経済アナリストのジョセフ・クラフトが4月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月1日に解禁された給与のデジタル払いについて解説した。

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給与のデジタル払い解禁

スマートフォンの決済アプリで賃金を受け取る給与のデジタル払いが4月1日に解禁された。キャッシュレス決済大手のPayPay（ペイペイ）や、KDDIのスマホ決済「au PAY」、楽天グループの電子マネーサービス「楽天キャッシュ」などが厚生労働省に事業者指定を申請した。給与のデジタル払いは厚生労働省の審査を経て指定されると、運営する決済アプリなどの口座に給与を入金できる。審査には数ヵ月程度かかる見通しで、サービス開始は早くても2023年夏以降になる。

飯田）給与のデジタル払いについて、3つの会社が手を挙げています。事業者指定を受けないと事業はできないので、まだ先の話ですが、これによって消費等々のマインド部分も変化するでしょうか？

クラフト）これは避けられない流れだと思います。キャッシュレス決済がいまや111兆円、全体の36%にまで膨れ上がっているので、当然、給与もキャッシュレスで、という流れがあっても不思議ではありません。従業員の選択肢の幅が広がりますし、私はいいことだと思います。

社会の変化に取り残されつつある銀行

飯田）いままでは基本的に銀行口座への振り込みでしたので、全銀協の会長はこの辺りを「危惧する」という話もあります。給与を押さえるとなると、ある意味ロイヤリティの高い顧客になりますからね。

クラフト）残念ながら、いままでのビジネス体系に未だ依存しているのです。本来であれば、デジタル決済を全銀協が率先して動かし、新たな金融体系を切り開くはずなのに、未だに保身しているのが残念だと思います。

飯田）「資産運用や住宅ローンの提案機会が減り、ビジネスにも一定の影響が出る可能性がある」と述べ、「取り扱いに必要な安全・安心が確保されていることが前提」と指摘しています。この辺り、「新しいサービスはいろいろ危険かも知れませんよ」という考えが透けて見えますね。

クラフト）これから、さらにチャンスが生まれてくるということではなく、「リスクがあるから抵抗する」という反応から見ても、置き去りにされていくのではないかと危惧します。個別の金融機関はどんどん社会の変化を取り込んで、一歩先を行かないと、やがて取り残されていくと思います。

新たなイノベーションを切り開いていかなければならない銀行　～2023年後半からデジタル通貨の試験を始める日銀

飯田）銀行というスキームをやっているという意識よりは、お金の総合商社的な形に変わっていかなければならない部分はありますよね。

クラフト）日銀は早ければ2023年後半からデジタル通貨の試験を始めていきます。デジタル化へ進むのは明らかなので、銀行がその流れを汲んで先に行かないと、地銀などは淘汰されていくと思います。もっと率先して新たなサービス、新たなイノベーションを切り開いていく必要があるなと痛感しました。

98％がデジタルキャッシュレスのスウェーデン　～この流れは避けられない

飯田）キャッシュレス大手3社がやろうとしていて、給与のデジタル払いまでいくとします。その先の見通しとしては小口のローンや、銀行のように不動産ローンなども視野に入れているのでしょうか？

クラフト）そうだと思いますし、3社の動向によっては、他の企業も追随していくと思います。そうすると、今度はまたデジタル決済の需要が増えていくので、雪だるま式にデジタル化が進んでいきます。

飯田）デジタル化が。

クラフト）スウェーデンでは、98%がデジタルキャッシュレスです。欧米も続いていくことになりますし、日本も続いていかないと国際社会から取り残されてしまうので、この流れは避けられないと思います。

手数料に依存する銀行ビジネスは細っていく

飯田）いまは小口の部分、リテールと呼ばれるところですが、この先は企業に対する金融の融通も、デジタルですべて行うことになりますか？

クラフト）デジタル通貨とはそのような意味のことを言います。利便性があり、お金の流れも追跡できるので、不正やマネーロンダリングなどを排除でき、健全だと思います。

飯田）その流れになってくると、間に入ってお金を動かすところで手数料を取るという、既存の銀行ビジネスは細ってしまうかも知れませんね。

クラフト）そもそも世界を見渡して、1回送金するのに300円～400円取る金融機関は他にありません。これを安く下げていかなければならないのに、抵抗している。今回のようにデジタル化が進むと手数料が減っていくので、手数料に依存した金融経営というのも問題だと思います。