それぞれの事情で実は「割れている」ASEAN内部

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学習院大学特別客員教授で元駐インドネシア大使の石井正文が5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。インドネシアで開催されているASEAN首脳会議について解説した。

それぞれの事情で実は「割れている」ASEAN内部

オンラインで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3か国の外相会議に出席する茂木敏充外相(画面上右から2人目)ら=2021年8月3日午後5時27分、東京・霞が関の外務省(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

ASEAN首脳会議が開幕 ~ミャンマーや南シナ海情勢などについて協議

東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が5月10日、インドネシアのラブアンバジョで開幕した。クーデター以降混乱が続くミャンマー情勢については、ASEANで合意した暴力の即時停止などをミャンマー側に履行させるための具体的な対応などが焦点になるなか、一部加盟国と中国が領有権を争う南シナ海情勢などについても議論する見通し。

飯田)ASEAN各国、それぞれ思惑があると思います。中国への対応も、やはり温度差はありますか?

内部で割れているASEAN ~危機の際、頼るのはアメリカや日本か、あるいは中国か

石井)相当あると思います。ちなみにミャンマーの問題について、今年(2023年)はインドネシアが議長国ですので、何とか前進しないかなと思っていましたが、かなり難しいですね。

飯田)難しいですか?

石井)この問題はかなり長期化するかも知れません。もちろん、ASEAN側が前面に立って問題解決を行う必要があります。ASEAN側がつくったコンセンサスに沿って解決するように、私たちは後ろからサポートする。ASEANは重要なのですが、内部を見ると、やはり割れているのです。

飯田)割れている。

石井)実際、ASEANは「みんなで強くなろう」という意見は支持するのですが、よくよく見ると割れています。どの国も平和なときは、中国や日本やアメリカと等しく付き合うわけですが、本当に危機になったとき、日本やアメリカを頼るのか、それとも中国を頼るのか。そういうところで、相当割れているのではないでしょうか。

インドネシアやベトナム、フィリピンは日本、アメリカを ~タイやミャンマー、マレーシアなどは政権によって中国と日本の間で揺れる

石井)インドネシアやベトナム、フィリピンなどの大きい国はおそらく、いざというときには日本やアメリカを頼ってくるでしょう。真ん中の国、タイやミャンマーも含めたマレーシアなどの辺りは、政権によって中国と日本の間を揺れ動いています。

飯田)なるほど。

石井)小さな国は、何か圧力を掛けられたら中国に従わざるを得ないという感じです。

飯田)ラオスやカンボジアなどですか?

石井)ブルネイも含めてそうだと思います。シンガポールは特別ですが。内部が割れていることをわかった上で、ASEAN全体を支持しながら、同時に二国間関係で色を付けていく。そういうことを、今後は日本もより進めていかなければならないと思います。

今後ますます重要になるASEAN諸国 ~日本主導でアメリカを導くことが必要

飯田)人口の多い国と言うと、インドネシアやベトナム、フィリピンですが、この辺りは海に面した海洋国家です。日本としては付き合いやすいのでしょうか?

石井)付き合いやすいですし、重要です。やはりシーレーンに沿っていますし、かつ南シナ海の問題でも日本と同じような方向を向いています。今回、ベトナムもインドネシアもG7サミットに呼ばれています。そういう意味でもよいチョイスだと思います。

飯田)公式には言いませんが、G7に呼ぶか呼ばないかというのは、より色を付けるというか、より仲よくしたいという国なのでしょうか?

石井)議長国の戦略が強く掛かってくると思います。

飯田)そういう意味では、もう少し枠があれば、ASEANのなかで呼びたかった国はありますか?

石井)どこかで上限を設けなければならないので、そういう意味ではちょうどいいのではないでしょうか。

飯田)そういった国々とは安全保障だけではなく、さまざまな形での交流が必要でしょうか?

石井)ますます重要になると思います。アメリカの対応についても助けなくてはなりません。ASEANは何と言っても日本主導で行ってきましたから、付き合い方も日本の方が上手いと思いますので、アメリカを導いていく必要があるでしょう。

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