ChatGPTが「偏った」情報を吐き出す問題 ~「世論=正しい」ではない

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ジャーナリストの佐々木俊尚が6月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ChatGPTの問題点について解説した。

ChatGPTが「偏った」情報を吐き出す問題 ~「世論=正しい」ではない

※画像はイメージです

ChatGPTはリベラルに偏りやすい

飯田)話題のChatGPTに関して、佐々木さんはツイッターで「ChatGPTはリベラルに偏りやすい」という(プレジデントオンラインの)記事を取り上げています。

佐々木)インターネット全体のデータを学習し、そこから知見を引っ張ってきているのがChatGPTであり、データ量がものすごく多いのです。

ChatGPTには知識人、言論人のデータが多い ~一般大衆の意識や感覚が拾い上げられなくなる懸念がある

佐々木)ただ、ネット上のどんなデータが多いかと言うと、一般の方々がツイートしているようなものではなく、論文や大手メディア記事などのデータが多い。知識人や言論人と言われる人のデータが多いのです。

飯田)知識人、言論人のデータが多い。

佐々木)そういう人たちがリベラル寄りだと、ChatGPTも全体的にリベラル寄りになってしまうのではないか。「一般大衆の意識や感覚が拾い上げられなくなる心配があるのではないか」ということが書かれているのです。

飯田)なるほど。

佐々木)その知識人や言論人が言っていることが正しければいいけれど、「必ずしもそうではない」とわかってしまったのが、いまのSNS時代です。

「権威主義3.0」 ~「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」にいき過ぎているリベラル左派の権威主義

飯田)早稲田大学公共政策研究所の招聘研究員・渡瀬裕哉さん(によるプレジデントオンライン)の記事を引いたものですが、確かに実社会を完全に反映しているものではない。

佐々木)そうなのですよ。渡瀬さんが書いていたもので面白いのは、権威主義は「1.0」から「4.0」まであると。権威主義などなくなったかと思いきや、昔からのいわゆる権威主義はあるわけです。

飯田)権威主義は。

佐々木)最近では、ロシアや中国のような権威的な国家もある。そこまではわかりやすいのですが、いまの権威主義3.0というのが、「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」にいき過ぎているリベラル左派の権威主義。確かにあの人たちは、とても権威主義的です。大学の偉い先生の言うことを間に受けたり。

飯田)「いろいろな考え方がある」というところまでは、民主的で権威主義ではないと思うのですが、「これが正しいのだ。これを認めないお前は差別主義者だ」という考えまで進むと権威主義化してしまう。

「あの人が言っていることが正しい」と言ってしまうから権威主義 ~「衝突したものをどこかで調節しなければいけない」ということが重要なテーマなのだが

佐々木)「誰かが言ったことが正しいから信じよう」というのが権威主義なのですよ。ChatGPTの言うことを信じてしまうのも権威主義だからです。それを渡瀬さんは「権威主義4.0」と呼んでいます。

飯田)権威の主体が違う。

佐々木)正しさが複数あると常に衝突しますよね。だから「衝突したものをどこかで調節しなければいけない」というのが重要なテーマなのですが、権威主義の人たちは「そんなことはない、これが正しい」とか、「あの人が言っていることが正しい」と言ってしまう。それが権威主義であるということです。

飯田)これこそが正義で、他は不正義だと。

「ChatGPTの言うことも正しさの1つに過ぎない」と認識することが大事

佐々木)少しでも意に反したことを言うと、「差別だ」と騒いでしまう。権威主義から脱するには、「正しさは正しさで複数あり、それが衝突したら調整しなければいけない」と考えるのです。ChatGPTの言うことも正しさの1つに過ぎない、と認識することが大事なのではないかと思います。

ChatGPTが人間の感情まで汲み取れるようになればバランスは取れるのか ~世論が必ずしも正しいとは限らない

飯田)渡瀬さんが指摘されていたのは、いまは知識人のデータがベースになっているから、そっちに引っ張られるのだと。今後、ChatGPTが進化してメタ的な、人間の感情まで汲み取れるようになれば、バランスが取れてくるのですか?

佐々木)難しい問題だと思います。例えば「世論の通りに政治を行うとうまくいくのか」と言われたら、必ずしもそうではありませんよね。みんなが税金を安くして欲しいと思っても、税金が安い国家は本当にいいのか……必ずしもそうではないわけですよね。

ChatGPTが間違った情報を吐き出す問題も ~「世論イコール正しい」ではない

佐々木)常に「衆愚化」という問題があります。実際、いまのChatGPTでも「ハルシネーション(幻覚、幻想)」の問題があります。

飯田)ハルシネーション。

佐々木)ネット全体には偏った知識など、間違った情報もたくさん含まれています。ChatGPTには、それらをそのまま吐き出してしまう問題がある。だから、あまり信用してはならないと言われているのです。

飯田)間違った情報も取り入れてしまう。

佐々木)なぜ間違った情報や怪しい情報が入ってしまうかと言うと、全員の集合知だからです。世論がそのまま正しいわけではありません。

飯田)全員の集合知だから。

専門家の知見と集合した世論のバランスをどう取るか ~非常に難しい問題

佐々木)ウクライナ侵攻にしても、例えば「ウクライナの人々が可哀想だからすぐに戦争をやめて」など、単純に牧歌的ヒューマニズムのようなものを振り回すと、「ウクライナ戦争をやめろ」という方向の話になってしまう。

飯田)そうなりますね。

佐々木)必ずしも世論だけではなく、安全保障などの専門家の話を聞くべきです。そちらの方がより適正な情報ですから、そこを上手く拾い上げる仕組みにしないといけない。

飯田)世論だけではなく。

佐々木)いまの言論・知識人の情報だけでは偏ってしまう。しかし全員の世論を集合すれば、それでよくなるわけではなく、専門家の知見が必要になります。どこでバランスを取るのかは、すごく難しいのではないでしょうか。

飯田)全部を参照すればそれでいいわけではない。ある意味、「市場に任せればすべてうまくいく」という考え方に似たようなものがあるけれど、実際、市場に任せたら失敗することもよくありますものね。

佐々木)ロシア国内で世論調査を行えば、プーチン大統領の支持率は圧倒的なわけです。ロシアの世論を背景にしたChatGPTが現れたら、適正ではない答えを出してしまう可能性があります。

「世論との向き合い方」がAIと政治の関係を考える上で重要なテーマになる

佐々木)常に世論をそのまま政治に向かわせるのではなく、政治家に必要なのは、世論と向き合うことだと言われます。その向き合い方をどうするかが、今後、AIと政治の関係を考える上で重要なテーマになると思います。「向き合うというのは、そもそもどういう意味なのか。どうすれば向き合えるのか」など。優秀な政治家はそこを肌感覚で進めてきたと思うのですが。

飯田)いままではそうですね。「ここまで行くと行きすぎだから、説得しなければいけない」などと。

佐々木)考え方によっては、それが最後に残る人間の政治家の役割なのかも知れません。

飯田)その辺りの利害調整が人間の仕事の大部分になってくる。

佐々木)AIがそこまでやってくれるかどうかは、現時点ではわかりませんが、いまのAIだと少なくともそこまではやらないですよね。

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