数量政策学者の高橋洋一と防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄が6月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。6月13日に行われた岸田総理の記者会見について解説した。
児童手当の所得制限をなくすのは正解 ~しかし扶養控除をなくしてしまっては「プラスマイナスゼロ」に
飯田)政府による個別具体的な政策について、6月13日の岸田総理の会見では子育て政策がメインでした。横浜市港北区の“ゆきな”さんからファックスでご意見をいただきました。「子育て支援策について、いろいろ出ていますけれども、まずは子どもを産むまでに結婚してもいい給料が欲しいですよね。安バイトでは無理だし、20万円の手取りで家族を養うのも厳しい。“あーあ”の毎日です。まずは健康かな」というご意見です。児童手当や給付金など、いろいろな話が出てきますけれども、マクロ経済の方はどうでしょうか?
高橋洋一)アベノミクスは、失業率を下げたという意味では成功したのです。しかし、賃金が上がるのを待っていたら、消費増税が2回あり、その上にコロナ禍があった。そのため上がりにくかったのだけれど、いまは賃金が上がりやすいのです。
飯田)コロナも明けて。
洋一)対策的に言うと、児童手当の所得制限をなくすのは正解です。世界中のどこでも児童手当に所得制限はほとんどありませんし、税控除も一般的な国ではあるのです。でも、扶養控除をなくすという話なので、「行って来い」になってしまう。所得によってはマイナスになる人もいますね。
飯田)そうですよね。
洋一)「何を考えているのか」という感じです。ようやく所得制限なしで普通の政策になったのかと思ったら、扶養控除をなくすと……これを「ステルス増税」と言います。
特例公債を活用 ~あとで増税か
洋一)昨日(6月13日)の岸田総理の会見を聞いていたら、「特例公債」と言っていました。だから増税はしないと言っていたのだけれど、特例公債はあとで増税するのですよ。
飯田)つなぎとして一定期間は国債を出すけれども。
洋一)あとで行うのです。特例公債なら、あとで増税しないことはありません。「いまはやらない」という方針に矛盾はないのですが、「あとで増税するのではないか?」と誰かが質問しなければダメですね。
子どもの学費を控除対象にはできないのか
飯田)現役の子育て世代としては、扶養控除がなくなるのは痛いですね。
高橋杉雄)プラスマイナスがゼロでは意味がないですからね。
飯田)加えて社会保障費も天引きされるのは厳しいです。
杉雄)子どもの学費などを控除対象にすれば、変わると思うのですが。
飯田)学費の部分もいろいろな提言のなかでは言われていましたが、結局、返済する形の奨学金の金利を下げるなどという意見もあるけれど……。
洋一)奨学金は英語で「Scholarship(スカラシップ)」と言うのだけれど、これはローンではないのです。なぜ日本ではローンを奨学金と言うのでしょうか。日本の奨学金について、外国人の学生に説明するのは大変なのですよ。「Student Loan(学生ローン)」を「Scholarship(奨学金)」と訳してしまう人がいるので、「いや、あれはStudent Loanです」と説明しなければなりません。
今後5年間の防衛費43兆円の35%は弾薬や整備部品 ~自衛隊をきちんと動かせるように仕上げていく
飯田)防衛費の財源確保法案に関しても国会で審議されていますが、増額については出てきました。あとは具体的に「何をどう増やしていくのか」というところですが。
杉雄)「今後5年間の防衛費43兆円」については、どこに何を使うかが明らかになっています。そのうちの35%が持続性や強靭性と言っているのですが、いわゆる弾薬や整備部品です。35%は大きな数字なので、とにかく「自衛隊をきちんと動かせるレベルに仕上げる」というのが、いま決まっていることですかね。
そもそもアジア太平洋地域の国防費の平均値は2% ~そこに近付けるということ
飯田)今国会では防衛装備品の産業基盤に関しても、維持・強化していくという法律が成立しました。これまではメーカー各社が心意気で行っていたようなところが多かったのですか?
杉雄)整備も含めて生産や研究開発ができるように、足腰を強くしていくことが大きな目的だと思います。
飯田)批判する人は、「アメリカに言われたからやっているのだ」というようなことを言いますが、自衛隊の内部の人たちは以前から要求し続けていますよね。
杉雄)アメリカからの要求ではありません。そもそもアジア太平洋地域の国防費の平均値は2%ですから。
飯田)GDP比で。
杉雄)特にNATOを見なくても、アジアでも2%になっているのです。それに近付けていく方針だと思います。
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