日銀新総裁に求められる「今後の金融政策」 大企業・製造業の景況感、5期連続悪化

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが4月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本銀行が発表した3月の日銀短観について解説した。

日銀新総裁に求められる「今後の金融政策」 大企業・製造業の景況感、5期連続悪化

参院議運委で所信聴取に臨む日銀総裁候補の植田和男氏=2023年2月27日午後、参院第1委員会室 写真提供:産経新聞社

3月の日銀短観 ~大企業・製造業の景況感、5期連続の悪化

日本銀行が4月3日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感の代表的指標である「大企業・製造業」の業況判断指数(DI)はプラス1となり、前回12月調査から6ポイント悪化した。悪化は5四半期連続となる。一方、「大企業・非製造業」はコロナ禍からの行動制限の緩和が追い風となり、DIは1ポイント改善のプラス20と、コロナ禍前の2019年12月の水準まで回復した。

仕入れ価格が上がり、価格転嫁できない大企業・製造業

飯田)景気がいいと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いて算出され、プラスマイナスゼロだといい悪いがトントンだということです。一応、プラス圏だけれども悪化している感じです。どのように見たらいいのですか?

クラフト)大企業・製造業は明らかで、インフレですね。日銀短観のなかに「販売価格判断指数」というものがあり、これが12月と3月の間でマイナス4ポイント悪化しています。

飯田)販売価格判断指数が。

クラフト)そして、仕入価格判断が「マイナス6ポイント」になっています。つまり大企業・製造業としては、思うように価格転嫁できていないなかで仕入れ価格が上がっている。従って景況感が悪いということです。

非製造業は好調だが先行き感がマイナス、製造業の先行き感はプラス

クラフト)非製造業はコロナが明けて小売りやホテル、レジャーなどが好調です。海外からのインバウンドも入ってきているため、景況感がよい。

飯田)非製造業は観光業が好調。

クラフト)ただし、コロナ明けのいまはいいのですが、先行きは厳しいかも知れないので、非製造業の先行き感がマイナスに悪化しているのです。逆に製造業はプラスで、先行き感が改善しています。

飯田)本当ですね。非製造業の大企業は変化率マイナス5、一方で製造業の方はプラス2となっています。

アメリカから半年~9ヵ月遅れの日本 ~製造業における労働不足からサービスインフレが起こる

クラフト)製造業に関しては、いまは悪いのだけれど、先行きは改善するのではないかという期待感が表れているのだと思います。これはアメリカとまったく同じ動きで、おそらくアメリカから半年~9ヵ月遅れで日本が動いています。

飯田)半年~9ヵ月遅れで。

クラフト)アメリカもコロナ明けのとき、製造業は既に減速していて、サービス業が上がっていた。そして人手不足によって労働不足となっていきます。これによって労働者の賃金が上がり、サービスインフレが起こる。いま日本も労働不足が指摘されています。それを補うためにパートタイムの時給などが上がってくると、サービスインフレが日本でも起きるかも知れません。

原油価格の上昇からコスト増になり、6月発表の景況感は思ったより改善されない可能性も

飯田)アメリカの場合などは特にそうですが、この先のインフレ率が少し下がってくることで、サービスインフレが起これば転嫁できる。だから製造業は一息つけるということで先行きを見ているのでしょうか?

クラフト)そうですね。

飯田)最近のニュースでは原油の減産が報道され、エネルギー価格がまた少し上がるという話も出ています。どのような見通しになりますか?

クラフト)今回の短観は減産のニュースの前に集計を取っているので、そこは織り込んでいません。今後、どこまで80ドル台で原油価格が維持できるかを見ていかなければなりませんが、経営者からすれば、原油価格の高止まりは今後のさらなるコスト増につながります。それを受けて、6月に発表される景況感は思ったほど改善されない可能性もあります。

インフレの初期段階で引き締めが遅れたアメリカ ~日本も同じ状況になる可能性が高いので、早めの引き締めが必要

飯田)日本の場合は日銀トップが代わります。既に副総裁は新しい方が就任されていますし、4月9日には新総裁が就任します。金融政策はどうなると思いますか?

クラフト)難しい舵取りが迫られると思います。足元ではインフレ圧力が高まっています。4月だけで約8000品目が値上げされ、6月になると電力料金がある程度引き上げられるなど、インフレ圧力が目に見えている。そのなかで欧米の金融危機による過度な引き締めによって、さらに金融市場の不安定を招きたくない。

飯田)金融市場の不安定を。

クラフト)金融リスクとインフレ圧力を両天秤にかけて、どちらを重視していくかという判断が、日本だけでなく、アメリカや欧州の中央銀行にも迫られると思います。

飯田)アメリカから半年~9ヵ月遅れでやってくるという指摘がありましたが、アメリカはインフレの初期段階で、この状況はいまだけなのだと判断し、引き締めが遅れたと現在は評価されています。これを見て日銀が先に動く可能性はありますか?

クラフト)日本もまったく同じ局面だと思います。「日本だけは違うのだ」という、これまでの日銀の指摘は危険だと思います。アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引くと言われるように関連性はあるので、少なくとも日銀がいま掲げている年度末のインフレ1.8%という予想は、少し低すぎるのではないかと思います。

飯田)落ちつくという予想ですね。

クラフト)確かにいまよりは下がるかも知れませんが、アメリカが判断を間違えてから言っているのは、「今回のインフレは非常に粘着性が強い」ということです。思ったほどすぐには下がらない。日本でも同じことが言えると思います。

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