「コスト9万円」中国ドローンを「コスト700万円」F15戦闘機で迎撃する日本 ~軍事ドローン開発に遅れた日本の「現実」

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安全保障アナリストで慶應義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。最新軍事ドローン事情について解説した。

「コスト9万円」中国ドローンを「コスト700万円」F15戦闘機で迎撃する日本 ~軍事ドローン開発に遅れた日本の「現実」

訓練に参加している石川県・小松基地飛行教導隊のF15戦闘機。後ろに見える垂直尾翼はインド空軍のスホイSu30戦闘機=2023年1月23日午前、茨城県の航空自衛隊百里基地 写真提供:産経新聞社

最新軍事ドローン事情

ロシアとウクライナの戦争で注目を浴びている軍事用ドローンだが、ストックホルム国際平和研究所によると、中国は過去10年間で282機の軍用ドローンを17ヵ国に納入し、世界トップの販売国になっている。一方、アメリカではドローン部隊創設の話題が出ている。

政治がリーダーシップを持ってドローンを十分使えるようにするべき ~中国は新しいデジタル産業のために新しい周波数帯を用意してきた

飯田)ドローンにおける周波数帯ですが、官僚の皆さんは電波法に従わなければならない部分があるのでしょうか?

部谷)そうなのですよね。だから官僚の方々を責めてはいけない。総務省も仕方なく規制しているところがあります。でも中国はそのために新しい周波数帯を用意してきたわけです。

飯田)そのために。

部谷)新しいデジタル産業のために。日本では、それを進めてこなかったツケが官僚に回されています。官僚に「責任を取らなくていいよ」と政治がリーダーシップを持って対応することが大事なのだと思います。

飯田)政治がリーダーシップを持って。

部谷)(電波法で出力が規制されているため)4キロ飛ぶことができるドローンでも、1キロ~数100メートルまで性能が低下するわけです。

飯田)本来だったらそのぐらい飛ばす性能があるのに。

部谷)パラボラアンテナで100Wの電波を送れば、100キロ飛ばすこともできます。でもそれを日本でやると、電波法に引っかかるので許可が必要になるのです。

ロシアやウクライナが使っているドローンをコントロールしているのはパナソニックのタブレット ~技術があるのに電波法のために下請けしかできず儲からない日本

部谷)それでは日本のドローンは売れません。ラジオで言うと、AMの2チャンネルしか聞こえないような状態です。そんなラジオを世界の人は買わないですよね。

飯田)しかも、我々は製造のスペックを持っているのに。

部谷)技術は持っている。ロシア軍のイスラエル製ドローンや、ウクライナ製ドローンを見ていると、パナソニックのタブレットでコントロールしているのです。

飯田)そうなのですね。もともとあるものを組み合わせて使える。

部谷)信頼性が高いので日本製品をたくさん使っているのですが、日本は下請けなので儲かりません。

飯田)本来であればもっとやれたはずなのに。

部谷)システムで儲かったはずです。

9万円のコストのドローンに350万円のコストのF15戦闘機2機で迎撃する日本

飯田)「軍用もの」と言うと「専門につくる」というイメージがあったけれど、そうではない。

部谷)完全に民生と軍事が対等になったわけではありませんが、再びもとに戻ってきている。「近代とはこうやって終わっていくのだな」と感じます。

飯田)中国軍やアメリカ軍などでも、民生品を組み合わせるような研究は進んでいるのですか?

部谷)すごく意識されています。例えば習近平氏は「小型ドローンが次の戦争の鍵だ」というような趣旨の発言をしています。

飯田)習近平国家主席が。

部谷)中国軍の軍人は「ドローン産業を軍事利用できるのがうちの国の強みだ」と言っています。実際、中国軍では多くの民生ドローンをフルスペックで使っています。日本の自衛隊のように「小型ドローンが1キロしか飛ばない」というようなことはありません。

飯田)電波法で規制されるようなことはない。

部谷)「防災用だからこれでいいのだ」と自衛隊は言いますが、「戦争で使う気がないのですね」という感想しかありません。

飯田)そういうことですよね。

部谷)公表されているだけでも、毎日のように無人機が尖閣諸島に来ているわけです。台湾には毎日来ています。米国防総省がデータを出していますが、映画『シン・ゴジラ』でゴジラを攻撃した「リーパー」というドローンがあります。あのコストがだいたい1時間あたり9万円です。中国が南西諸島に侵入させるドローンもほぼ同じ大きさなので約9万円、もしくはさらに安い可能性もあります。

飯田)1時間あたりのコストが。

部谷)自衛隊のF15は通常2機出ますが、1機あたり1時間で350万円のコストが掛かります。9万円に対して700万円で迎撃するのですか、ということです。

飯田)ドローンに対して。

部谷)これがすべてですよね。向こうは安く、人間も疲弊しない。こちらは整備兵もパイロットもみんな疲れてしまう。

飯田)高い航空燃料を使って。

部谷)他国の多くはドローン前提の軍隊です。米軍もドローン部隊をつくっています。

飯田)少し前までは監視用のグローバルホークなどが使われていました。

部谷)高いものだったのですが、米軍は水上・空中ドローンと軍艦を組み合わせた部隊が中東で編成されています。

飯田)既に組み合わせて作戦行動を進めている。

部谷)実運用しています。

無人機を前面に出し、人間はうしろに下がる

飯田)空母から無人機が発艦するようなイメージですか?

部谷)あとは水上ドローンですよね。無人艦、または通常の軍艦から飛んでいくドローンなど。

飯田)長い滑走路は必要ないですものね。

部谷)各国を見ても軍艦がいて、水中ドローンと航空ドローンと自爆ドローンなど、無人兵器を前に出している。航空機も有人機の前に無人機がいて、その無人機から無人機を出すという。

飯田)無人機から無人機を出す?

部谷)戦闘機が大きい無人機を操って、そこから孫ドローンのような感じで自爆ドローンを発射させることが多いですね。リーパーからスイッチブレードという小さい自爆ドローンを発射する実験を行っています。人間を前に出す方がおかしいですよね。

飯田)人間はどんどん後ろに下がる。

部谷)下がって責任を取る。何かあったときには責任を取る人が必要ですからね。

飯田)そして最終的なコントロールは後方の人間がやると。

人間は目的だけを無人機に与えて上から眺めている

部谷)人間の関与はどんどん減っています。例えば、昔は“Human in the loop”と言われていました。人間が意思決定の輪のなかにいる。でも最近は“Human on the loop”でいいという考え方です。

飯田)On the loop。

部谷)ループの上から眺めているだけでいい。

飯田)目的だけを与えて、あとは自律的にやらせる。

部谷)自律的にやらせて、人間は「待て」などの命令を行う。

飯田)ゴーやストップの命令を。

部谷)基本的にはゴーなどの命令も自動になっていく感じです。InではなくOnなので。

飯田)全体的な指令は行うけれど、末端の指令は自律的に進めてもらう。

部谷)そうですね。人間は監督だけやるという感じです。

ある日、与那国や石垣に国籍をつけていない「ロボット犬」がガチャガチャ上がってくる可能性も

飯田)前線に出るのは人間のリスクが大きい。

部谷)大きいですね。アメリカでは「無人兵器を使わない方が非人道的だ」という論文が出ています。ロボットと人間がいて、ロボットが人間に近いことができるのであれば、危険な任務に人間を出す方が非人道的だと。付け加えるなら、人民解放軍でいま、ロボット犬の上に銃を乗せて……。

飯田)そういう実験の映像が出ていますね。

部谷)空飛ぶドローンにロボット犬を乗せ、建物の屋上に降ろして、そこから突入させるようなことが行われています。

飯田)ドローンでロボット犬を目的地に降ろして突入させる。

部谷)ある日、与那国や石垣に国籍をつけていないロボット犬が、ガチャガチャ上がってくる可能性もある。そうなった場合、「人間たちに向かわせるのですか」ということです。でも、同じようなことが尖閣でいま起きている。その意味では無人機に対してF15で向かうのは自衛隊員に対して非人道的だと強く思うのです。

飯田)「人が死なない戦場になる」というのは映画の世界のようですが、既にそれが現実のものになっている。

部谷)だからこそ、いまウクライナの戦場では、オペレーターを狙っています。

飯田)奥の奥にいる人間を狙う。

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