元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が3月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。公務員の定年延長の問題点について解説した。
公務員の定年、段階的に引き上げへ
定年延長のために改正した国家公務員法と地方公務員法が4月1日に施行される。原則60歳だった国家公務員と地方公務員の定年が、2023年度から段階的に引き上げられる。当初は61歳としたあと、2年ごとに1歳ずつ延長し、2031年度に定年を65歳とする。
飯田)段階的な引き上げがスタートしますが、どうご覧になりますか?
定年延長だけではなく、採用の仕方や処遇も含めて見直すべき
松井)私はこの法案には反対でした。定年を延長するのは時代の流れとして当然だと思います。ただ、定年延長だけで、本当に日本の公務員制度、あるいは公務員の方々を活性化できるかと言うと、それだけではダメだと思うのです。
飯田)定年延長だけでは。
松井)この法律はそこだけに手を付けているのです。いろいろな採用の仕方や処遇など、15年前に与野党で合意した「国家公務員制度改革基本法」があります。当時は(採用や処遇などを)セットにし、「そのなかで定年延長も認める方向で議論しよう」という話だったのです。しかし、今回は採用や処遇の在り方の見直しをせず、定年延長だけを進めています。
定年延長すると公務員の定数に60歳以上の人が増えて若い人の数が減ってしまう
松井)定年延長で何が起こるかと言うと、公務員は定員が決まっているわけです。そうすると、年齢的に上の層が定員を食うことになります。定員の食い方についてはいろいろ工夫されていますが、大まかに言うと「食ってしまう」わけです。定員をそのままにしておけば採用できなくなります。
飯田)若い人を入れられなくなってしまう。
地方自治体は「特例定員」に関する措置を条例で行わなければならない ~消防官や警察官の多くは地方公務員なので人が集まらなくなる
松井)どんどん職員が高齢化していきます。さすがに国の方は若い人の採用抑制にならないよう、特例定員の措置で時限的に定員をつけています。そういう形で国の方では新規採用ができるように工夫しているのですが、地方はそれを条例でやらなければいけないのですよ。
飯田)各々の自治体でつくらなければいけない。
松井)それが進まないので、これから地方自治体は若い人を採用できず、定年延長の方々が増えていくようなことになりかねません。
飯田)定年延長の人たちは一応、役職定年制度が導入されているから給料は下がってしまう。
松井)平社員に戻るけれども、定員は食うわけです。嘱託などを選択して定員を食わないというやり方もあるのですが、定員を食うというところも選択できるのです。
飯田)普通に定員のなかに入ることも選べる。
松井)そうなってくると、自衛官は国家公務員ですが、消防官や警察官の多くは地方公務員なので、人が集まらないのですよ。教員もそうですね。
飯田)若い人が。
松井)例えば自衛官に年齢の高い人たちがたくさんいても、軍としては成立しないわけです。定年延長は大事ですが、採用の仕方や処遇なども含めて考えていかなければなりません。トータルなパッケージで議論できていないことが大きな問題ですね。
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