地政学・戦略学者の奥山真司が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の米中関係について解説した。
台湾の蔡英文総統によるアメリカ訪問への報復か ~台湾周辺で中国軍が軍事演習
飯田)蔡英文総統が中米歴訪の途中でアメリカに寄り、下院議長と会ったことに対する報復なのか、最近は台湾周辺で中国軍による軍事演習が活発に行われています。
奥山)国産空母「山東」も入れて演習を行っているというところに、専門家たちは注目しています。
飯田)日本メディアのなかには「抑制的」だと書くメディアもあります。この間のように弾道ミサイルを撃ち込まなかったからか? と思うのですが、抑制的に見えますか?
奥山)いえ、違うと思います。「空母運用の強化を図っている」と吉田圭秀統合幕僚長もおっしゃっています。かなり実践的な演習になってきています。
「我々は軍事大国の1つである」ということを見せたい中国
奥山)以前のミサイル発射には脅しのような意味もありました。しかし、今回は動いているものを実践体制で見せているという点で、「我々は軍事大国の1つである」ということを見せたい気持ちが表れていると思います。
飯田)今回はバシー海峡を通り、台湾の東側である台北や、台中の背中側に回って戦闘機を上げてきました。
奥山)アメリカに対する牽制の意味も見えてきます。このニュースで気になるのは、「アメリカと中国は本当に関係が最悪になっているのだな」と実感せざるを得ないことです。
米中間で唯一合意されているのは、“さらに関係が悪化するだろう”という点だけ
奥山)英語圏を中心としたいろいろなメディアで出てくる意見の多くが、「米中間で唯一合意されているのは、“さらに関係が悪化するだろう”という点だけだ」という状況になっています。
飯田)さらに関係が悪化するだろうと。
奥山)習近平国家主席がプーチン大統領に会いに行きました。それによって、「中国は西側主導のオープンで平等で平和的な世界秩序とは別のものをつくろうとしているのではないか」と、西側メディアが大きく取り上げています。
飯田)別の世界秩序を。
奥山)そこに今回、空気の読めないマクロンさんが習近平さんに会いに行ったので、かなり動揺しています。それも含めて米中関係は悪くなるしかないのでしょう。
飯田)アメリカの見方としては、ロシアに接近し、フランスまで引き込もうとしている。自分たちの同盟まで突き崩そうとしているのか、と考えます。
奥山)そうなりますよね。
米中関係の悪化における「3つの論点」 ~デカップリングがどこまで米中関係に悪影響を及ぼすか
奥山)米中関係の悪化とマネージメントについて、3つの論点があると思っています。まず経済についてです。デカップリング、経済の切り離しが、アメリカと中国の間でどこまで悪影響を及ぼすのか。それをいかに限定できるのかが1点目です。
飯田)デカップリングが。
台湾有事などの軍事衝突をいかに防止できるか
奥山)2つ目が、今回の軍事演習でもありましたが、安全保障関係についてです。衝突や紛争、最悪のパターンは戦争ですが、これらをいかに防止できるかが焦点になってきます。
飯田)なるほど。
奥山)3点目は、アメリカ側が中国と同じようなやり方で、アメリカとして自らの価値観を崩してしまうのではないか、ということが気になってきます。西側のオープンな自由主義を、中国と対抗するなかでどこまで抑えられるのか。
飯田)西側のオープンな自由主義を。
奥山)いまアメリカが半導体で中国を規制していますが、西側は本来、それをやってはいけないのではないか。国家主導でそこまで行うべきではないだろうということです。それをどこまで限定できるのか。
飯田)規制を。
奥山)経済、安全保障、価値観・体制のところで、どこまで争いを抑えられるかが注目点だと思います。
「中国の価値観の方がいい」ということになれば、グローバルサウスの国々は中国に引き込まれてしまう
飯田)価値観の部分などは、それだけでも国内で論争が起こり、意思統一が乱れるかも知れない。それこそ影響力工作などは中国の得意とするところですよね。
奥山)逆に「中国の価値観の方がいい」という方向になってしまうと、グローバルサウスと呼ばれるような国々がそちらに靡いてしまう可能性が出てきます。西側主導の世界秩序の真価が問われていると思います。
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