グローバルサウスへの外交はアメリカより日本の方が上手い
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが5月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理のアフリカ歴訪について解説した。
岸田総理大臣がアフリカ歴訪2ヵ国目となるガーナに到着
岸田総理大臣は5月1日、アフリカ歴訪2ヵ国目となるガーナに到着した。日本時間2日未明にはアクフォアド大統領と会談し、地域の平和と安定化に向け、3年間で約5億ドル(約687億円)の支援を行うと表明した。
グローバルサウスの国々を取り込む
飯田)4月29日~5月5日までの日程で、エジプト・ガーナ・ケニア・モザンビークのアフリカ4ヵ国、さらにはシンガポールを訪問する予定です。一連のアフリカ歴訪の狙いは何ですか?
クラフト)キーワードは「グローバルサウス」です。今回、広島で開催される先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)では、グローバルサウスが中心になっていろいろと議論されると思います。
飯田)G7広島サミットでは。
クラフト)グローバルサウスと言いますが、必ずしも地理的に南の国ということではなく、「グローバル」と付いているので、むしろ貧困層・第三世界的な国々を一体化して表しています。近年のG7の反省点として、西側の価値観を押し付けるような形で、グローバルサウスの国々に歩み寄っていたところがあります。そのため、これから影響力を持つ国々が、どちらかと言うとロシアや中国に寄る傾向があるのです。
飯田)反省点として。
クラフト)従ってそういった国々、グローバルサウスを取り込む議論を行う。また、G7にインド・インドネシアも招いて、G7とグローバルサウスの結び付きを強める。その一環で今回、G7に招いていない、特にアフリカ諸国を訪問し、関係性を構築していく狙いがあったのだと思います。
飯田)そういう国々に対して、中国はインフラ投資も行っていました。
クラフト)進めてきたので、近年はその距離感が出ています。アメリカも危機感を持っていて、2022年にはバイデン政権がアフリカ諸国を数十ヵ国ほどワシントンに招き、アフリカ会議を開催しました。中立国を取り込もうとする動きは活発化しています。
多様な価値観があるのでそこは重んじる ~共有すべきところは共有する
飯田)かつてはそういう国々に対して「民主主義を」という話がありましたが、アフリカの国々のなかには独裁に近い国や、権威主義的な国家もあります。いままでは手を出しづらかったのですか?
クラフト)手出ししづらいというか、拒絶していた部分があったのだと思います。西側は「我々の価値観が正しいのだ」、「我々のように人権を重んじろ」というような感じで接していました。
飯田)押し付けるような感じで。
クラフト)今回、G7で取り上げるテーマの1つに「多様な価値観」という項目が入っています。これまでの反省に基づき、西側の価値観をすべて強制するのではなく、それぞれの国にはそれぞれの価値観があるから、それを重んじましょうということです。
飯田)多様な価値観として。
クラフト)ただ、ルールベースの経済を行う。また、ウクライナ情勢のような「力による現状変更」を行ってはいけない。一方的にアメリカや日本が人権などの価値観を押し付けるのではなく、そこは「共有していきましょう」と、従来の姿勢から軟化しています。
飯田)これまでの姿勢からは。
クラフト)ロシア・中国と西側による、グローバルサウスの国々の取り合いですよね。そういうところから話が出ているのだと思います。
相手の国の立場を理解した上で取り込んでいく日本のやり方 ~グローバルサウスへの外交はアメリカより日本の方が上手
飯田)民主主義の価値観の押し付けというところでは、バイデン政権が「民主主義サミット」を開催しましたが、シンガポールやトルコなども含めて、「そうは言っても民主主義で括られると入れない」というような国が出てしまっています。
クラフト)そうなのです。広い枠組みでの民主主義ならばいいのですが、「アメリカの民主主義」を押し付けるので、それは違うとなってしまう。そこは日本の外交の方が上手です。
飯田)日本の方が。
クラフト)アメリカは「俺たちの考えはこうだから聞け」とするのですが、日本はうまく相手国の立場を理解した上で取り込んでいく。外交面では日本の方がうまいと思います。そういう意味でも、今回の岸田総理のアフリカ訪問は意義があるものです。
飯田)それをG7に持って行き、アメリカなども含めて「うまくやりましょうよ」と進める。
クラフト)当然、アメリカもそのやり方を理解した上で日本を支持しているでしょう。アメリカ政府は認めないまでも、自分たちの「押しつけ姿勢」が功を奏していないという反省があるのです。
飯田)その辺りで、日本は橋渡しもできますね。
クラフト)そうなのです。特にアジアをまとめるのに日本はベストポジションにいますから。アフリカに対しても、アメリカのフットワークが軽くないので、そこは日本が補う。G7議長国として今回、G7をまとめる日本の姿は評価すべきものだと思います。
岸田総理が訪韓する本当の理由
飯田)岸田さんはアフリカ歴訪でシンガポールまで行き、帰国後の7~8日には韓国へ行くと報じられています。
クラフト)これはあくまでも私の推測なのですが、3月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日しました。しかし、G7でまた来るのですよね。
飯田)オブザーバーとして招待しています。
クラフト)2回連続で来日してしまうと、韓国世論からすれば「なぜこちら側が2回も行かなくてはならないのだ。韓国は日本の子分なのか?」という批判が出かねません。そのため「前回来ていただいたので、今回は日本が行きます」ということで……。
飯田)貸し借りをなくすような感じにする。
クラフト)そういう動きだと思いますし、日本のフットワークの軽さを象徴しています。韓国にも配慮するという、日本の繊細な外交の意向が伝わってくるような気がします。
飯田)なるほど。ここで韓国に行くと、戦時中の募集工の件で「まだ譲歩するのか」と心配する人も出てきますが、中身よりは行くこと自体が目的なのですか?
クラフト)そうだと思います。「対等だ」ということを韓国世論に伝える。尹大統領は決して支持率が高くないですから、日本側が配慮して「この間来てくれたので今度は日本が行きます。だからG7に来てください」とシャトル外交を行う。それを証明するためではないかと思います。
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