フィンランドのNATO加盟でさらに強くなった「ロシア包囲網」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フィンランドのNATO加盟について解説した。
中立国フィンランドが31ヵ国目のNATO加盟国に
飯田)ウクライナ情勢のなか、フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)の31ヵ国目の加盟国となりました。
宮家)フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を申請していました。NATO・欧州のなかでは、ロシアに近い国、少し遠い国、海洋国家の3つがありますが、実は4つ目があります、それが中立国なのです。
飯田)中立国。
宮家)中立国としていた国々が、「ロシアさん、話が違うではないか。ここまでやるのなら、我々はNATOに入らざるを得ない」となり、スウェーデンとフィンランドがかなり早い段階から動いていた。あらかじめ話がついていたのだと思いますが、昨年加盟申請を行いました。
飯田)そうですね。
宮家)その申請に対して、トルコが文句を言ったのです。スウェーデンにはエルドアン政権がテロ組織とみなすクルド人勢力を支援する人たちもいるので、トルコのエルドアン大統領はスウェーデンの加盟手続きを保留にしているのです。
ロシア包囲網がさらに強くなる
宮家)フィンランドについては仕方がないということで、今回、加盟が決まりました。それでも、これは大きなことです。つまり、NATOに加盟したフィンランドをロシアが攻撃すれば、NATOの残りの30ヵ国に攻撃したことと同じになります。いわゆるNATO条約5条と言われるものです。
飯田)NATO条約の第5条。
宮家)集団的自衛権が発動されるわけです。ロシアがフィンランドに手を出す余裕があるとは思えませんが、ロシアに対する厳しい体制が強化された。次は、フィンランドに続いてスウェーデンがどうなるかですが、報道によると、トルコだけではなくハンガリーも反対しているようです。当然、ロシアのことをいろいろ配慮したのかも知れないですし、これとは別に個別の問題があるのかも知れません。
飯田)ハンガリーにも。
宮家)仮にスウェーデンがいますぐ入らなくても、フィンランドとスウェーデンとノルウェーは、安全保障の実質的な分業をしてきましたし、実際にはNATOと連携して動けるようになっていると思います。あらゆる意味でNATO側の包囲網は強まっていますので、スウェーデンが「入る、入らない」の議論があったとしても、ロシアにとっては決していいことではありません。
飯田)北風と太陽の寓話のようですね。風を吹かせたら……。
宮家)中立国は太陽なのですが、ロシアがあれだけ悪いことをしたら、、つまり、寒くなれば中立国もコートを着ないとならなくなる。太陽で脱がせると言っても、太陽でもロシアは溶けないではないですか。
難しい立場に置かれる中国
飯田)そこを中国が仲介しようという話も出ています。
宮家)それは無理ですよ。「中国は欧州に部隊を持っているのですか?」ということです。
飯田)部隊。
宮家)ヨーロッパに戦闘部隊があるわけではないですよね。さらに言えば、中国がロシアに対して本格的に殺傷兵器を投入できるのでしょうか。そんなことをしたら、アメリカもヨーロッパも怒りますよ。
飯田)そうですね。
宮家)中国が仲介役をするとなると、「やっていることと言っていることが違うではないか」という話になりかねない。これは中国にとって相当な牽制になっています。もし中国が本当に仲介したいと思うならば、そう簡単にロシアの味方はできないはずです。
飯田)真剣に仲介しようとすれば。
宮家)だからと言って、「ロシアが負けたら次は自分だ」となりますから、中国は難しい立場に置かれていると思います。
飯田)行動で仲介者的なアピールをした時期に、日本の岸田総理がウクライナを電撃訪問したのは、非常に対称的でした。
宮家)意図していたかどうかは別にしても、岸田総理はいいタイミングで行きましたよね。あれで中露の連携が霞みました。日本は先進7ヵ国(G7)の道を行くべきだと思います。
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