衛星破壊より、電波妨害やサイバー攻撃の方が現実的脅威 「宇宙安全保障」のこれから

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数量政策学者の高橋洋一と防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄が6月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府の宇宙開発戦略本部で決定された「宇宙安全保障構想」について解説した。

衛星破壊より、電波妨害やサイバー攻撃の方が現実的脅威 「宇宙安全保障」のこれから

宇宙作戦群新編行事 鬼木防衛副大臣から隊旗を受け取った、群司令の玉井一樹1佐=2022年3月18日午後3時11分、東京都府中市の航空自衛隊府中基地 写真提供:産経新聞社

政府、初めての「宇宙安全保障構想」を決定

政府の宇宙開発戦略本部で、宇宙空間の安全保障政策の初めての指針となる「宇宙安全保障構想」が決定された。宇宙空間での脅威が急速に拡大しているとして、アメリカなどが運用している監視活動への参加を目指すとしている。

飯田)基本方針として「安全保障のための宇宙利用の抜本的拡大」、「安全かつ安定的な利用の確保」、「安全保障と宇宙産業発展の好循環実現」の3つを柱として掲げています。少し前までは宇宙空間での軍事開発はいけないなどと言われていましたが、そんなことも言っていられないですね。

高橋洋一)言っていられません。ずっと前に、宇宙の所管はどの省庁なのか、設置法を書くときに問題になったことがありました。

飯田)宇宙の所管を。

洋一)文科省と経産省と国交省と総務省だったと思いますが、ここが争い、高市さんが大臣になって一応はすっきりしました。でも高市さんの下に4省庁が全部集まっている状態だと思います。

飯田)内閣府特命担当となると。

洋一)みんなが人員を派遣して、覇権争いをしているのです。

宇宙領域把握の機能を持つ衛星を打ち上げる計画も

飯田)安全保障が関わってくると、当然ながら防衛省も関わります。航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」になるのではないかという話ですよね。

杉雄)実際の衛星の打ち上げも進んでいますし、宇宙安全保障構想にもありますけれど、宇宙領域把握のため……。

飯田)宇宙領域把握。

杉雄)宇宙領域把握というのは、宇宙を飛んでいる衛星やデブリに全部タグを付けて、トラッキングすることです。

飯田)タグを付けて。

杉雄)少し遅れていますが、日本が静止軌道にそういう機能を持つ衛星を打ち上げる計画があるのです。アメリカも持っていない能力なので、日米が協力する意味でも進めていく必要があります。

将来的にはデブリの回収も

飯田)デブリの問題では、役目を終えた衛星、あるいは一部の地上から破壊した残骸が残っていて、他の衛星にぶつかると大変なことになると言われています。回収することになるのですか?

杉雄)少しずつ、そういう努力もしていくのではないでしょうか。まだ、連鎖的にデブリが発生する状況にはなっていないので、早め早めに予防措置を進めるのだと思います。

衛星の破壊よりも、電波妨害や宇宙ネットワークへのサイバー攻撃の方がリアリティのある脅威

飯田)衛星を宇宙のなかで破壊する、攻撃型衛星のようなものも脅威として認識されるのでしょうか?

杉雄)衛星によると思います。例えば、GPSのように30個近い衛星を使うようなシステムであれば、1つ~2つ破壊しても関係ありませんから、逆に破壊する意欲がわかないのです。

飯田)なるほど。

杉雄)スターリンクのように3000個などになってしまうと、10個~20個ほど破壊しても何の意味もないわけです。いまの流れで言うと、衛星そのものを破壊するというよりも、電波妨害や宇宙ネットワークへのサイバー攻撃などの方が、リアリティのある脅威ではないかと言われています。

ロケット打ち上げは「トライ・アンド・エラー」で進めるしかない

飯田)日本のロケットは先日、打ち上げが失敗してしまいましたが。

洋一)残念ですね。技術もあるので、「いつでもいろいろできるぞ」と実力を見せたいところです。商業利用でもたくさん可能性があるし、積極的に試みて欲しいですね。

飯田)日本は「完璧を期し、それでも失敗してしまう」というところがあります。

洋一)記者会見で変な質問があったではないですか。

飯田)「これは失敗なんですか? 失敗なんでしょう?」という質問ですね。ある意味、こういう分野こそ、トライ・アンド・エラーで進めざるを得ない。

洋一)一発で成功するわけがありません。あのような記者会見は士気を削ぐと思います。

飯田)縦割りの話がありましたけれど、打ち上げるロケットは文科省の傘下です。例えば防衛省が一緒になって進めることは難しいのですか?

杉雄)いや、防衛省も宇宙については主務官庁ですから、一緒に動いています。それこそすべての役所が自分でロケットを打ち上げ始めたら、そちらの方が縦割りなので。

飯田)非効率になる。

安全保障から見ても、ビジネスとしてペイする宇宙産業をつくることが重要

杉雄)中国やロシアに比べて、西側による宇宙開発の優位点は、「民間商業宇宙利用の進展がある」ということです。それはウクライナ戦争でもはっきり出ています。そういう意味で言うと、国主導だけではなく商業宇宙利用との連携や、商業宇宙利用の促進も重要だと思います。

飯田)イーロン・マスク氏が運営するスターリンクも、まさに民間で行っているものです。

杉雄)民間が日常のなかで、ビジネスとしてペイしている。だから戦争のときに使えるというところがあるので、安全保障から見ても、ビジネスとしてペイする宇宙産業をつくっていくことが重要なのだと思います。

飯田)日本の民間宇宙産業は……。

洋一)いろいろな技術があります。あまり知られていませんが、衛星間の通信は日本の技術の優位性が高い分野です。

飯田)そうなのですね。

洋一)そういうところに予算を弾めばいいですよね。

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