田)バリアフリー化は。
須田)現状でも、むしろ日本の方がより充実しているのではないでしょうか。
飯田)ハード面の部分では。
須田)まさにハード面ではリードしていると思われるけれど、日本はソフト面がダメです。障害者や高齢者などの困っている人がいても、周囲の人が助けるという具体的なアクションが乏しいのです。「ソフト面をどう充実させていくか」がいま問われていると思います。「10円値上げしてハード面が充実したからいいではないか」では済まない問題だと思います。
単にバリアフリー化だけでは済まない問題 ~障害者の方の乗降によって起こった運行時間の遅延を許容できるのか
飯田)欧米だと車椅子を持ちあげて階段を上がるような光景がよく見られます。
須田)結論が出ているわけではないので、皆さんにも議論していただきたいのですが、例えばニューヨークでは公共バスに車椅子の障害者の方が乗ろうとしたら、皆さんで助けます。助けるけれど、乗降をめぐって相当な時間が掛かってしまいます。しかし、そのために起こった運行時間の遅延に対して、許容できる精神的な部分があるのです。
この先の社会に必要な「許容度」
須田)でも日本で同じことをした際、同様に運行時間の遅延を許容できるのか。その辺りを考えると、単にバリアフリー化だけでは済まない問題が横たわっていると思います。
飯田)確かにそうですね。障害をお持ちの方も、「申し訳ない」と言わなければならない雰囲気があると思います。昔、山田太一さんのドラマのなかで主役の鶴田浩二さんが、障害者の方に対して「『人に迷惑をかけるな』という社会が君たちを縛っている。私はむしろ堂々と、胸を張って迷惑をかける決心をすべきだと思った」とおっしゃっていました。そういう許容度がこの先の社会に必要なのかも知れませんね。
須田)障害者や高齢者の方々がいての社会だということです。そういう方々が存在しているから社会が成り立っているということを考えてみるべきだと思います。
飯田)ニッポン放送では「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」という目の不自由な方への基金を募るキャンペーン活動を行っていますので、これまでも目の不自由な方を取材する機会がありました。そのなかで、先天的あるいは後天的に目が不自由になる方も多いのですが、糖尿病などを患うと高齢になってから目が不自由になることもあり、「加齢と共に」進む場合が多いのです。他人事ではありませんよね。
須田)自分自身にも起こり得る問題です。
鉄道各社はバリアフリーの進捗状況を開示するべき
飯田)新宿区に住む“ヒデアさん”、67歳の自営業の方からです。「仕事でJRなどを利用するため、値上げを実感しました。バリアフリー料金を運賃に上乗せすると聞いているので、必ず実行して欲しいと思います」というメールをいただきました。また、埼玉県上尾市の“はるぞう”さん、52歳の方からは、「きのう、東京メトロ後楽園駅にて料金表を見て、値上げを実感しました。10円とは言え、日ごろ鉄道を毎日のように利用しているので、ボディーブローのように家計にもダメージを与えそうです」といただいています。ダメージの部分はもちろんあるわけですけれども。
須田)確実に実行して欲しいですね。「どういう進捗状況になっているのか」を、鉄道各社がわかりやすく開示する必要があると思います。
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